訪問看護の立ち上げ費用はいくら？自己資金ゼロからの開業準備【資金調達〜経営安定まで完全ガイド】

「長年の臨床経験を活かして、もっと自分の理想とするケアを地域に届けたい」
「今の組織のやり方では限界がある。独立して訪問看護ステーションを立ち上げたい」

このような熱い思いを胸に、独立開業という大きな一歩を踏み出そうとしているのではないでしょうか。
しかし、その大きな夢の前に立ちはだかるのが、「費用」という現実的な壁です。
「一体いくら必要なんだろう」「自己資金が少ないけど、本当に開業できるのか」といった不安が、期待と同じくらい大きく膨らんでいるかもしれません。

ご安心ください。
この記事では、訪問看護ステーションの立ち上げに必要な費用総額から詳細な内訳、そして自己資金が少なくても夢を実現するための具体的な資金調達方法まで、あなたの金銭的な不安を解消するための情報を網羅的に解説します。
さらに、開業後に失敗しないための経営のコツまで踏み込みますので、この記事を読めば、あなたの開業計画はより具体的で、確実なものになるはずです。

まずは結論：訪問看護の立ち上げ費用総額は500万〜2,000万円が目安

訪問看護ステーションの立ち上げに必要な費用は、結論から言うと総額で 500万円から 2,000万円程度が一般的な目安です。
なぜこれほど金額に幅があるのかというと、事業所の規模や立地、車両を新車で揃えるか中古にするかなど、さまざまな要因によって変動するためです。

例えば、都心部で広い事務所を借りる場合と、地方でコンパクトな事務所からスタートする場合では、物件関連の費用が大きく異なります。
また、車両を何台用意するか、どのような広告宣伝を行うかによっても、必要な資金は変わってきます。
次のセクションでは、この総額がどのような費用で構成されているのか、具体的な内訳を詳しく見ていきましょう。

【シミュレーション付】訪問看護ステーション立ち上げ費用の詳細な内訳

立ち上げ費用は、大きく分けて「初期費用」と「運転資金」の2種類で構成されます。
初期費用は開業時に一度だけかかる費用、運転資金は事業が軌道に乗るまでの間、毎月継続的にかかる費用のことです。
ここでは、それぞれの項目について、具体的な金額の目安を見ていきましょう。
ご自身の計画と照らし合わせながら、必要な費用をシミュレーションしてみてください。

①事務所関連費用（敷金・礼金、内装工事費、備品購入費など）

事業の拠点となる事務所を準備するための費用です。
賃貸物件を契約する際の初期費用に加え、業務に必要な備品を揃える費用がかかります。
特に、個人情報を扱うため、セキュリティ対策が施された書庫の準備は必須です。

費用項目	費用の種類	目安金額	備考
事務所賃料	敷金・礼金・仲介手数料	賃料の 4〜6ヶ月分	地域や物件による
	前家賃	10万円〜30万円	契約月の賃料
内装工事費	レイアウト変更など	50万円〜200万円	必要に応じて発生
備品購入費	事務机・椅子	10万円〜30万円	スタッフ人数分
	PC・プリンター	20万円〜50万円	リースも検討
	電話・FAX	5万円〜10万円
	鍵付き書庫	5万円〜15万円	個人情報保護に必須
合計		100万円〜355万円

②車両関連費用（購入費、駐車場代、保険料など）

利用者様のお宅へ訪問するための車両に関する費用です。
都市部で訪問エリアが狭い場合は電動自転車も選択肢になりますが、一般的には軽自動車が主流です。
購入費だけでなく、駐車場代や保険料といった毎月の維持費も忘れずに計画に含める必要があります。

費用項目	費用の種類	目安金額	備考
車両購入費	軽自動車（中古車）	50万円〜100万円/台	状態や年式による
	電動自転車	10万円〜20万円/台	都市部で有効
車両維持費	駐車場代	1万円〜3万円/月	地域による
	自動車保険料	5万円〜10万円/年
	ガソリン代・車検代など	2万円〜4万円/月	走行距離による
合計（車両 2台の場合）		110万円〜230万円

③人件費（採用広告費、給与）

事業運営で最も大きな割合を占めるのが人件費です。
訪問看護ステーションの人員基準を満たすために、開業前からスタッフを採用し、研修を行う必要があります。
そのため、開業前の収入がない期間の給与も考慮しておくことが重要です。

費用項目	費用の種類	目安金額	備考
採用費用	求人広告費	5万円〜30万円	媒体や期間による
	人材紹介利用料	年収の 20%〜30%	利用する場合
人件費（月額）	管理者（看護師）	40万円〜60万円
	看護師（常勤換算 2.5名）	75万円〜125万円
	事務員	20万円〜30万円
合計（月額）		135万円〜215万円

④その他の費用（法人設立費、広告宣伝費、消耗品費など）

事業を始めるための法的な手続きや、利用者様に事業所の存在を知ってもらうための活動にも費用がかかります。
ホームページは事業所の信頼性を示す上で重要であり、地域のケアマネージャーへの挨拶回りなどで使用するパンフレットも必要です。

費用項目	費用の種類	目安金額	備考
法人設立費用	株式会社	約 25万円	司法書士への依頼費含む
	合同会社	約 10万円	株式会社より安価
広告宣伝費	ホームページ制作	20万円〜50万円
	パンフレット・チラシ作成	5万円〜10万円
その他	通信費・消耗品費など	3万円〜5万円/月
合計		38万円〜90万円

⑤最重要：収入ゼロ期間を乗り切るための「運転資金」

開業してすぐに利用者様が集まり、収入が安定するわけではありません。
特に、介護保険の収入はサービス提供から入金まで約 2ヶ月かかるため、その間の資金繰りが非常に重要になります。
少なくとも 3ヶ月分、できれば 6ヶ月分の運転資金（人件費、家賃、水道光熱費など）を準備しておくことが、事業を軌道に乗せるための生命線となります。

• 運転資金の計算例（3ヶ月分）
  • 人件費：(135万円〜215万円) × 3ヶ月 = 405万円〜645万円
  • 家賃・その他経費：(15万円〜40万円) × 3ヶ月 = 45万円〜120万円
  • 合計：450万円〜765万円

これらの費用を合計すると、**初期費用（約 250万円〜700万円）＋ 運転資金（約 450万円〜765万円）**となり、総額では大きな幅が生まれることがわかります。

自己資金が少なくても大丈夫！訪問看護の開業資金を調達する4つの方法

「やはり、まとまったお金が必要なんだ…」と不安に思った方もいるかもしれません。
しかし、自己資金が潤沢でなくても、開業の夢を諦める必要はありません。
ここでは、開業資金を調達するための代表的な 4つの方法をご紹介します。
それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合った方法を組み合わせることで、必要な資金を確保することが可能です。

1. 日本政策金融公庫｜創業者に優しい無担保・無保証の融資も

これから事業を始める方にとって、最も心強い味方の一つが日本政策金融公庫です。
政府系の金融機関であるため、民間の銀行に比べて創業者への融資に積極的です。
特に**「新創業融資制度」**は、無担保・無保証人で利用できる可能性があり、多くの起業家が活用しています。
また、「女性、若者／シニア起業家支援資金」など、対象者によって金利が優遇される制度もあるため、まずは相談してみることをお勧めします。

2. 銀行・信用金庫からの融資｜地域密着で事業をサポート

お近くの銀行や信用金庫も、資金調達の相談先となります。
特に、地域に根差した信用金庫は、地域の医療や介護に貢献する事業に対して理解があり、親身に相談に乗ってくれることが多いです。
多くの場合、**「信用保証協会」**の保証を付けることで、融資を受けやすくなります。
日本政策金融公庫と合わせて相談し、金利や条件を比較検討すると良いでしょう。

3. 助成金・補助金｜返済不要の資金を賢く活用する

国や地方自治体が提供する助成金・補助金は、返済が不要という最大のメリットがあります。
申請書類の準備に手間がかかることや、原則として事業実施後の後払いである点には注意が必要ですが、活用しない手はありません。
訪問看護ステーションの立ち上げで活用できる可能性のある制度をいくつかご紹介します。

業務改善助成金｜設備投資で生産性向上

業務改善助成金は、事業所内の最低賃金を引き上げた上で、生産性向上に繋がる設備投資（例：電子カルテシステム、勤怠管理ソフト、業務効率化のための機器導入など）を行った場合に、その費用の一部が助成される制度です。
ICT化を進める際の初期費用を抑えるのに役立ちます。

キャリアアップ助成金｜スタッフの正社員化を支援

パートタイムで雇用したスタッフを正社員に転換するなど、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進する取り組みに対して助成金が支給されます。
優秀な人材を確保し、長く働き続けてもらうための環境整備に繋がり、安定した事業運営に不可欠な人材定着にも貢献します。

IT導入補助金｜業務効率化ツールの導入費用を補助

日々の記録業務やレセプト請求業務を効率化するソフトウェアやクラウドサービスなどのITツールを導入する経費の一部を補助してくれる制度です。
人手不足が課題となる中で、少ない人数でも効率的に業務を回す体制を構築するために非常に有効です。
最新の募集要項は公式サイトで必ず確認しましょう。

資金調達方法	メリット	デメリット	こんな人におすすめ
日本政策金融公庫	・創業者向け融資が豊富 ・無担保、無保証の可能性 ・金利が比較的低い	・自己資金要件がある場合も ・審査に時間がかかる	・初めて起業する方 ・自己資金が少ない方
銀行・信用金庫	・地域の情報に詳しい ・長期的な取引が見込める	・審査のハードルが高い ・担保や保証人が必要な場合が多い	・地域に根差した事業展開を考えている方
助成金・補助金	・返済不要	・申請手続きが煩雑 ・後払いのため、一時的な立替が必要	・計画的に設備投資や人材育成を考えている方
自己資金	・返済義務がない ・自由度が高い	・用意できる金額に限りがある ・失敗時のリスクが大きい	・融資の審査を有利に進めたい方

4. 自己資金｜熱意の証明となり融資審査も有利に

融資を受ける際、自己資金がどのくらいあるかは非常に重要な審査ポイントになります。
自己資金は、単なる開業資金の一部というだけでなく、「この事業のために、計画的に準備をしてきた」というあなたの熱意や本気度を金融機関に示すための強力な証明になるからです。
融資希望額の 1/3 程度は自己資金で用意できると、審査が有利に進むと言われています。
たとえ少額でも、コツコツと準備してきた姿勢を見せることが大切です。

融資審査で失敗しないために。事業計画書で押さえるべき3つのポイント

資金調達、特に融資を受ける上で最大の関門となるのが「事業計画書」です。
あなたの頭の中にある素晴らしいビジョンや計画も、審査担当者に伝わらなければ意味がありません。
ここでは、説得力のある事業計画書を作成し、融資審査を突破するために不可欠な 3つのポイントを解説します。
審査担当者は「この事業は本当に成功するのか？」「貸したお金はきちんと返ってくるのか？」という視点で見ていることを意識しましょう。

1. 理念と地域ニーズの明確化（なぜこの事業なのか？）

「地域医療に貢献したい」という熱い思いはもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。

• なぜ、この地域で開業する必要があるのか？
• この地域の高齢化率や要介護者数はどうなっているのか？
• 競合となる他の訪問看護ステーションの状況は？

これらの問いに対し、客観的なデータを基に「この地域には、このようなケアを必要としている人がこれだけいる。だから私の事業は成功する」という論理的なストーリーを組み立てることが重要です。

2. 具体的な収支計画（どうやって儲けるのか？）

夢や理念を事業として継続させるためには、利益を生み出す仕組みが不可欠です。

• 利用者数は、開業後どのように増えていく見込みか？
• 1ヶ月の売上はいくらを想定しているか？
• 人件費や家賃などの経費は毎月いくらかかるのか？

これらの項目について、具体的な数字を積み上げて収支計画を作成します。
「3ヶ月後には利用者 10名、売上 〇〇円」「半年後には黒字化」といったマイルストーンを明確にすることで、計画の実現可能性が高まります。

3. 自己資金と経歴（誰がやるのか？）

事業の成功は、最終的に「誰がやるのか」にかかっています。
あなたがこれまで培ってきた看護師や療法士としての豊富な臨床経験、管理職の経験などは、事業を成功させる上で大きな強みとなります。
これまでの経歴を具体的に示し、「私にはこの事業をやり遂げる能力と経験がある」ということをアピールしましょう。
そして、前述の通り、この事業のために準備してきた自己資金が、あなたの覚悟の証となります。

開業後のリアル｜訪問看護経営者の年収と「儲かるのか？」の真実

開業を目指す上で、やはり気になるのが「経営者としてどのくらいの収入が得られるのか？」ということでしょう。
訪問看護ステーション経営者の年収は、一般的に 400万円から 1,000万円程度が目安とされていますが、これは事業所の規模や利用者数、経営状況によって大きく変動します。

開業初年度から高収入を得るのは難しく、まずは事業を軌道に乗せ、安定した収益を確保することが最優先です。
複数のステーションを経営したり、専門性の高いサービスを提供したりすることで、年収 1,000万円を超えることも夢ではありません。
しかし、そのためには日々の地道な経営努力が不可欠であり、「楽して儲かる」という事業ではないことを理解しておくことが重要です。

9割が知らない？訪問看護ステーションが潰れる本当の理由と対策

「せっかく開業したのに、事業がうまくいかなかったら…」という不安は、誰にでもあるものです。
しかし、事前に失敗のパターンを知り、対策を立てておくことで、そのリスクを大幅に減らすことができます。
ここでは、訪問看護ステーションが廃業に至る主な原因と、そうならないための対策について解説します。
成功事例だけでなく、失敗事例から学ぶことが、あなたの事業を守る力になります。

理由1：採用難による人件費の高騰とスタッフの離職

訪問看護業界は、慢性的な人材不足という課題を抱えています。
スタッフが採用できないと、人員基準を満たせず事業を続けられません。
また、やっと採用できたスタッフがすぐに辞めてしまうと、採用コストが無駄になるだけでなく、残ったスタッフの負担が増え、さらなる離職を招くという悪循環に陥ります。
給与だけでなく、働きやすい職場環境やキャリアアップの仕組みを整えることが、人材確保と定着の鍵となります。

理由2：利用者数が伸び悩み、稼働率が低い

どれだけ質の高いケアを提供できるスタッフがいても、利用者様がいなければ売上は立ちません。
開業当初は、地域のケアマネージャーや病院のソーシャルワーカーに事業所の存在を知ってもらい、信頼関係を築くための地道な営業活動が不可欠です。
「良いサービスを提供していれば、口コミで自然に利用者は増える」という考えは危険です。
計画的に利用者様を確保し、スタッフの稼働率をいかに高めていくかが経営のポイントになります。

理由3：どんぶり勘定による資金繰りの悪化

優れた看護師や療法士であっても、優れた経営者であるとは限りません。
日々の売上や経費を正確に把握せず、どんぶり勘定で経営を続けていると、気づいた時には資金が底をつく「資金ショート」に陥ってしまいます。
特に、介護保険の入金サイクルを考慮したキャッシュフローの管理は非常に重要です。
経営者として、数字に基づいた意思決定を行うスキルを身につける必要があります。

経営を安定させ成功確率を上げるならICTツールの導入が鍵

ここまで見てきたように、訪問看護ステーションの経営を安定させるには、「人材の定着（業務負担の軽減）」「稼働率の向上（効率的な訪問）」「正確な収支管理」といった課題をクリアする必要があります。
これらの課題を、少ない人数でも効率的に解決するための強力な武器となるのが、ICTツール（情報通信技術）の活用です。
例えば、クラウド型の訪問看護システムを導入することで、日々の記録やレセプト請求業務にかかる時間を大幅に削減し、スタッフが本来のケア業務に集中できる環境を作ることができます。
結果として、経営の安定と成功確率の向上に直結するのです。

導入実績500件超！「みつける訪看」で業務効率化と経営改善を実現

「みつける訪看」は、全国 47都道府県、500を超える訪問看護ステーション様に導入いただいているクラウド型システムです。
導入後の顧客満足度は 92%と非常に高く、多くの経営者様から業務効率化と経営改善に繋がったとのお声をいただいています。

【「みつける訪看」導入による改善事例】

ステーション名	導入前の課題	導入後の成果
〇〇訪問看護ステーション（東京都）	記録業務に時間がかかり、残業が常態化	記録業務時間を平均 30%削減！ 残業時間を月間 15時間削減！
△△訪問看護ステーション（大阪府）	手作業でのレセプト請求にミスが多く、返戻に悩んでいた	請求業務時間を平均 25%削減！ 請求漏れ・返戻がゼロ件に！
□□訪問看護ステーション（福岡県）	訪問ルートの作成に時間がかかり、移動ロスが多かった	訪問ルート最適化により、移動時間を平均 10%削減！ 空いた時間で訪問件数が増加！

「みつける訪看」は、訪問スケジュール管理から電子カルテ、レセプト請求まで、訪問看護に必要な機能を網羅しています。
直感的で使いやすい操作画面なので、ITが苦手なスタッフでも安心して利用を開始できます。
法改正にも迅速に対応するため、常に最適な環境で事業運営に集中していただけます。

まとめ：綿密な資金計画が、理想の訪問看護を実現する第一歩

訪問看護ステーションの立ち上げには、500万円から 2,000万円という大きな費用がかかります。
しかし、その内訳を正しく理解し、綿密な事業計画を立てることで、乗り越えられない壁ではありません。
日本政策金融公庫の融資や各種助成金・補助金など、あなたの挑戦を後押ししてくれる制度も数多く存在します。

最も重要なのは、「何のために開業するのか」というあなたの熱い思いを、具体的な数字とロジックに基づいた計画に落とし込むことです。
そして、ICTツールなどを賢く活用し、少ないリソースでも効率的に事業を運営できる体制を整えることが、成功への近道となります。
この記事が、あなたの理想の訪問看護を実現するための、確かな第一歩となれば幸いです。