「医師から渡された指示書の傷病名コードがわからない…」
「もしコードを間違えて、レセプトが返戻されたらどうしよう…」
訪問看護の現場で、特にレセプト業務や指示書の管理を担当し始めたばかりのあなたは、このような不安を抱えているかもしれません。
2024年度の診療報酬改定で傷病名コードの記載が原則義務化され、その重要性はますます高まっています。
この記事は、そんなあなたのための「傷病名コード完全ガイド」です。
最後まで読めば、傷病名コードの基本ルールから、正確な調べ方、訪問看護指示書への正しい書き方、そして現場で困ったときの対処法まで、すべてがわかります。
明日からの業務に自信を持って取り組めるよう、一緒に学んでいきましょう。
そもそも訪問看護の傷病名コードとは?2024年度改定で何が変わった?
訪問看護の現場で最近よく耳にするようになった「傷病名コード」。
これは、一体何のために必要なのでしょうか。
まずは、傷病名コードが導入された目的と、2024年度の診療報酬改定による変更点をわかりやすく解説します。
この背景を知ることで、なぜコードを正しく記載する必要があるのかが明確に理解できます。
なぜ必要?レセプト請求と多職種連携を正確・スムーズにするため
傷病名コードには、主に2つの重要な役割があります。
それは「診療報酬請求の適正化」と「医療情報の標準化による連携強化」です。
コードを使うことで、誰がどの病気の利用者さんにどんなケアを提供したのかが、全国共通のルールで明確になります。
これにより、請求業務のミスを防ぎ、関係者間の情報共有をスムーズにする効果があります。
| 役割 | 具体的なメリット | 現場への影響 |
|---|---|---|
| 診療報酬請求の適正化 | 傷病名と診療行為の整合性がシステムで自動チェックされやすくなる。 | コードの記載ミスや漏れによるレセプト返戻のリスクを減らせる。 |
| 請求の根拠が明確になり、審査の透明性が向上する。 | ステーションの安定した運営につながる。 | |
| 医療情報の標準化と連携強化 | 医師やケアマネジャー、リハビリ専門職など、多職種間で利用者情報を正確に共有できる。 | 「〇〇の病気の方」という情報がコードで統一され、伝達ミスを防げる。 |
| 転院や事業所間の引き継ぎがスムーズになる。 | 継続的で質の高いケアを提供しやすくなる。 |
このように、傷病名コードは単なる事務作業のためだけのものではありません。
日々の業務を支え、最終的には利用者さんへのケアの質を高めるための大切な仕組みなのです。
「原則義務化」の背景にある医療DXの流れ
2024年度の診療報酬改定で、訪問看護指示書への傷病名コード記載が「原則として」義務化されました 。
この背景には、国が進める「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」という大きな流れがあります。
医療DXとは、簡単に言えば「医療情報をデジタル化して、病院やステーション間でスムーズにやり取りする仕組みづくり」のことです。
皆さんが普段使っているマイナンバーカードでの保険証確認(オンライン資格確認)や、電子処方箋もその一環です。
これらの新しい仕組みを動かすためには、傷病名という基本情報が「共通の言語」でデータ化されている必要があります。
その共通言語の役割を果たすのが、傷病名コードなのです。
今回の義務化は、未来の医療・介護サービスをより良くするための重要な一歩と言えるでしょう。
【基本ルール】7桁請求コードとICD-10コードの違いを正しく理解
傷病名コードについて調べ始めると、「7桁請求コード」や「ICD-10コード」といった言葉が出てきて混乱するかもしれません。
ここで最も大切なポイントを先にお伝えします。
私たちが訪問看護指示書やレセプトで使うのは「7桁の傷病名コード」です。
この2つのコードの違いをしっかり理解することが、ミスを防ぐ第一歩です。
それぞれの特徴を下の表で確認しましょう。
| 項目 | 7桁の傷病名コード | ICD-10コード |
|---|---|---|
| 目的 | 日本国内の診療報酬請求(レセプト) | 国際的な疾病統計、研究、死因分類 |
| 管理組織 | 厚生労働省 | 世界保健機関(WHO) |
| 形式 | 数字7桁(例:20104132) | アルファベット1桁+数字(例:U07.1) |
| 主な使用場面 | 訪問看護指示書、レセプト | 電子カルテの診断名入力、公的な医療統計 |
| 通称 | レセプト電算コード、請求コード | ICDコード、国際疾病分類コード |
指示書やレセプトに書くのは「7桁の傷病名コード」
訪問看護指示書やレセプト(診療報酬明細書)で求められるのは、日本国内の請求業務のために作られた7桁のコードです。
これは「レセプト電算処理システム用傷病名マスター」に登録されているコードで、医療機関が提供したサービスに対する報酬を正確に請求するために使われます。
例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を示すコードの一つに「20104132」があります。
このコードをレセプトに記載することで、システムは「この患者さんはCOVID-19の治療を受けた」と正確に認識し、適切な診療報酬を計算できるのです。
私たちの業務に直接関わるのは、この7桁のコードであると覚えておきましょう。
世界基準の「ICD-10コード」との関係性は?
一方、ICD-10コードは、世界保健機関(WHO)が定める国際的な疾病分類の基準です。
世界中の医療データを比較・分析できるようにすることが目的で、日本の医療統計や研究でも広く利用されています。
では、7桁請求コードとICD-10コードは全く別物なのでしょうか。
実は、この2つは「傷病名マスター」を介して互いに紐づけられており、互換性が保たれています。
日本の7桁請求コードは、国際基準であるICD-10に準拠しつつ、国内の請求業務の実態に合わせてより細かく分類されている、とイメージすると分かりやすいでしょう。
【実践】傷病名コードの調べ方|公式ツールで迷わず検索
「コードの基本はわかったけれど、具体的にどうやって調べればいいの?」
ここからは、最も実践的な調べ方について解説します。
いくつかの検索方法がありますが、最も信頼性が高く、確実なのは厚生労働省が提供する公式の検索サービスを利用することです。
いつでも最新の情報が反映されているため、安心して業務に活用できます。
厚生労働省「傷病名マスター」を使った検索手順を画像付きで解説
厚生労働省の「診療報酬情報提供サービス」内にある「傷病名マスター」を使えば、誰でも簡単にコードを検索できます。
以下の手順で進めましょう。
- 「診療報酬情報提供サービス」のサイトにアクセスします。
検索エンジンで「診療報酬情報提供サービス 傷病名マスター」と検索するとすぐに見つかります。 - 「傷病名マスター検索」のページを開きます。
サイト内のメニューから、傷病名マスターの検索ページに進みます。 - 検索窓に調べたい傷病名を入力して検索します。
例えば、「高血圧症」と入力して「検索」ボタンをクリックします。 - 検索結果から該当するコードを確認します。
傷病名に対応する「コード」(7桁の数字)が表示されます。これこそが、指示書に記載するべきコードです。
検索をスムーズに行うためには、いくつかのコツがあります。
下の表を参考に、いろいろなキーワードで試してみてください。
| 検索のコツ | 具体例 | 解説 |
|---|---|---|
| 正式名称で検索する | 「胃がん」ではなく「胃の悪性腫瘍」 | 略称や俗称ではヒットしない場合があります。 |
| 漢字をひらがなにする | 「褥瘡」を「じょくそう」 | 難しい漢字がわからない場合でも検索できます。 |
| 部分一致を活用する | 「高血圧」だけで検索する | 「~性高血圧症」など、関連する傷病名も同時に探せます。 |
| キーワードを短くする | 「アルツハイマー病」を「アルツハイマー」 | 長い病名は途中で区切ると見つかることがあります。 |
訪問看護指示書への正しい書き方と5つのチェックポイント
正しいコードを調べたら、次はいよいよ訪問看護指示書への記載です。
記載ミスはレセプト返戻に直結する可能性があるため、慎重に行いましょう。
コードは、指示書の「主たる傷病名」の欄に、傷病名と併記するのが一般的です。
記載後は必ず以下の5つのポイントをセルフチェックし、ミスを防ぎましょう。
| チェックポイント | 確認する内容 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 1. 桁数は正しいか? | コードが7桁になっているか。 | 桁数が違うとシステムでエラーになります。 |
| 2. 病名とコードは合っているか? | 記載した傷病名と、調べたコードが一致しているか。 | 病名とコードの不一致は、請求不承認の原因になります。 |
| 3. ICD-10と混同していないか? | アルファベットを含むICD-10コードを書いていないか。 | 請求に使えるのは7桁の数字コードのみです。 |
| 4. 数字の見間違いはないか? | 「0」と「O」、「1」と「I」など、似た文字を間違えていないか。 | 手書きの場合に特に注意が必要です。 |
| 5. 最新のコードか? | 傷病名マスターは定期的に更新されるため、古いコードではないか。 | 廃止されたコードを使うと請求が通りません 。 |
記載例とよくある間違い(桁数ミス、コードの混同など)
百聞は一見にしかずです。
具体的な記載例と、初心者が陥りがちな間違いの例を比較してみましょう。
| 良い例(OK) | 悪い例(NG) | |
|---|---|---|
| 例1 | 主たる傷病名: 高血圧症(8200021) | 主たる傷病名: 高血圧症(I10) → ICD-10コードを記載している |
| 例2 | 主たる傷病名: 脳梗塞(8201602) | 主たる傷病名: 脳梗塞(820160) → 桁数が足りない |
| 例3 | 主たる傷病名: 糖尿病(2002005) | 主たる傷病名: 誤嚥性肺炎(2002005) → 病名とコードが一致していない |
特に、医師から手書きの指示書を受け取った際は、数字の読み間違いが起こりやすいため、必ずダブルチェックを徹底しましょう。
少しでも不安な点があれば、指示を出した医師に確認することが最も確実です。
医療保険適用に関わる重要疾患(別表7・8)の記載は特に慎重に
訪問看護では、厚生労働大臣が定める特定の疾病等に該当する場合、介護保険ではなく医療保険が優先して適用されます。
これらは通称「別表7」「別表8」と呼ばれ、該当するかどうかで利用者さんの自己負担額や訪問回数の上限などが大きく変わります。
そのため、これらの疾患が主たる傷病名である場合は、特に正確な傷病名とコードの記載が求められます。
もし記載を誤ると、本来受けられるはずのサービスが受けられなくなったり、ステーションの正当な請求が認められなかったりする可能性があります。
| 対象となる疾病等の例(別表7) |
|---|
| – 末期の悪性腫瘍 |
| – 多発性硬化症 |
| – 筋萎縮性側索硬化症(ALS) |
| – パーキンソン病関連疾患 |
| – 脊髄小脳変性症 |
| – 人工呼吸器を使用している状態 |
これらの疾患が疑われる場合は、必ず医師に病状の詳細を確認し、最も適切な傷病名とコードを選定するようにしましょう 。
困ったときのQ&A|現場で迷う傷病名コードの疑問を解決
ここからは、実際の業務で「こんな時どうすれば?」と迷いがちなケースについて、Q&A形式で解説します。
イレギュラーな事態に備えて、正しい対処法を知っておきましょう。
Q1. 検索しても該当する傷病名コードが見つからないときは?
A. まずは正式名称で再検索し、それでも見つからない場合は指示を出した医師に必ず確認してください。
傷病名マスターで検索してもコードが見つからない場合、いくつかの原因が考えられます。
- 略称や俗称で検索している
まずは、その傷病名の正式名称を調べて再検索してみましょう。 - 医師独自の表現や新しい病名である
この場合は、自己判断で類似の傷病名コードを選ぶのは非常に危険です。
必ず指示書を発行した医師に連絡を取り、どの傷病名コードで登録すべきかを確認してください。これが最も安全で確実な方法です。
安易な判断は、レセプト返戻や、最悪の場合、不適切な請求につながるリスクがあります。
Q2. 精神科訪問看護でよく使うコードは?
A. 統合失調症、うつ病、認知症などが代表的です。以下によく使われるコードの例を挙げます。
精神科訪問看護を専門に行うステーションでは、使用するコードもある程度決まってきます。
精神科訪問看護指示書で頻繁に記載される傷病名とコードの例を参考にしてください。
| 傷病名 | 傷病名コード | 備考(ICD-10) |
|---|---|---|
| 統合失調症 | 8840428 | F20 |
| うつ病 | 8839818 | F32 |
| 反復性うつ病性障害 | 8839819 | F33 |
| 双極性感情障害 | 8840134 | F31 |
| アルツハイマー病型認知症 | 8838382 | G30 |
| てんかん | 8301037 | G40 |
ただし、これらはあくまで一例です。
利用者さんの詳細な診断については、必ず医師の指示書に基づいて正確なコードを記載するようにしてください。
まとめ:傷病名コードを正しく理解して、請求業務の不安を解消しよう
今回は、訪問看護における傷病名コードについて、基本から実践的な内容までを網羅的に解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 傷病名コードは、正確なレセプト請求と多職種連携のために不可欠です。
- 指示書やレセプトに記載するのは「7桁の請求コード」です。
- コードの検索は、厚生労働省の「傷病名マスター」が最も確実です。
- 記載時は桁数や病名との一致などを必ずダブルチェックしましょう。
- 判断に迷ったときは、自己判断せず、必ず指示を出した医師に確認することが鉄則です。
傷病名コードを正しく理解し、適切に運用することは、日々の請求業務のミスや不安を解消するだけでなく、ステーションの安定経営、そして利用者さんへの質の高いケアにも繋がります。
この記事が、あなたの業務の一助となれば幸いです。
傷病名コードとは何ですか?
傷病名コードは、訪問看護や診療において利用者の傷病名を標準化し、正確な請求や情報共有を可能にするための7桁のコードです。
2024年度の診療報酬改定で傷病名コードの記載義務化に変わった理由は何ですか?
これは医療情報のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一環として、医療情報を共通の言語でデータ化し、病院間やステーション間でスムーズにやり取りできるようにするためです。
7桁請求コードとICD-10コードの違いは何ですか?
7桁請求コードは日本国内の診療報酬請求用に特化したもので、ICD-10コードは国際的な疾病分類基準であり、世界保健機関(WHO)が定めています。請求時は7桁のコードを使用し、ICD-10は研究や統計で利用されます。
傷病名コードを調べるにはどうすれば良いですか?
厚生労働省の「傷病名マスター」検索サービスを利用するのが最も信頼できる方法で、サイトにアクセスして傷病名を入力し、該当の7桁コードを確認します。
傷病名コード記載において注意すべきポイントは何ですか?
桁数が正しいか、病名とコードの一致、ICD-10との混同、数字の見間違い、最新のコードを使用しているかをセルフチェックし、医師にも確認を徹底することです。