親御さんの在宅介護で、訪問看護サービスの利用を考え始めたとき。
ケアマネージャーから説明を受けても、専門用語が多くて一度では理解しきれない、と感じていませんか。
特に「時間」に関わるルールは複雑で、料金に直接関わるため、漠然とした不安を抱えている方も多いかもしれません。
この記事では、そんなあなたのために、訪問看護の「時間」と「料金」に関する複雑な仕組みを、一つひとつ丁寧に解説していきます。
この記事を読めば、サービスの基本から専門的なルールまで正しく理解でき、安心して親御さんに最適なケアを受けさせてあげられるようになります。
まずは基本から!訪問看護1回あたりの時間とサービス内容
訪問看護を頼むとき、最初に気になるのは「1回の訪問で、どのくらいの時間、何をしてくれるの?」ということでしょう。
まずは、サービスの最も基本的な部分から見ていきましょう。
一般的な訪問時間は「20分~90分」で何が決まる?
訪問看護の1回あたりの時間は、利用者である親御さんの心身の状態や必要なケアの内容によって決まります。
一般的には、ケアプランに基づいて「20分未満」から「1時間30分(90分)」までの範囲で設定されることが多いです。
この時間の長さが、受けられるサービスの内容や料金計算の基礎となります。
| 訪問時間の区分 | 主な目的・ケア内容の目安 |
|---|---|
| 20分未満 | 短時間で済む医療処置(インスリン注射、褥瘡の処置など) |
| 20分以上 30分未満 | バイタルチェック、服薬管理・確認、簡単な処置など |
| 30分以上 1時間未満 | 全身状態の観察、身体の清拭、部分的な入浴介助、簡単なリハビリなど |
| 1時間以上 1時間30分未満 | 全身の入浴介助、複数の医療処置、じっくり時間をかけたケアや相談など |
時間内で受けられるサービス内容の具体例
決められた時間の中で、看護師はさまざまなケアを提供します。
どのようなサービスが受けられるのか、具体的な例を見てみましょう。
もちろん、これらは一例であり、実際には一人ひとりのケアプランに沿ってサービスが提供されます。
| サービスの種類 | 具体的なケア内容の例 |
|---|---|
| 健康状態の観察 | – 血圧、体温、脈拍、呼吸などの測定(バイタルチェック) – 病気や障がいの状態の確認 |
| 日常生活の看護 | – 身体を拭く(清拭)、髪を洗う(洗髪)、入浴の介助 – 食事や排泄の介助・アドバイス – 床ずれ(褥瘡)の予防と処置 |
| 医療的な処置 | – 点滴、注射、カテーテルの管理 – 痰の吸引、在宅酸素療法の管理 – 医師の指示に基づく薬の管理・指導 |
| リハビリテーション | – 関節が硬くなるのを防ぐ運動や、起き上がり・歩行などの訓練 – 日常生活動作(食事、着替え、トイレなど)の練習 – 福祉用具の利用に関するアドバイス |
| 家族への支援 | – 介護方法に関する相談・アドバイス – 介護に対する不安やストレスの相談 – 社会資源(他のサービスなど)の紹介 |
訪問看護の料金が決まる仕組み|時間と保険の関係をスッキリ整理
訪問看護の料金は、利用する「公的保険」の種類によって計算方法が大きく異なります。
主に「介護保険」と「医療保険」の2つがあり、どちらが適用されるかは、親御さんの年齢や病状によって決まります。
ここでは、それぞれの保険と時間の関係を分かりやすく整理します。
【介護保険】時間区分ごとの料金(単位)一覧
介護保険で訪問看護を利用する場合、料金はサービスの「時間」に応じて設定された「単位」で計算されます。
この単位に、お住まいの地域ごとの単価(約10円~11.4円)を掛け合わせ、そのうちの1割~3割が自己負担額となります。
つまり、訪問時間が長くなるほど料金も高くなる、という分かりやすい仕組みです。
| 訪問時間 | 単位数(訪問看護ステーションの場合) | 1割負担の場合の自己負担額の目安 |
|---|---|---|
| 20分未満 | 313単位 | 約 313円 |
| 30分未満 | 470単位 | 約 470円 |
| 30分以上1時間未満 | 821単位 | 約 821円 |
| 1時間以上1時間30分未満 | 1,126単位 | 約 1,126円 |
| ※上記は基本的な単位数であり、早朝・夜間・深夜の訪問や緊急時訪問などでは、別途加算がつきます。 | ||
| ※自己負担額は1単位=10円で計算した場合の目安です。 |
【医療保険】週の訪問回数で料金が決まるのが基本
医療保険を利用する場合、料金の考え方は介護保険とは少し異なります。
医療保険では、時間区分ではなく「週に何回訪問するか」が料金の基本となります。
原則として週3回までの利用が上限ですが、厚生労働大臣が定める特定の疾病の方や、医師が一時的に頻回な訪問が必要と判断した場合(特別訪問看護指示書)は、週4回以上の訪問も可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本料金 | 週の訪問回数に応じて「訪問看護基本療養費」が算定されます。 |
| 管理療養費 | 24時間対応体制など、サービスの管理体制に対して月単位で算定されます。 |
| 加算料金 | 深夜・緊急時の訪問、ターミナルケア、重症者のケアなど、特別な対応に対して追加されます。 |
あなたの親はどっち?介護保険と医療保険の使い分け
「うちの親はどちらの保険になるの?」という疑問は、多くの方が抱く点です。
原則として、介護保険の認定を受けている場合は、介護保険が優先されます。
しかし、特定の病状にある方などは、医療保険の対象となります。
| 条件 | 適用される保険 |
|---|---|
| 65歳以上で要支援・要介護認定を受けている | 原則、介護保険 |
| 40歳~64歳で特定の16疾病により要支援・要介護認定を受けている | 原則、介護保険 |
| 上記に当てはまるが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する (例:末期がん、難病など) | 医療保険 |
| 上記に当てはまり、医師が「特別訪問看護指示書」を交付した (例:病状の急性増悪期、退院直後など) | 医療保険 |
| 40歳未満の方、または40歳以上で要介護認定を受けていない | 医療保険 |
【重要】知っておきたい訪問看護「時間」の特別ルール
ここからは、少し専門的ですが、知っておくと非常に役立つ「時間」に関する特別なルールを解説します。
これらのルールは、料金請求の正当性に関わる重要なポイントです。
利用者側も知っておくことで、ケアマネージャーや事業者との話し合いがスムーズになります。
①「2時間ルール」1日に複数回訪問するときの注意点
介護保険の訪問看護には、「2時間ルール」と呼ばれる重要な決まりがあります。
これは、同じ日に同じ訪問看護ステーションから複数回のサービスを受ける場合、訪問の間隔を「おおむね2時間以上」空けなければならない、というルールです。
もし間隔が2時間未満の場合、2回の訪問が「1回のサービス」とみなされ、それぞれの時間が合算されて料金が計算されます。
このルールは、短時間の訪問を不必要に分割して、不正に料金を請求することを防ぐために設けられています。
【具体例で解説】2時間ルールが適用される・されないケース
言葉だけでは分かりにくいので、具体的なケースで見てみましょう。
| ケース | 2時間ルールの適用 | 解説 |
|---|---|---|
| OKなケース(適用されない) | 9時に看護師が訪問し、13時に再び同じ看護師が訪問した。 | 訪問間隔が2時間以上空いているため、それぞれ別の訪問として算定されます。 |
| OKなケース(適用されない) | 9時に看護師が訪問し、10時に理学療法士が訪問した。 | 訪問間隔は2時間未満ですが、訪問したスタッフの職種が異なるため、別の訪問として算定されます。 |
| NGなケース(適用される) | 9時に看護師が訪問し、10時に再び同じ看護師が訪問した。 | 訪問間隔が2時間未満で、職種も同じため、2回の訪問時間を合算して1回の訪問として算定されます。 |
| 例外のケース | 利用者の容態が急変し、緊急で訪問した場合。 | 緊急時訪問看護加算を算定する場合は、2時間ルールの例外となります。 |
②「20分未満の訪問」インスリン注射などで利用できる短時間ケア
インスリン注射や簡単な褥瘡の処置など、ケア自体は短時間で終わるものの、定期的に必要な場合があります。
このようなケースに対応するのが「20分未満の訪問」です。
ただし、この短時間訪問は単独で利用できるわけではなく、以下の条件を満たす必要があります。
- 計画的に週1回以上、20分以上の訪問看護が提供されていること
- 利用している訪問看護ステーションが24時間対応体制(緊急時訪問看護加算を届け出ている)であること
これらの条件を満たすことで、計画的な訪問の合間に、短時間のケアを追加で受けることが可能になります。
③「長時間訪問」90分以上の手厚いケアを受けられる条件
がん末期で痛みのコントロールが必要な方や、神経難病で常時特別なケアが必要な方など、特に医療依存度の高い利用者に対しては、1回90分以上の手厚い訪問看護が提供されることがあります。
これが「長時間訪問看護加算」の対象となるサービスです。
この加算を算定するには、利用者の状態が厚生労働省の定める基準を満たしている必要があります。
| 保険の種類 | 対象となる方の例 | 算定のポイント |
|---|---|---|
| 介護保険 | – 特別管理加算の対象者(在宅酸素療法、カテーテル管理など) – 1時間~1時間30分未満の訪問に引き続きケアを行う場合 | 1回あたり300単位が加算されます。 |
| 医療保険 | – 厚生労働大臣が定める疾病等の方(末期がん、難病など) – 特別訪問看護指示書が出ている方 – 15歳未満の超重症児・準超重症児 | 週に1回(超重症児等は週3回)まで算定可能です。 |
時間外や緊急時の対応はどうなる?追加料金(加算)をチェック
在宅での療養生活では、予期せぬ体調の変化が起こることもあります。
通常のサービス時間外や緊急時に対応してもらう場合の料金についても、あらかじめ確認しておくと安心です。
これらは「加算」として、基本料金に追加されます。
早朝・夜間・深夜の訪問でかかる追加料金
ケアプランに基づき、通常の営業時間外に訪問看護を依頼した場合、基本料金に加えて割増料金がかかります。
時間帯の区分と割増率は以下の通りです。
| 時間帯区分 | 具体的な時間 | 割増率 |
|---|---|---|
| 早朝 | 午前6時 ~ 午前8時 | 25%増 |
| 夜間 | 午後6時 ~ 午後10時 | 25%増 |
| 深夜 | 午後10時 ~ 午前6時 | 50%増 |
急な体調変化にも対応「緊急時訪問」の仕組み
「夜中に急に熱が出た」「転んでしまった」など、計画外の事態に備えるための仕組みが「緊急時訪問看護加算」です。
この加算を契約すると、訪問看護ステーションが24時間体制で相談に応じ、必要に応じて緊急訪問を行ってくれます。
これは訪問ごとにかかる費用ではなく、月額定額の費用(介護保険の場合)で、いざという時の安心を確保するためのものです。
もっと知りたい!訪問看護の時間に関するQ&A
ここでは、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
Q. 訪問の曜日や時間は希望通り?後から変更できる?
訪問のスケジュールは、ケアマネージャーが作成するケアプランを基に、ご本人やご家族の希望と、訪問看護ステーションの空き状況を調整して決められます。
基本的には決まった曜日・時間での訪問となりますが、通院やご家族の都合などで変更が必要な場合は、早めにステーションへ相談すれば対応してもらえることがほとんどです。
Q. 予定時間を超えたら追加料金はかかる?
訪問看護は、ケアプランで定められた時間内でのサービス提供が原則です。
ただし、当日の親御さんの体調によっては、ケアに予定以上の時間がかかってしまうこともあります。
やむを得ず時間を超過した場合の対応は、事業所の方針によって異なりますので、契約時に確認しておくことをおすすめします。
大幅な時間変更が必要な場合は、ケアプラン自体の見直しをケアマネージャーに相談しましょう。
Q. 訪問看護師さんの移動時間はサービス時間に含まれる?
サービス提供時間には、看護師がご自宅からご自宅へ移動している時間は含まれません。
料金計算の対象となるのは、看護師がご自宅に到着し、ケアを開始してから、ケアを終えて退出するまでの「実質的なケア時間」です。
なお、事業所によっては、サービス料金とは別に交通費が実費で請求される場合があります。
まとめ|正しい知識でケアマネと連携し、親に最適な訪問看護を
訪問看護の「時間」に関するルールは、一見すると複雑に感じるかもしれません。
しかし、その一つひとつには、質の高いサービスを公平かつ適切に提供するための理由があります。
- 基本の時間:1回20分~90分で、必要なケア内容に応じて決まる。
- 料金の仕組み:介護保険は時間区分ごと、医療保険は週の訪問回数が基本。
- 特別なルール:「2時間ルール」や「20分未満訪問」「長時間訪問」など、特定の状況に応じた決まりがある。
- 時間外・緊急時:追加の加算料金で、24時間安心してサービスを受けられる仕組みがある。
今回解説した内容を理解しておくことで、ケアマネージャーからの提案内容を深く理解でき、ご家族として親御さんのための要望も的確に伝えられるようになります。
ケアプランの相談と将来への備え
訪問看護は、親御さんの在宅生活を支える心強いパートナーです。
分からないことや不安なことがあれば、遠慮なくケアマネージャーや訪問看護ステーションの担当者に質問しましょう。
正しい知識を持つことは、事業者と対等な立場で連携し、親御さんにとって本当に最適なケアプランを一緒に作り上げていくための第一歩です。
また、国は在宅医療のさらなる充実を目指しており、2026年度の制度改定では、24時間対応体制の強化などが議論されています。
今後、訪問看護はますます利用しやすく、頼りになるサービスへと進化していくことが期待されます。
制度を正しく理解し、上手に活用しながら、親御さんとの大切な時間を穏やかに過ごしていきましょう。
訪問看護の1回あたりの基本時間とサービス内容は何ですか?
訪問看護の基本時間は一般的に20分から90分で、利用者の状態や必要なケア内容に応じて設定され、その時間内に血圧測定や身体の清拭、リハビリなどのサービスが提供されます。
訪問時間はどのように決まるのですか?
訪問時間は利用者の健康状態やケア内容によって決まり、短時間の医療処置からじっくりとしたケアまでさまざまな時間帯が設定されます。
訪問看護の料金はどうやって決まるのですか?
料金は、公的保険の種類により異なり、介護保険の場合は時間に応じて単位が設定され、医療保険では週の訪問回数に基づいて算定されます。
介護保険と医療保険の使い分けはどうなっていますか?
原則として、介護保険は要支援・要介護認定を受けた高齢者に適用され、特定の疾病や状況にある方には医療保険が適用されます。
時間に関する特別ルールにはどのようなものがありますか?
代表的なルールには、「2時間ルール」と呼ばれる複数回訪問時の間隔規制や、20分未満の短時間訪問、90分以上の長時間訪問の条件があります。