「訪問看護ステーションを開業したいけど、自己資金だけでは不安だ」
「事業を拡大したり、電子カルテを導入したりしたいけど、コストがネックになっている」
このようなお悩みをお持ちではありませんか。
訪問看護ステーションの経営者や開業準備中の方にとって、資金繰りは常に大きな課題です。
しかし、国や自治体が提供する「補助金」や「助成金」を賢く活用すれば、その負担を大幅に軽減できる可能性があります。
この記事では、訪問看護ステーションが利用できる2025年(令和7年度)の最新の補助金・助成金制度を網羅的に解説します。
目的別の制度一覧から、失敗しないための申請ステップ、さらには専門家ならではの注意点まで、あなたの事業所が今すぐ使える情報をまとめました。
資金調達の不安から解放され、質の高い看護サービスの提供という本来の業務に集中するために、ぜひ最後までご覧ください。
まず知っておきたい、訪問看護ステーションが補助金・助成金を活用すべき3つの理由
補助金や助成金は、国や自治体が政策目標を達成するために、事業者の取り組みを金銭的に支援する制度です。
最大のメリットは、銀行からの融資とは異なり、原則として返済が不要であることです。
まずは、制度の基本と、なぜ今活用すべきなのかを知っておきましょう。
項目 | 補助金 | 助成金 |
---|---|---|
目的 | 新規事業や技術開発など、国の政策目標に合致する事業の支援 | 雇用の安定、労働環境の改善など |
管轄 | 経済産業省、地方自治体など | 厚生労働省 |
審査 | 応募後に審査があり、採択・不採択が決まる(予算上限あり) | 要件を満たせば原則として受給できる |
財源 | 主に税金 | 主に雇用保険料 |
訪問看護ステーションがこれらの制度を活用すべき理由は、大きく分けて以下の3つです。
- 経営基盤の強化: 開業時の初期投資や運転資金の負担を軽減し、安定した経営基存を築けます。
- 人材確保と定着: 労働環境の改善やキャリアアップ支援に活用し、優秀な人材の確保・定着につなげられます。
- DX化による競争力向上: 電子カルテ導入などで業務を効率化し、変化する業界に対応することで他社との差別化を図れます。
【目的別】令和7年度に訪問看護で使える国の補助金・助成金7選
国の補助金・助成金は種類が多く、どれが自社に合うのか分かりにくいかもしれません。
ここでは、訪問看護ステーションが活用しやすい主要な制度を「目的別」に整理してご紹介します。
自社の課題に合わせて、利用できそうな制度を見つけてみてください。
目的 | 制度名 | 概要 |
---|---|---|
人材確保・定着 | キャリアアップ助成金 | 非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を支援 |
両立支援等助成金 | 育児・介護と仕事の両立支援に取り組む事業者を支援 | |
業務効率化・DX | IT導入補助金 | 電子カルテなどのITツール導入費用の一部を補助 |
オンライン資格確認等導入補助金 | オンライン資格確認システムの導入を支援 | |
経営改善 | 業務改善助成金 | 生産性向上と事業場内最低賃金の引上げを支援 |
人材確保・定着のための制度(キャリアアップ助成金・両立支援等助成金)
訪問看護業界において、人材の確保と定着は最も重要な経営課題の一つです。
キャリアアップ助成金や両立支援等助成金は、スタッフが長く安心して働ける職場環境づくりを後押しします。
制度名 | 対象となる取り組みの例 | 助成額(1人あたり) |
---|---|---|
キャリアアップ助成金 (正社員化コース) |
– 有期雇用労働者を正社員に転換する – パートタイマーを正社員に転換する |
80万円(中小企業の場合) |
両立支援等助成金 (育児休業等支援コース) |
– 育休復帰支援プランを策定し、円滑な育休取得・復帰を実現 – 育休取得者の業務を代替する周囲の社員への手当支給 |
育休取得時:30万円 職場復帰時:30万円 など |
業務効率化・DX推進のための制度(IT導入補助金)
日々の記録や請求業務の負担を軽減し、本来の看護業務に集中するためには、ICTの活用が不可欠です。
IT導入補助金は、電子カルテや勤怠管理システムといったITツールの導入を支援し、業務のDX化を促進します。
項目 | 内容 |
---|---|
対象経費 | – ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分) – PC、タブレット、プリンターなどのハードウェア購入費用 |
補助率・補助額 | 通常枠: 補助率 1/2以内、補助額 5万円〜150万円未満 インボイス枠: 補助率 最大4/5、補助額 最大350万円 |
ポイント | 補助対象となるITツールは事前に登録されているものに限られます。 IT導入支援事業者と連携して申請する必要があります。 |
オンライン資格確認・オンライン請求の導入補助金
医療DX推進の柱として、国が導入を強力に後押ししているのがオンライン資格確認システムです。
専用の補助金が用意されており、導入にかかるコスト負担を大幅に軽減できます。
補助対象 | 補助上限額 |
---|---|
顔認証付きカードリーダー | 1台あたり 4.4万円 |
資格確認端末(PC)、ネットワーク機器等 | 上限 10万円 |
レセプトコンピューター等の既存システムの改修費 | 上限 20.9万円 |
訪問看護でのオンライン資格確認に要する費用 | 上限 11.2万円 |
経営改善・生産性向上のための制度(業務改善助成金)
スタッフの待遇改善と、事業所の生産性向上を同時に目指す経営者におすすめなのが業務改善助成金です。
事業場内最低賃金を引き上げたうえで、生産性向上に資する設備投資(例:介護リフト、勤怠管理システム導入など)を行う場合に費用の一部が助成されます。
事業場内最低賃金の引上げ額 | 助成上限額(通常コース) |
---|---|
30円以上 | 30万円 |
40円以上 | 50万円 |
60円以上 | 80万円 |
90円以上 | 130万円 |
【地域別】あなたの事業所も対象かも?自治体独自の補助金制度(東京・大阪の例)
国の制度に加えて、各都道府県や市区町村が地域の実情に合わせて独自の補助金・助成金制度を設けている場合があります。
ここでは代表例として東京都と大阪府の制度を紹介しますが、ぜひご自身の事業所がある自治体の情報を調べてみてください。
東京都の事例:訪問看護推進総合事業など
東京都では、訪問看護人材の確保・育成や、事業所の安定的な運営を支援するための多様な事業を展開しています。
事業名 | 目的・内容 | 補助額の例 |
---|---|---|
新任訪問看護師育成支援事業 | 新任の訪問看護師を雇用し、OJT等の育成体制を整備する事業所を支援 | 新任看護師1人あたり 上限76.8万円 |
訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業 | 新たに事務職員を雇用し、看護師の事務負担を軽減する事業所を支援 | 事務職員1人あたり 月額上限8万円 |
認定看護師資格取得支援事業 | 訪問看護分野の認定看護師の資格取得にかかる費用を支援 | 1人あたり 上限150万円 |
大阪府の事例:介護施設等におけるICT導入支援事業など
大阪府でも、特にICT活用による業務効率化や人材確保を目的とした支援に力を入れています。
事業名 | 目的・内容 | 補助額の例 |
---|---|---|
介護施設等におけるICT導入支援事業 | 介護ソフトやタブレット端末等のICT機器導入を支援し、職員の負担軽減を図る | 1事業所あたり 上限100万円 (補助率1/2) |
大阪府福祉・介護人材確保重点事業 | 介護分野への就職を促進するため、資格取得支援や職場体験などを実施 | – |
自分の地域の補助金を見つける方法
東京・大阪以外の地域でも、独自の制度が設けられている可能性は十分にあります。
以下の方法で、あなたの事業所で使える補助金・助成金がないか確認してみましょう。
- 自治体の公式サイトで検索する
- 「〇〇県 訪問看護 補助金」「△△市 介護 助成金」などのキーワードで検索します。
- 担当部署に問い合わせる
- 都道府県や市区町村の「高齢福祉課」「介護保険課」「産業振興課」といった部署が担当していることが多いです。
- 地域の商工会議所や中小企業支援センターに相談する
- 経営に関する相談窓口で、活用できる補助金についてアドバイスをもらえる場合があります。
【完全ガイド】補助金申請で失敗しないための5ステップと注意点
「補助金は手続きが複雑で難しそう」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、ポイントを押さえて順序立てて進めれば、採択の可能性は大きく高まります。
ここでは、情報収集から事業完了まで、失敗しないための5つのステップを具体的に解説します。
Step1:情報収集と要件確認(公募要領の熟読が必須)
まずは、活用したい制度の「公募要領」を公式サイトから入手し、隅々まで読み込むことが最も重要です。
特に以下の項目は必ず確認し、自社が要件を満たしているかを確認しましょう。
- 対象者: 法人格、事業規模、所在地などの要件
- 対象事業: どのような取り組みが補助の対象となるか
- 対象経費: 何に支払った費用が補助対象になるか(人件費、設備費など)
- 補助率・補助額: 経費の何割が、最大いくらまで補助されるか
- 申請期間: 募集開始から締切日まで(非常に短い場合もあるので注意)
Step2:事業計画の策定と書類準備(審査のポイント)
申請書類の中でも特に重要なのが、事業計画書です。
審査員は、この計画書を見て「なぜこの事業に税金を投入する必要があるのか」を判断します。
審査で重視されるポイント | 計画書に盛り込むべき内容 |
---|---|
事業の必要性・妥当性 | 自社の現状の課題、地域のニーズ、なぜこの取り組みが必要なのか |
計画の具体性 | いつ、誰が、何を、どのように行うのか、具体的なスケジュールと実施体制 |
期待される効果 | 事業実施後、どのような効果(業務効率化、売上向上など)が見込めるか(数値目標) |
費用対効果 | 投じる補助金に対して、十分な効果が見込めるか |
これらのポイントを押さえ、具体的で説得力のある計画書を作成しましょう。
また、履歴事項全部証明書や納税証明書など、必要な添付書類も漏れなく準備します。
Step3:申請手続き(電子申請・郵送の確認と期限厳守)
申請方法は、近年「jGrants」などの電子申請システムを利用するものが増えています。
事前にID登録が必要な場合もあるため、早めに準備を進めましょう。
もちろん、郵送での申請が必要な場合もあります。
いずれの場合も、申請期限の厳守は絶対です。
1分でも遅れると受理されないため、締切日の数日前には提出を完了させるのが理想です。
Step4:交付決定後の注意点(原則「後払い」と資金繰り)
無事に審査を通過し「交付決定」の通知が届いても、すぐに補助金が振り込まれるわけではありません。
ほとんどの補助金は、事業をすべて実施し、かかった経費を支払った後に、実績報告を経て支払われる「後払い(精算払い)」です。
そのため、交付決定から入金までの間は、自社で費用を立て替える必要があります。
この期間の資金繰りを事前に計画しておかないと、黒字倒産のリスクもあるため十分に注意しましょう。
Step5:事業実施と実績報告(報告書が受理されて完了)
交付決定通知書に記載された計画通りに事業を実施します。
この期間中に支払った経費の**領収書や請求書、納品書、成果物(導入した機器の写真など)**は、すべて保管しておく必要があります。
事業完了後、これらの証拠書類を添えて「実績報告書」を提出します。
この報告書が受理され、金額が確定した後に、ようやく補助金が振り込まれます。
補助金以外の資金調達方法と開業・経営の基礎知識
補助金は非常に有効な手段ですが、審査に時間がかかったり、不採択になったりする可能性もあります。
特に開業時には、複数の資金調達方法を組み合わせて検討することが重要です。
日本政策金融公庫の創業融資や制度融資の活用
補助金と並行して、融資制度の活用も視野に入れましょう。
特に、これから開業する方や実績の少ない事業者にとって心強い味方となるのが、公的な融資制度です。
制度名 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
日本政策金融公庫 (新創業融資制度など) |
政府系の金融機関。民間の銀行に比べて、創業期の事業者にも積極的に融資を行う。 | – 無担保・無保証人で借りられる場合がある – 実績がなくても事業計画で評価されやすい |
– 審査に一定の時間がかかる |
制度融資 | 自治体、金融機関、信用保証協会が連携して行う融資。 | – 自治体が利子の一部を負担してくれるため、低金利で借りられることが多い | – 関係機関が多いため、手続きがやや複雑で時間がかかる傾向がある |
【独自情報】補助金で強化した事業所をアピール!集患につなげる「みつける訪看ex」活用術
補助金を活用して電子カルテを導入したり、専門性の高い看護師を採用したりしても、その強みが地域のケアマネージャーや患者さんに伝わらなければ、集患には結びつきません。
そこで役立つのが、全国1,500ヶ所以上のステーションが登録する検索プラットフォーム「みつける訪看ex」です。
資金調達の「その先」を見据え、事業所の強みを効果的にアピールする方法をご紹介します。
ケアマネに選ばれる!詳細な検索機能で事業所の強みを可視化
「みつける訪看ex」の最大の特徴は、医療関係者のニーズに応える詳細な検索機能です。
例えば、大阪府豊中市の退院調整看護師、佐伯誠一様からは、次のような声をいただいています。
「褥瘡と胃瘻管理が必要な患者さんの退院調整で、対応疾患と資格スコアで候補を即時に比較できました。病棟でご家族に説明しながら次の受け入れ先を決められ、翌日の初回訪問までスムーズに段取りできたのは本当に助かりました」
このように、補助金を活用して強化した点を「みつける訪看ex」に登録することで、事業所の強みが可視化されます。
- IT導入補助金で電子カルテを導入 → 迅速な情報共有が可能であることをアピール
- キャリアアップ助成金で理学療法士を正社員化 → 「PT/OT/ST在籍」で検索した際にヒットしやすくなる
- 両立支援で24時間対応体制を強化 → 「24時間対応バッジ」で緊急時の依頼も受けやすくなる
補助金で得た強みを「みつける訪看ex」でしっかり発信することが、地域のケアマネージャーからの信頼と、安定した紹介・集患につながるのです。
まとめ:補助金を賢く活用し、地域に選ばれる訪問看護ステーションへ
この記事では、訪問看護ステーションが活用できる補助金・助成金制度について、目的別の種類から申請の具体的なステップ、注意点までを解説しました。
補助金・助成金は、単に資金を得るための手段ではありません。
これらを戦略的に活用することで、労働環境を改善し、業務を効率化し、ひいては提供する看護サービスの質を高めるための強力なツールとなります。
まずは自社の課題を洗い出し、この記事を参考に活用できそうな制度の情報収集から始めてみてください。
補助金を賢く活用し、経営基盤を安定させることが、地域に選ばれ続ける訪問看護ステーションへの第一歩となるはずです。
訪問看護ステーションが補助金・助成金を活用すべき理由は何ですか?
補助金や助成金を活用することで、経営基盤の強化や人材の確保と定着、そしてDX化を促進し、競争力を向上させることが可能です。また、これらの制度は返済不要のため、資金調達のリスクを軽減できます。
2025年に訪問看護ステーションが利用できる補助金・助成金の主な目的は何ですか?
目的別に整理されており、人材確保・定着、業務効率化・DX推進、経営改善などがあります。これにより、スタッフの労働環境改善やIT導入を支援し、より良いサービス提供を可能にします。
補助金・助成金の申請において、重要なステップは何ですか?
情報収集と要件確認、事業計画の策定と書類準備、申請手続き、交付決定後の資金管理、そして事業実施と実績報告の5ステップが重要です。これらを順序立てて慎重に進めることが成功の鍵です。
補助金申請の際に注意すべきポイントは何ですか?
募集期間を厳守し、必要書類を漏れなく準備し、具体的で説得力のある事業計画を作成することが重要です。また、事業の実施後の報告も遅れず完了させる必要があります。
補助金以外の資金調達方法には何がありますか?
日本政策金融公庫の創業融資や制度融資などの公的融資も有効です。これらは無担保や低金利で借りやすく、補助金と併用して資金調達を行うことがおすすめです。