訪問看護ステーションの管理者や請求業務に携わる皆様は、日々の業務の中でこのようなお悩みを抱えていないでしょうか。
「20分未満の訪問看護、算定要件が複雑で自信がない」
「介護保険と医療保険でルールが違い、請求ミスが怖い」
「返戻や監査での指摘を未然に防ぎたい」
20分未満の訪問看護は、利用者の多様なニーズに応える重要なサービスですが、その算定ルールは非常に複雑です。
要件を正しく理解しないまま請求すると、返戻や減算につながりかねません。
この記事では、訪問看護における「20分未満の訪問」について、介護保険・医療保険それぞれの算定要件を徹底的に解説します。
最新の2024年度介護報酬改定の情報も反映しており、この記事を読むだけで、明日からの請求業務に自信が持てるようになります。
さらに、監査にも対応できる記録のポイントまで網羅しているため、健全で安定したステーション運営の実現に役立ちます。
そもそも訪問看護「20分未満」とは?制度の目的と基本ルール
具体的な算定要件に入る前に、まずは「20分未満の訪問看護」がどのような目的で設けられた制度なのか、その基本を理解しましょう。
制度の背景を知ることで、ルールの意図が分かり、より正確な知識として身につきます。
短時間・頻回なケアを支える制度背景と位置づけ
近年、高齢化の進展や在宅医療の推進に伴い、ご自宅で療養しながら医療的ケアを必要とする方が増えています。
例えば、1日に何度も吸引が必要な方や、定期的なインスリン注射、経管栄養の管理など、短時間でも頻回なケアが欠かせないケースです。
このようなニーズに応えるため、「20分未満の訪問看護」という仕組みが作られました。
これは、在宅での生活を支えるための重要なサービスであり、地域包括ケアシステムを推進する上でも重要な役割を担っています。
| 制度の目的と背景 |
|---|
| 目的 |
| – 短時間・頻回な医療的ケアが必要な利用者の在宅療養を支援する |
| – 利用者のQOL(生活の質)の維持・向上を図る |
| 背景 |
| – 高齢化の進展と医療ニーズの多様化 |
| – 在宅医療・介護の推進 |
| – 地域包括ケアシステムの強化 |
「20分未満」は単独で算定不可|原則と例外の考え方
ここで最も重要な基本ルールは、「20分未満の訪問看護」は単独では算定できないという点です。
このサービスは、あくまで通常の「20分以上の訪問看護」を補完するものとして位置づけられています。
そのため、ケアプラン全体が20分未満の訪問だけで構成されることは、制度上認められていません。
なぜなら、利用者の全体的な健康状態の把握や療養上の相談といった包括的なケアには、一定の時間が必要だと考えられているからです。
この「補完的なサービス」という原則を念頭に置くことが、後の算定要件を理解する上で非常に重要になります。
【介護保険】訪問看護「20分未満」の算定要件を3ステップで解説
ここからが本題です。
介護保険における20分未満の訪問看護の算定要件は特に厳格で、3つのステップで確認する必要があります。
これらの要件を一つでも満たしていないと算定できないため、正確に理解しましょう。
ステップ1:クリア必須の2大前提(24時間体制と週1回以上の訪問)
まず、20分未満の訪問を算定するためには、ステーションが以下の2つの大前提を満たしている必要があります。
これはいわば、算定の「入場券」のようなものです。
| 算定のための2大前提チェックリスト | 確認内容 |
|---|---|
| □ 1. 24時間対応体制の整備 | 緊急時訪問看護加算を算定しており、利用者や家族からの連絡に24時間対応できる体制が整っているか。 |
| □ 2. 週1回以上の20分以上の訪問 | 居宅サービス計画または訪問看護計画書に、週に1回以上、20分以上の訪問看護が位置づけられているか。 |
これらの前提が必要な理由は、短時間訪問が緊急時対応や利用者の全体像を把握した上で行われるべき、という考えに基づいています。
ステップ2:2024年度改定後の単位数と具体的なケア内容
前提条件をクリアしたら、次に単位数とサービス内容を確認します。
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定により、単位数が変更されました。
| 2024年度改定後 20分未満の訪問看護費(1回あたり) |
| :——————————————- | :———- |
| 提供元 | 単位数 |
| 訪問看護ステーションから | 314 単位 |
| 病院・診療所から | 266 単位 |
また、20分未満の訪問で算定が想定されているのは、主に以下のような医療的ケアです。
単なる安否確認や体温測定のみといった、看護師でなくても実施可能なケアは原則として算定対象外となります。
- 気管カニューレ内部の吸引
- インスリン注射
- 点滴の実施・管理
- 経管栄養の実施・管理
- 褥瘡(じょくそう)の処置
ステップ3:「2時間ルール」との関係性と例外適用の条件
訪問看護には、同じ利用者に1日に複数回訪問する場合、原則として訪問の間隔を2時間以上空けなければならない「2時間ルール」があります。
しかし、「20分未満の訪問」は、このルールの例外として扱われることがあります。
具体的には、ステップ1と2の要件を満たした上で、利用者の状態変化などにより緊急で訪問が必要になった場合などです。
この場合、前回の訪問から2時間未満であっても、それぞれの訪問を個別に算定することが可能です。
| 2時間ルールと20分未満訪問の関係 |
|---|
| 原則(2時間ルール) |
| – 同一利用者に同日複数回訪問する場合、間隔を2時間以上空ける必要がある。 |
| – 2時間未満の場合、2回の訪問時間を合算して1回の訪問として算定する。 |
| 例外(20分未満訪問の場合) |
| – ステップ1・2の算定要件を満たしていれば、2時間未満の間隔でも個別に算定できる。 |
| – ただし、計画的ではなく、利用者の状態に応じた必要性が求められる。 |
【医療保険】における短時間訪問の算定ルール|介護保険との違い
次に、医療保険における短時間訪問のルールを見ていきましょう。
介護保険との最も大きな違いは、医療保険には「20分未満」という明確な時間区分や、「2時間ルール」が存在しない点です。
医療保険の訪問看護は、すべて主治医が発行する「訪問看護指示書」に基づいて行われます。
そのため、医学的な必要性があると主治医が判断すれば、短時間・頻回の訪問も柔軟に実施できます。
| 介護保険と医療保険の主な違い(短時間訪問) |
|---|
| 項目 |
| 時間区分 |
| 2時間ルール |
| 算定の根拠 |
| 介護保険 |
| 「20分未満」の区分あり |
| 原則適用(20分未満訪問は例外) |
| ケアプラン・訪問看護計画書 |
| 医療保険 |
| 明確な時間区分なし(精神科を除く) |
| 適用なし |
| 主治医の訪問看護指示書 |
精神科訪問看護は「30分未満」が算定可能|主治医の指示が必須
医療保険の中でも、精神科訪問看護には特別な時間区分が設けられています。
サービス提供時間が「30分未満」か「30分以上」かによって、算定できる療養費が異なります。
| 精神科訪問看護基本療養費(1回あたり) |
|---|
| サービス提供時間 |
| 30分未満の場合 |
| 30分以上の場合 |
この「30分未満」の訪問を算定するには、主治医がその必要性を認め、「精神科訪問看護指示書」に短時間訪問が必要である旨を明記していることが必須条件となります。
どっちを使う?介護保険と医療保険の適用関係と優先順位
利用者の状態によって、介護保険と医療保険のどちらを適用すべきか迷うことがあります。
ここでは、その判断基準と優先順位を整理します。
適切な保険適用は、正しい請求の第一歩です。
原則は介護保険優先|適用ルールを再確認
訪問看護における保険適用の大原則は、「介護保険が優先される」ということです。
具体的には、以下の条件に当てはまる方は、原則として介護保険での訪問看護サービスを利用することになります。
- 65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方
- 40歳から64歳で、特定の疾病(16特定疾病)により要介護・要支援認定を受けている方
医療保険が適用される特定のケースとは
原則は介護保険が優先ですが、要介護認定を受けている方でも、以下のような特定のケースでは医療保険が適用されます。
これらのケースに該当するかどうかを正確に判断することが重要です。
| 介護認定者でも医療保険が適用される主なケース |
|---|
| ケース |
| 1. 厚生労働大臣が定める疾病等の場合 |
| 末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、パーキンソン病関連疾患など、定められた疾病に該当する場合。 |
| 2. 特別訪問看護指示書が交付された場合 |
| 急性増悪や退院直後などで、主治医が一時的に頻回な訪問が必要と判断し、「特別訪問看護指示書」が交付された期間(最大14日間)。 |
| 3. 精神科訪問看護指示書が交付された場合 |
| 主治医から「精神科訪問看護指示書」が交付され、精神科訪問看護を受ける場合。 |
請求ミス・返戻を防ぐ!記録とレセプト作成のポイント
算定要件を正しく理解していても、日々の記録やレセプト作成が不十分だと、返戻や監査での指摘につながる可能性があります。
ここでは、実務で特に注意すべき記録のポイントを、具体的な記載例と共に解説します。
訪問看護計画書・サービス提供記録の必須記載事項と記載例
監査で最も重要視されるのが、計画書と日々の記録です。
特に20分未満の訪問については、なぜその時間でケアが終了したのか、客観的な事実を記録することが不可欠です。
| 記録の必須項目と記載例(サービス提供記録) |
|---|
| 必須項目 |
| 1. 開始・終了時刻 |
| 「9:05〜9:20」のように、分単位で正確に記載する。 |
| 2. 実施したケア内容 |
| 「気管内吸引を実施」「インスリン注射10単位を実施」など、具体的に記載する。 |
| 3. 利用者の状態 |
| バイタルサインやケア前後の利用者の様子を客観的に記載する。 |
| 4. 20分未満で終了した理由 |
| 「計画の気管内吸引のみで喀痰なく、状態安定のため終了」など、短時間で済んだ理由を明確に記載する。 |
レセプト摘要欄のNG例とOK例
レセプト(介護給付費明細書)の摘要欄も、請求の根拠を示す重要な部分です。
特に20分未満の訪問を算定した日については、訪問時刻を記載することが求められています。
| レセプト摘要欄の記載例 |
|---|
| NG例(不十分な記載) |
| – 空欄または「20分未満訪問」とだけ記載されている。 |
| – なぜ20分未満の訪問が必要だったのかが不明確。 |
| OK例(適切な記載) |
| – 「9:05〜9:20 気管内吸引のため訪問」のように、訪問時刻と目的が明確に記載されている。 |
| – 同日に複数回訪問した場合は、それぞれの時刻を記載する。 |
よくある疑問を解決!20分未満訪問に関するQ&A
ここでは、現場からよく寄せられる20分未満訪問に関する具体的な質問に、Q&A形式でお答えします。
日々の業務で判断に迷った際の参考にしてください。
Q. 状態確認のみの訪問でも算定できますか?
A. いいえ、原則として算定できません。
20分未満の訪問は、気管内吸引や褥瘡処置といった具体的な医療的ケアの実施を想定しています。
そのため、バイタルサイン測定や「変わりないですか?」といった状態確認のみで終了した場合は、算定の対象外となります。
必ず具体的なケア内容を記録に残すことが重要です。
Q. 1日に複数回の20分未満訪問は可能ですか?
A. はい、医学的な必要性があれば可能です。
例えば、1日に数回の吸引が必要な利用者に対して、ケアプランに基づき計画的に複数回訪問する場合は算定可能です。
ただし、その都度、訪問看護記録に訪問時刻や実施したケア内容、必要性を明確に記載する必要があります。
ケアプラン全体が20分未満の訪問だけで構成されないよう注意が必要です。
管理者必見|20分未満訪問を活かしたステーション運営と今後の展望
最後に、管理者・経営者の視点から、この制度をいかにステーションの安定運営と質の高いケア提供につなげるか、そのヒントと今後の動向について解説します。
変化する制度に的確に対応し、持続可能な事業運営を目指しましょう。
業務効率化とICT活用のススメ
短時間訪問は、移動時間や記録作成の負担が相対的に大きくなる傾向があります。
看護師がケアに集中できる環境を整えるためには、業務効率化が不可欠です。
- 電子カルテの導入: 訪問先で記録を完結させ、事業所に戻ってからの残業を削減します。
- スケジュール管理ツールの活用: 効率的な訪問ルートを自動作成し、移動時間を短縮します。
- 情報共有ツールの利用: スタッフ間のリアルタイムな情報共有を促進し、ケアの質を向上させます。
これらのICTツールを活用することで、記録業務の負担を軽減し、より質の高いケアを提供する時間を創出できます。
2026年度同時改定の動向と訪問看護の未来
2026年度には、診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されています。
現在、在宅医療を支える24時間体制の医療機関への評価充実や、訪問看護師の処遇改善などが議論されています。
これらの動向は、緊急時対応が必須となる20分未満訪問の運用にも影響を与える可能性があります。
日頃から制度改定の情報を収集し、変化に柔軟に対応できる組織体制を構築していくことが、今後のステーション運営においてますます重要になるでしょう。
まとめ:算定要件を正しく理解し、質の高いケアと健全な経営を実現しよう
この記事では、訪問看護における「20分未満の訪問」の算定要件について、介護保険と医療保険の違いや、請求・記録のポイントを詳しく解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返ります。
- 20分未満訪問は、短時間・頻回な医療的ケアを支える重要な制度です。
- 介護保険では「24時間体制」と「週1回以上の20分以上訪問」が必須の前提条件です。
- 医療保険では主治医の指示が根拠となり、2時間ルールはありません。
- 請求ミスを防ぐには、訪問の必要性を示す客観的な記録が不可欠です。
複雑なルールを一つひとつ正確に理解し、日々の業務に反映させることが、利用者からの信頼を得て、ステーションの安定した経営を実現する鍵となります。
この記事が、皆様の業務の一助となれば幸いです。
20分未満の訪問看護制度の目的と基本ルールは何ですか?
20分未満の訪問看護制度は、短時間で頻繁に必要となる医療的ケアを支援し、在宅療養者のQOL向上を目的としています。基本ルールとして、これは通常の20分以上の訪問看護を補完するものであり、ケアプラン全体が20分未満の訪問だけで構成されることは原則認められていません。
介護保険における20分未満の訪問看護の算定要件は何ですか?
介護保険の20分未満訪問看護を算定するには、まず24時間対応体制が整備されており、かつ週1回以上20分以上の訪問看護が計画に組み込まれている必要があります。次に、2024年度の改定により、訪問看護はステーションからなら314単位、病院や診療所からなら266単位が算定されます。また、気管内吸引やインスリン注射などの具体的な医療的ケアを行った場合に限られます。最後に、「2時間ルール」の例外として、緊急時に必要と判断される場合は個別に算定可能です。
医療保険における短時間訪問のルールと、介護保険との違いは何ですか?
医療保険の訪問看護には、20分未満や2時間ルールといった明確な時間区分や規定はなく、すべて主治医の発行する訪問看護指示書に基づいて実施されます。医療保険では、必要に応じて短時間・頻回な訪問も柔軟に行え、医学的必要性があれば規定以上の時間の訪問も可能です。対して、介護保険では20分未満のサービスは、原則としてケアプランに基づき計画されたものでなければ算定できません。
20分未満の訪問看護において、請求ミスや返戻を防ぐために必要な記録のポイントは何ですか?
請求ミスや返戻を防ぐには、サービス計画書や日々の記録において、訪問の開始・終了時刻を正確に、具体的なケア内容や利用者の状態、短時間で終了した理由を詳細に記載することが重要です。レセプトの摘要欄には、訪問時刻とケアの目的を明記し、複数回の訪問があった場合はそれぞれ記録することも必要です。これにより、適切な算定と証拠提示が可能になります。