訪問看護ステーションで働き始めたばかりのあなたへ。
日々の訪問業務に加えて、多くの書類作成に追われていませんか。
特に「訪問看護計画書」は、利用者様のケアの根幹をなす重要な書類ですが、「正しく書けているか不安」「何を書けば良いのか分からない」と感じる方も少なくありません。
この記事では、そんなあなたの悩みを解決します。
厚生労働省の指針に沿った訪問看護計画書の基本的な書き方から、ケアの質をぐっと高める目標設定のコツまで、分かりやすく解説します。
すぐに使える文例やテンプレートも豊富に紹介するので、この記事を読めば、自信を持って、効率的に質の高い計画書を作成できるようになります。
そもそも訪問看護計画書とは?目的と基本ルールを再確認
まず、訪問看護計画書の基本的な役割と法的な位置づけを理解しましょう。
この書類は、単に行政へ提出するための義務ではありません。
利用者様一人ひとりに合わせた質の高いケアを提供するための、非常に重要なツールなのです。
計画書の重要性を理解することで、作成への意識も変わるはずです。
なぜ必要?計画書の3つの重要な役割
訪問看護計画書には、大きく分けて3つの重要な役割があります。
これらは、利用者様だけでなく、看護師自身や事業所全体にとっても欠かせないものです。
| 役割 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 1. ケアの羅針盤 | 利用者様の目標を明確にし、それに向かってどのような看護を提供するのか、具体的な道筋を示します。これにより、ケアに一貫性が生まれ、目標達成へと繋がります。 |
| 2. 多職種連携の共通言語 | 医師やケアマネジャー、リハビリ専門職など、利用者様に関わる全てのスタッフが情報を共有するためのツールです。計画書があることで、チーム全体が同じ目標に向かって連携できます。 |
| 3. サービスの質と安全の担保 | 提供するケアの内容を明文化することで、サービスの質を保証します。また、事故やトラブルが発生した際には、適切なケアが計画・実施されていたことを証明する重要な記録にもなります。 |
いつ・誰が・どこへ?作成・更新・提出の基本ルール
訪問看護計画書には、作成から提出までの一連のルールが定められています。
実務で混乱しないよう、基本的な流れをしっかり押さえておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成タイミング | – 新規利用者様の訪問看護開始時 – 訪問看護指示書やケアプランに変更があった時 – 利用者様の状態に大きな変化があった時 – 目標が達成された、または変更が必要になった時 |
| 更新頻度 | 明確な規定はありませんが、一般的には月 1 回の頻度で見直し、更新・提出する事業所が多いです。 |
| 作成者 | 訪問看護ステーションの看護師、または保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士です。 |
| 提出・交付先 | – 主治医 – ケアマネジャー – 利用者様およびそのご家族(説明の上、同意を得て交付する義務があります) |
保管義務は2年間!紛失・漏洩を防ぐための注意点
作成した訪問看護計画書は、法律によって保管期間が定められています。
利用者様へのサービス提供が終了してから2 年間の保管義務があります。
これは、利用者様の個人情報を含む重要な書類であるため、紛失や情報漏洩がないよう厳重に管理しなければなりません。
紙媒体の場合は施錠できるキャビネットに、電子データの場合はアクセス制限を設けるなど、事業所のルールに従って適切に保管しましょう。
【項目別】厚生労働省の様式に沿った訪問看護計画書の書き方
ここからは、多くの方が最も知りたい「具体的な書き方」を解説します。
厚生労働省が示す様式に沿って、各項目で「何を書くべきか」「なぜそれが必要か」を一つひとつ見ていきましょう。
このセクションを読めば、どこに何を書けば良いのかが明確になり、迷わずペンを進められるようになります。
① 利用者情報|ケアの出発点となる基本情報を正確に
この項目では、利用者様の基本情報を記載します。
氏名や生年月日といった形式的な情報だけでなく、ケア計画を立てる上で土台となる情報を正確に網羅することが重要です。
これらの情報から、利用者様の全体像を把握し、個別性のあるケアへと繋げていきます。
| 記載すべき主な情報 | ポイント |
|---|---|
| 基本属性 | 氏名、生年月日、住所、連絡先など |
| 介護・医療情報 | 要介護認定の状況、主たる傷病名、既往歴 |
| 生活状況 | ADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作)、生活環境、家族構成、主たる介護者 |
② 看護・リハビリテーションの目標|利用者主体の長期・短期目標を設定
ケアの方向性を決める、計画書の心臓部です。
大切なのは、医療者側の視点だけでなく、利用者様やご家族が「どうなりたいか」「どんな生活を送りたいか」という意向を最大限に尊重することです。
その上で、達成すべき最終ゴールである「長期目標」と、そこへ至るまでの中間目標である「短期目標」を設定します。
- 長期目標: 3〜6 ヶ月程度で達成を目指す、最終的なゴール。
- 短期目標: 1 ヶ月程度で達成を目指す、具体的なステップ。
③ 問題点・解決策・評価|看護過程の核心部分
この項目では、設定した目標の達成を阻んでいる「問題点」を明確にします。
そして、その問題に対してどのようなアプローチで介入するのかを「解決策」として具体的に記述します。
提供したケアの結果どうなったかを「評価」し、次の計画に繋げるというPDCAサイクルを回すための重要な部分です。
④ 衛生材料等が必要な処置の有無|物品管理と費用負担に関わる重要項目
褥瘡(じょくそう)の処置や、在宅酸素療法などで特別な衛生材料が必要な場合に記載します。
「処置の内容」「衛生材料の種類・サイズ」「1 ヶ月あたりの必要量」を具体的に記入してください。
この情報は、訪問時に適切な物品を準備するためだけでなく、利用者様の費用負担にも関わるため、正確な記載が求められます。
⑤ 訪問予定の職種|チームケアの透明性を確保
その利用者様に関わる全ての職種と、それぞれの訪問頻度を記載します。
例えば、「看護師:週 2 回」「理学療法士:週 1 回」のように記入します。
これにより、利用者様やご家族、そしてケアマネジャーなどの関係者が、誰がいつ訪問するのかを一覧で把握できます。
チームケアを円滑に進めるための大切な情報共有です。
⑥ 備考|個別性の高いケアのための特記事項
他の項目には当てはまらない、ケアを提供する上での重要な情報を記載する欄です。
緊急時の連絡先や対応フロー、ご家族との連携で特に配慮すべき点、生活上の注意点などを記入します。
利用者様一人ひとりの状況に合わせた、より質の高いケアを提供するために有効活用しましょう。
⑦ 作成者情報・事業所の署名捺印|計画の責任を明確に
計画書の最後に、作成年月日、作成者の氏名と職種、事業所名、管理者名を記載し、事業所の印鑑を押します。
これにより、この計画書が事業所の公式な文書であることが証明され、内容に対する責任の所在が明確になります。
利用者様や関係機関からの信頼を得るためにも、必須の項目です。
【文例で学ぶ】ケアの質が変わる!目標設定と問題点の書き方のコツ
訪問看護計画書は、ただ項目を埋めるだけの書類ではありません。
書き方一つで、ケアの質は大きく変わります。
ここでは、新人看護師から一歩抜け出し、より質の高い計画書を作成するための思考プロセスと具体的な記述法を、文例を交えて深く掘り下げていきます。
コツ①:具体的で測定可能な目標を立てる「SMART原則」
目標設定に迷ったら、「SMART(スマート)原則」というフレームワークを活用しましょう。
これにより、誰が見ても分かりやすく、達成できたかどうかを客観的に評価できる目標を立てることができます。
| SMART原則 | 意味 | 悪い目標例 | 良い目標例 |
|---|---|---|---|
| Specific | 具体的に | 歩けるようになる | 手すりを使ってトイレまで歩けるようになる |
| Measurable | 測定可能に | 食事が摂れるようになる | 毎食、ご飯を茶碗半分の量、おかずを 3 品食べられるようになる |
| Achievable | 達成可能に | 毎日散歩に行く | (まずは)週に 1 回、家の周りを 5 分間歩く |
| Relevant | 関連性 | 体重を減らす | (転倒予防のために)下肢筋力を維持し、安全な歩行を継続する |
| Time-bound | 期限を設ける | いずれは自分で入浴する | 1 ヶ月後までに、見守り介助で浴槽に入れるようになる |
コツ②:看護過程の3要素「O-P・T-P・E-P」を使いこなす
「問題点・解決策」を記述する際には、看護過程の3つの要素を意識すると、思考が整理され、体系的な計画を立てやすくなります。
| 要素 | 計画の内容 | 目的 |
|---|---|---|
| O-P (Observation Plan) | 観察計画 | 利用者様の状態を把握し、変化を早期に発見するための計画です。 |
| T-P (Treatment / Care Plan) | 援助計画 | 問題を解決するために、看護師が直接行うケアや処置の計画です。 |
| E-P (Education Plan) | 教育計画 | 利用者様やご家族がセルフケア能力を高めるための指導計画です。 |
O-P (観察計画) の書き方と文例
「何を、いつ、どのように観察するか」を具体的に記述します。
【例:転倒リスクのある方】
- 毎訪問時、バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、SpO2)を測定する。
- 毎訪問時、歩行時のふらつきの有無、履物の状態を確認する。
- 週に 1 回、利用者様やご家族から転倒への恐怖感やヒヤリハット体験を聞き取る。
- 毎訪問時、室内の段差や障害物の有無など、療養環境を評価する。
T-P (援助計画) の書き方と文例
看護師が直接行うケア内容を具体的に記述します。
【例:転倒リスクのある方】
- 週に 2 回、ベッドサイドで下肢筋力トレーニングを 10 分間実施する。
- トイレや浴室への移動時は、安全確認のため必ず付き添い介助を行う。
- 滑りにくい室内履きの使用を促し、必要に応じて購入を支援する。
- ケアマネジャーと連携し、手すりの設置や段差解消などの環境整備を提案する。
E-P (教育計画) の書き方と文例
利用者様やご家族に指導する内容を具体的に記述します。
【例:転倒リスクのある方】
- 利用者様とご家族に対し、転倒の危険性と予防策についてパンフレットを用いて説明する。
- 自宅で簡単にできる転倒予防体操の方法を実演し、一緒に実践する。
- 転倒してしまった際の対応方法(助けの呼び方、起き上がり方)について指導する。
【保険別】介護・医療・精神科で違う!計画書の様式と視点
訪問看護で利用する公的保険には、主に「介護保険」と「医療保険」があります。
また、精神疾患を持つ方には専用の様式が用意されています。
どの保険を利用するかによって計画書で重視されるポイントが異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
| 項目 | 介護保険向け | 医療保険向け | 精神科訪問看護向け |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 生活全般の支援 ADL・QOLの維持・向上 | 病状管理と医療処置 医師の指示に基づく療養上の世話 | 精神状態の安定 社会生活への適応支援 |
| 計画の視点 | ケアプランとの連携を重視し、利用者の「暮らし」に焦点を当てる | 訪問看護指示書に基づき、病状の安定や医療的ケアに焦点を当てる | 精神症状の評価、服薬管理、対人関係、社会参加に焦点を当てる |
| 目標例 | 3 ヶ月後までに、手すりを使って一人でトイレに行けるようになる | 1 ヶ月後までに、インスリン自己注射を安全に実施できるようになる | 2 ヶ月後までに、日中の活動時間を 3 時間確保し、生活リズムを整える |
介護保険向け:生活全般の支援とADL維持・向上が中心
介護保険を利用する場合、計画書はケアマネジャーが作成する「居宅サービス計画(ケアプラン)」との整合性が強く求められます。
病気の管理だけでなく、食事や排泄、入浴といった日常生活動作(ADL)の維持・向上や、その人らしい生活の実現(QOL向上)が主な目的となります。
多職種と連携し、利用者様の「生活全体」を支える視点が重要です。
医療保険向け:医師の指示に基づく病状管理と医療処置が中心
医療保険を利用するのは、厚生労働省が定める特定の疾患を持つ方や、急性増悪期、終末期など、より医療的なニーズが高い方です。
そのため、計画書は主治医からの「訪問看護指示書」の内容を忠実に反映させる必要があります。
バイタルサインの管理、点滴や褥瘡の処置、カテーテルの管理といった、病状の安定化や医療処置の実施が計画の中心となります。
精神科訪問看護向け:精神状態の安定と社会参加の支援が中心
精神疾患を持つ方を対象とする訪問看護では、専用の計画書様式を用います。
精神症状の観察(幻覚、妄想、気分の波など)や、内服薬の管理、ご本人やご家族からの相談対応が重要なケア内容となります。
目標も、症状の安定に加えて、規則正しい生活リズムの確立や、デイケアへの参加、就労支援といった社会との繋がりを取り戻すための支援が中心となります。
訪問看護計画書にまつわるQ&A|素朴な疑問から監査の不安まで解消
ここでは、日々の業務で看護師が抱きがちな、訪問看護計画書に関する細かい疑問や不安について、Q&A形式でお答えします。
「こんな時どうすれば?」という悩みを解消し、自信を持って業務にあたりましょう。
Q1. 利用者さんのサインはいつ、どうやって貰う?代筆は可能?
A. 計画書を作成または更新したら、その内容を利用者様やご家族に分かりやすく説明し、同意を得た上で署名(サイン)または記名・捺印をいただきます。
タイミングとしては、説明を行った訪問の際にいただくのが一般的です。
ご本人が病気などの理由で署名できない場合は、ご家族に代筆していただくことが可能です。
その際は、代筆者の方の氏名と、ご本人との続柄を併記してもらいましょう。
Q2. 監査・実地指導では計画書のどこを見られますか?
A. 監査や実地指導では、主に以下の点がチェックされます。
- 主治医の「訪問看護指示書」やケアマネジャーの「ケアプラン」の内容と整合性が取れているか。
- 利用者様の状態やニーズに基づいた、個別性のある目標や計画が立てられているか。
- 計画書通りにサービスが提供されているか(訪問看護記録書との一致)。
- 利用者様やご家族への説明、同意、交付が適切に行われているか。
- 定期的な見直しや更新が行われているか。
Q3. 忙しくて時間がない!書類作成を効率化するコツは?
A. 書類作成の時間を短縮し、本来のケア業務に集中するための工夫は非常に重要です。
まずは、この記事で紹介したような文例や、事業所内で共有されているテンプレートを上手に活用しましょう。
また、近年は多くの事業所で電子カルテや訪問看護支援システムが導入されています。
これらのシステムは、情報入力の手間を省き、スタッフ間の情報共有をスムーズにするだけでなく、転記ミスを防ぐメリットもあります。
ツールの活用も視野に入れ、業務全体の効率化を図ることが大切です。
まとめ:計画書は利用者と自分を守る「未来への羅針盤」
訪問看護計画書は、決して単なる事務作業ではありません。
利用者様一人ひとりの「その人らしい生活」という未来を描き、そこへ向かうための具体的な道筋を示す「羅針盤」です。
そして、質の高いケアを提供した証として、利用者様だけでなく、看護師であるあなた自身や事業所を守る大切な記録にもなります。
この記事で解説した書き方の基本とコツを実践すれば、あなたの作成する計画書は、きっと利用者様の生活をより豊かにする力を持つはずです。
計画書作成への苦手意識を克服し、自信を持って、利用者様の未来を紡ぐ創造的なプロセスとして楽しんでいきましょう。
訪問看護計画書とは何ですか?その目的と基本ルールは?
訪問看護計画書は、利用者一人ひとりに適した質の高いケアを提供するためのツールであり、法的にはサービス提供の根拠となります。作成・更新・提出の基本ルールには、作成タイミングや更新頻度、作成者や提出先の規定が含まれます。
訪問看護計画書の主な役割とは何ですか?
訪問看護計画書の役割は、ケアの羅針盤として利用者の目標を明確にし、チーム内の多職種連携の共通言語を作り出し、サービスの質と安全性を保証することです。
計画書の作成や更新のタイミングとルールはどのようになっていますか?
作成は新規利用者の開始時や状況変化時に行い、一般的には月1回の頻度で見直しと更新を行います。作成者は主に看護師や医療系の専門職で、提出先は医師、ケアマネジャー、利用者やその家族です。
訪問看護計画書の保管義務と注意点は何ですか?
作成された計画書は利用者サービス終了後から2年間、紛失や漏洩を防ぐために厳重に管理し、紙媒体は施錠できるキャビネット、電子データはアクセス制限を設けて保存します。
良い訪問看護計画書を作成するためのコツは何ですか?
具体的で測定可能な目標を設定し、看護過程の3つの要素(O-P・T-P・E-P)を体系的に使いこなすことが重要です。目標にはSMART原則を用い、問題点・解決策・評価を明確に記述すると、ケアの質が向上します。