「訪問看護の同一建物減算、”1″と”2″の違いって何だろう?」
「レセプト請求の際に、算定ミスをしていないかいつも不安になる…」
訪問看護ステーションの管理者や請求ご担当者様なら、一度はこう思われたことがあるかもしれません。
はじめに結論をお伝えします。
実は、現在の訪問看護制度には「同一建物減算1」と「同一建物減算2」という明確な区分は存在しません。
ではなぜ、このような言葉で検索されるのでしょうか。
この記事では、その誤解が生まれる背景から、訪問看護で本当に理解すべき介護保険・医療保険それぞれの減算ルールまで、わかりやすく解説します。
最後までお読みいただければ、算定要件の違いが明確になり、明日からの請求業務に自信が持てるようになります。
【結論】訪問看護に「同一建物減算1・2」の区分は存在しない
まず最も重要な点として、現在の訪問看護の制度(介護保険・医療保険)には「同一建物減算1」および「同一建物減算2」という名称の区分は法的に存在しないことをご理解ください。
この事実は、多くの請求担当者様が抱える疑問を解消する第一歩です。
したがって、この区分を探しても公式な資料には記載がありません。
ではなぜ、この「1と2」という言葉が使われるようになったのでしょうか。
なぜ「1と2」と検索される?原因は「定期巡回サービス」との混同
「同一建物減算1と2」という区分が存在するのは、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」という別の介護サービスです。
このサービスでは、事業所と建物の位置関係や利用者数に応じて、減算単位数が明確に2段階に分かれています。
訪問看護と名称が似ているため、この制度と混同してしまい、誤解が生まれたと考えられます。
参考までに、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の減算ルールを以下に示します。
| 減算区分 | 減算単位数(月額) | 主な適用要件 |
|---|---|---|
| 同一建物減算1 | 600単位 | 事業所と同一敷地内・隣接地、または同一の建物に居住する利用者へサービスを提供した場合 |
| 同一建物減算2 | 900単位 | 上記の建物に居住する利用者が、1月あたり50人以上いる場合にサービスを提供した場合 |
このように、訪問看護とは異なるサービスで使われている区分が、誤って訪問看護の制度として認識されているのが実情です。
訪問看護で本当に理解すべき「2つの減算ルール」とは?
「1と2」の区分がないことはご理解いただけたかと思います。
それでは、訪問看護ステーションの運営で本当に理解し、注意すべき減算ルールとは何でしょうか。
それは、「介護保険」と「医療保険」という2つの異なる保険制度で、それぞれ独自の同一建物減算ルールが定められているという点です。
この2つの制度の違いを正確に把握することが、正しいレセプト請求の鍵となります。
次の章から、それぞれのルールを詳しく見ていきましょう。
【介護保険】訪問看護の同一建物減算|2段階の減算率と算定要件
まず、介護保険における同一建物減算について解説します。
この制度は、集合住宅などへ効率的に訪問できる状況を考慮し、報酬を適正化する目的で設けられています。
サービスの効率性を評価するため、事業所と建物の位置関係や、その建物に住む利用者数によって減算率が決まるのが特徴です。
「10%減算」と「15%減算」の違いは?利用者数で決まる減算率
介護保険の訪問看護では、減算率が「10%」と「15%」の2段階に設定されています。
これが、実質的に「1と2」の違いに相当する部分と言えるかもしれません。
どちらが適用されるかは、以下の条件によって決まります。
| 減算率 | 適用される条件 |
|---|---|
| 10%減算 | – 訪問看護ステーションと同一敷地内または隣接する敷地内の建物に居住する利用者へサービスを提供する場合 – 上記以外の建物でも、1月あたりの利用者数が20人以上の建物に居住する利用者へサービスを提供する場合 |
| 15%減算 | – 訪問看護ステーションと同一敷地内または隣接する敷地内の建物で、1月あたりの利用者数が50人以上の建物に居住する利用者へサービスを提供する場合 |
ポイントは、「事業所との位置関係」と「建物内の利用者数」という2つの要素で判断される点です。
「同一建物」の定義と範囲|判断に迷う具体例も解説
算定の基本となる「同一建物」や「同一敷地内」の定義は、正しく理解しておく必要があります。
厚生労働省の解釈によれば、効率的なサービス提供が可能かどうかが判断の基準となります。
- 同一敷地内建物等とは
- 事業所と同じ敷地内にある建物
- 事業所に隣接する敷地にある建物
- 事業所と同じ建物
- 判断に迷うケース
- 道路を挟んだ向かいの建物: 効率的に訪問できる場合は対象となることがあります。
- 広大な敷地に複数の建物が点在: 移動に時間がかかり効率化が図れない場合は、対象外となることがあります。
- 渡り廊下で繋がっている建物: 対象となります。
実務で判断に迷った際は、移動の実態に即して効率化が図られているかを基準に考え、必要であれば保険者に確認することが重要です。
利用者数の正しいカウント方法|月平均の計算式と注意点
減算率を決定する「1月あたりの利用者数」は、以下の計算式で算出します。
計算式:当該月の利用者の日ごとの合計数 ÷ 当該月の日数
例えば、4月(30日間)の利用者数の日ごとの合計が630人だった場合、「630人 ÷ 30日 = 21人」となります。
この場合、月平均の利用者数は21人となり、「20人以上」の基準を満たすため10%減算の対象となります。
- 計算時の注意点
- 計算結果の小数点以下は切り捨てます。
- 利用者数は、介護保険の訪問看護を利用した人数でカウントします。
- 同一敷地内に複数の建物がある場合、それらの建物の利用者を合算して判断することがあります。
正確な請求のためにも、毎月の利用者数を正しく把握する仕組みを整えましょう。
【医療保険】同一建物居住者への訪問看護|介護保険との違いは?
次に、医療保険における同一建物減算のルールを解説します。
医療保険では「同一建物居住者訪問看護・指導料」という名称が使われており、介護保険とは算定の考え方が大きく異なります。
最大の違いは、事業所との位置関係や月間の利用者数ではなく、「1日に何人の利用者を訪問したか」で判断される点です。
「同一日の訪問人数」がカギ|3人目以降は報酬が減額
医療保険では、同一の建物に住む複数の利用者に対し、同じ日に訪問看護を行った場合に減算が適用されます。
具体的には、3人目以降の利用者から基本療養費が減額される仕組みです。
| 同一日の訪問人数 | 算定される報酬 |
|---|---|
| 1人目 | 通常の基本療養費(減算なし) |
| 2人目 | 通常の基本療養費(減算なし) |
| 3人目以降 | 基本療養費が50%減額 |
このルールは1日(暦日)単位で判定されます。
したがって、たとえ同じ建物に多くの利用者がいても、訪問する日を分ければ減算の対象とはなりません。
効率的なスケジュール管理が収益に直結する、重要なポイントです。
一目でわかる!介護保険と医療保険の同一建物減算 比較早見表
ここまで解説してきた介護保険と医療保険の減算ルールは、混同しやすいため注意が必要です。
両者の違いを正確に理解し、実務でいつでも確認できるよう、以下の早見表にまとめました。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 減算の名称 | 同一建物減算 | 同一建物居住者訪問看護・指導料 |
| 判断の基準 | 建物の位置関係と月平均の利用者数 | 同一日における同一建物内の訪問人数 |
| 減算の種類・率 | – 10%減算 – 15%減算 | 3人目以降 50%減額 |
| 計算の単位 | 訪問ごと | 1日(暦日)単位 |
| 主な適用条件 | – 事業所と同一/隣接敷地 – 月20人以上または月50人以上の建物 | 同一日に同一建物の利用者3人以上に訪問 |
この表を活用し、利用者ごとにどちらの保険が適用されるか、そしてどの減算ルールに該当するかを正確に判断してください。
算定ミスを防ぐ!現場で迷うケース別Q&A
制度を理解しても、実際の現場では判断に迷うケースが出てくるものです。
ここでは、管理者や請求担当者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. 夫婦で同じマンションに住んでいる場合、利用者数はどう数える?
A1. 利用者数は「2人」としてカウントします。
同一建物減算における利用者数のカウントは、世帯単位ではなく個人単位で行います。
したがって、ご夫婦それぞれが訪問看護の利用者である場合、介護保険の月平均利用者数を計算する際も、医療保険の同日訪問人数を数える際も、それぞれ「2人」として扱います。
Q2. 2024年度介護報酬改定で訪問看護の同一建物減算に変更はあった?
A2. 訪問看護の同一建物減算に直接的な変更はありませんでした。
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定において、訪問看護の同一建物減算の単位数や算定要件自体には変更はありませんでした。
ただし、訪問介護サービスでは、同一建物へのサービス提供割合が極端に高い事業所に対する減算(12%減算)が新設されるなど、制度全体の効率化・適正化の流れは続いています。
今後の動向にも注意が必要です。
まとめ:正しい知識で算定ミスを防ぎ、ステーション経営を安定させよう
今回は、訪問看護における同一建物減算について、多くの人が誤解しがちな「1と2の違い」から、介護保険と医療保険の正しいルールまでを解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。
- 訪問看護に「同一建物減算1・2」という区分は存在せず、他サービスとの混同であること。
- 理解すべきは「介護保険」と「医療保険」の2つの異なる減算ルールであること。
- 介護保険は、事業所との位置関係と月平均の利用者数(20人/50人)で10%または15%減算となる。
- 医療保険は、同一日の訪問人数が基準となり、3人目以降の報酬が50%減額される。
これらの違いを正確に理解し、日々の請求業務に反映させることが、算定ミスによる返戻を防ぎ、訪問看護ステーションの健全な経営を守ることに繋がります。
この記事が、皆様の業務の一助となれば幸いです。
訪問看護の『同一建物減算1』と『同一建物減算2』の違いは何ですか?
実は、現在の訪問看護制度には『同一建物減算1』と『同一建物減算2』という明確な区分は存在しません。これらは、誤って呼ばれることがある制度名であり、実際には『介護保険』と『医療保険』それぞれで異なるルールが定められています。
なぜ『同一建物減算1・2』という用語が使われるのですか?
この用語は、『定期巡回・随時対応型訪問介護看護』という別のサービスの区分が誤って訪問看護の制度に関して使われていることから生まれた誤解です。実際には、両制度は異なるルールによって算定されます。
訪問看護で理解すべき『二つの減算ルール』とは何ですか?
訪問看護で理解すべきは、『介護保険』と『医療保険』の二つの制度における異なる同一建物減算ルールです。介護保険は利用者の月平均数と事業所との位置関係に基づき、医療保険は同一日の訪問人数に基づいて減算を行います。
介護保険における同一建物減算のルールは何ですか?
介護保険の同一建物減算は、建物の位置関係と月平均の利用者数により、『10%減算』と『15%減算』の二段階に分かれます。20人以上または50人以上の建物へのサービス提供時にこれらの減算が適用されます。
医療保険の同一建物居住者訪問看護のルールはどう違いますか?
医療保険では、同じ建物に住む複数の利用者に対し、同じ日に訪問した場合に減算が適用されます。3人目以降は、報酬が50%減額される仕組みです。これは訪問日ごとに判断され、スケジュール管理のポイントとなります。