病院の忙しさに追われ、もっと患者さんと向き合う看護がしたいと感じている看護師の方。
あるいは、ご家族の在宅療養を考え、専門家のサポートを受けたいけれど不安を感じている方。
訪問看護は、そんな双方の想いに応える可能性を秘めたサービスです。
この記事では、訪問看護のメリットとデメリットを「働く看護師」と「利用する患者・家族」の両方の視点から徹底的に解説します。
転職やサービスの利用で後悔しないために、客観的な情報を手に入れ、あなたにとって最善の選択をするための一助となれば幸いです。
そもそも訪問看護とは?サービス内容と他サービスとの違い
訪問看護とは、看護師が利用者の自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて医療的ケアや療養上のサポートを提供するサービスです。
病気や障害があっても、住み慣れた地域や家庭でその人らしく暮らせるように支援することを目的としています。
訪問看護と混同されやすい「訪問診療」や「訪問介護」との違いを理解することが重要です。
| サービス種別 | 担当する職種 | 主なサービス内容 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護 | 看護師、理学療法士など | 医療的ケア、病状管理、リハビリ、精神的支援 | 療養生活の支援 |
| 訪問診療 | 医師、歯科医師 | 診察、治療、薬の処方、療養上の相談 | 医学的管理、治療 |
| 訪問介護 | 介護福祉士、ヘルパー | 身体介護(食事・入浴介助)、生活援助(掃除・調理) | 日常生活の支援 |
【働く看護師向け】訪問看護のメリット5選|やりがい・給与・働き方
病院での慌ただしい業務や複雑な人間関係、不規則な勤務に悩み、新しい働き方を模索している看護師にとって、訪問看護は非常に魅力的な選択肢です。
ここでは、訪問看護師として働くことの具体的なメリットを5つご紹介します。
ワークライフバランスの改善から、看護師としての専門性を深めるやりがいまで、その魅力に迫ります。
メリット1:夜勤なし・土日休みでワークライフバランスを保ちやすい
多くの訪問看護ステーションは、日中の時間帯でサービスを提供しており、夜勤がないのが大きな特徴です。
また、土日祝日を定休日としている事業所が多いため、家族や友人との時間を大切にできます。
これにより、心身ともにゆとりを持って仕事に取り組むことができ、プライベートの充実が仕事の質を高める好循環を生み出します。
| 項目 | 病院勤務(病棟)の例 | 訪問看護の例 |
|---|---|---|
| 勤務時間 | 2交代制や3交代制(夜勤あり) | 9:00〜18:00の日勤が中心 |
| 休日 | シフト制による不定期な休み | 土日祝日休みが多い |
| 生活リズム | 不規則になりがち | 規則正しい生活を送りやすい |
| 特記事項 | 夜勤手当がある | オンコール対応がある場合も |
メリット2:日勤のみでも給与水準が比較的高め
「夜勤がない分、給料が大幅に下がるのではないか」という不安を持つ方も多いかもしれません。
しかし、訪問看護師の平均年収は400万円〜550万円程度とされており、病院勤務の看護師と比べても遜色のない水準です 。
基本給に加えて、訪問件数に応じたインセンティブ(訪問手当)が付く事業所も多く、経験や能力が給与に反映されやすい仕組みになっています。
メリット3:利用者一人ひとりと深く向き合える看護が実現できる
病院では多くの患者を同時に受け持つため、一人ひとりとじっくり関わる時間を確保するのが難しい場合があります。
一方、訪問看護では決められた時間、一人の利用者とその家族に集中してケアを提供できます。
利用者の生活背景や価値観を深く理解し、その人らしい生き方を支えるオーダーメイドの看護を実践できることは、大きなやりがいにつながります。
メリット4:将来性が高く在宅医療のエキスパートを目指せる
日本は超高齢社会を迎え、国は医療の場を病院から在宅へと移行させる「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。
このシステムの中心的な役割を担うのが訪問看護であり、その需要は今後ますます高まっていくことが確実です。
訪問看護の現場で培った経験は、在宅医療のエキスパートとしてのキャリアを築く上で、非常に価値のあるものとなります。
メリット5:直行直帰など柔軟な働き方も可能
事業所によっては、自宅から直接利用者の家へ訪問し、最後の訪問先からそのまま帰宅する「直行直帰」が認められている場合があります。
これにより、事務所への立ち寄り時間が短縮され、時間を有効に活用できます。
また、子育て中の看護師などを対象に、時短勤務やパートタイムといった多様な働き方を提供している事業所も増えています。
【働く看護師向け】知っておくべきデメリットと実情|転職後の後悔を防ぐ
多くの魅力がある一方で、訪問看護には特有の厳しさや課題も存在します。
転職してから「こんなはずではなかった」と後悔しないために、デメリットとその実情を正しく理解しておくことが不可欠です。
ここでは、看護師が直面しやすい4つのデメリットと、それに対する事業所のサポート体制について解説します。
デメリット1:オンコール対応による精神的な負担
多くのステーションでは、夜間や休日に利用者からの緊急連絡に対応するための「オンコール」体制をとっています。
いつ電話が鳴るかわからないという緊張感は、精神的な負担になる可能性があります。
ただし、オンコール体制は事業所によって大きく異なり、負担を軽減するための工夫がされています。
| オンコール体制の比較 | A事業所の例 | B事業所の例 |
|---|---|---|
| 担当頻度 | 月に5〜7回程度 | 複数人で分担し月に2〜3回 |
| 手当 | 1回あたり2,000円 | 待機手当に加え、出動時は別途手当 |
| サポート | 管理者が常にバックアップ | ファーストコールを管理者が担当 |
デメリット2:「現場で一人」のプレッシャーと責任の重さ
基本的に一人で利用者の自宅を訪問するため、急な状態変化があった際の判断や処置を一人で行う必要があります。
この「現場で一人」という状況は、特に経験の浅い看護師にとっては大きなプレッシャーとなるでしょう。
しかし、決して孤独に業務を行っているわけではなく、多くの事業所ではチームで支える体制を構築しています。
| 不安を解消するサポート体制 | 具体的な内容 |
|---|---|
| リアルタイム相談 | スマートフォンや業務用チャットツールで、訪問中でも他の看護師や管理者に即座に相談できる。 |
| チームでの情報共有 | 定期的なカンファレンスや日々の申し送りで、全スタッフが利用者の情報を共有し、方針を共に考える。 |
| 同行訪問 | 独り立ちするまで、経験豊富な先輩看護師がOJTとして同行し、実践的な指導を行う。 |
| 緊急時バックアップ | オンコール担当者が緊急訪問する際、必要に応じて他のスタッフが駆けつけられる体制がある。 |
デメリット3:高いアセスメント力と臨機応変な判断力が求められる
医師が常駐していない在宅の現場では、看護師自身が利用者の状態を的確に観察し、判断する高いアセスメント能力が不可欠です。
バイタルサインだけでなく、表情や言動、生活環境の変化など、五感をフルに使って情報を収集し、次に行うべきケアを判断しなければなりません。
これは大きな責任を伴いますが、同時に看護師としての専門性を飛躍的に高める成長の機会でもあります。
デメリット4:教育・研修体制が不十分な事業所もある
特に小規模な事業所の中には、体系的な新人教育プログラムやキャリアアップのための研修制度が十分に整っていない場合があります。
実践を通じて学ぶOJTが中心となり、スキルアップに不安を感じることもあるかもしれません。
そのため、転職活動の際には、教育体制について事前にしっかりと確認することが重要です。
| 転職時に確認したい教育体制のチェックリスト |
|---|
| – 新人研修や中途採用者向けの研修プログラムはあるか |
| – 先輩看護師による同行訪問の期間はどのくらいか |
| – 定期的な勉強会や事例検討会は開催されているか |
| – 外部研修への参加支援や資格取得支援制度はあるか |
| – キャリアラダー(段階的な育成指標)は導入されているか |
【利用を考える患者・家族向け】訪問看護のメリット5選
ご家族の在宅療養を支える上で、訪問看護は非常に心強い味方となります。
ここでは、利用者とその家族の視点から、訪問看護を利用する具体的なメリットを3つご紹介します。
住み慣れた環境で質の高いケアを受けられることで、療養生活はより豊かで安心できるものになります。
メリット1:住み慣れた自宅で安心して療養できる
病院という慣れない環境ではなく、長年暮らしてきた愛着のある自宅で療養を続けられることは、何よりの安心感につながります。
自分のペースで生活し、家族やペットと共に過ごしながら専門的なケアを受けられるため、精神的な安定を保ちやすくなります。
この精神的な安定が、病状の回復や安定に良い影響を与えることも少なくありません。
メリット2:専門的な医療ケアで家族の介護負担が軽くなる
痰の吸引、インスリン注射、褥瘡(床ずれ)の処置、胃ろうの管理など、家族だけでは対応が難しい医療的ケアを看護師に任せることができます 。
これにより、介護を行う家族の身体的な負担はもちろん、「もし何かあったらどうしよう」という精神的なプレッシャーも大幅に軽減されます。
看護師が訪問している時間は、介護者が休息をとったり、自分の用事を済ませたりする貴重な時間にもなります。
| 役割分担の例 | ご家族ができること | 看護師に任せられること |
|---|---|---|
| 日常のケア | 食事の準備、身の回りの世話 | 服薬管理、健康状態のチェック |
| 医療的ケア | (簡単な)体温測定、湿布の貼り替え | 血糖測定、点滴管理、カテーテル交換 |
| 精神的サポート | 日常の会話、団らん | 療養上の不安に対する傾聴、専門的アドバイス |
メリット3:通院の身体的・時間的負担がなくなる
特に高齢者や重度の障害を持つ方にとって、病院への通院は大きな負担となります。
訪問看護を利用すれば、自宅で診察やケアを受けられるため、この負担がなくなります。
移動のための準備や交通手段の手配、病院での長い待ち時間から解放されることは、利用者本人と家族の双方にとって大きなメリットです。
【利用を考える患者・家族向け】注意したいデメリットと対処法
訪問看護の利用を検討する上で、事前に知っておくべき注意点もいくつかあります。
費用面や緊急時の対応など、不安に感じる点をあらかじめ理解し、対処法を知っておくことで、安心してサービスを開始できます。
デメリット1:費用(自己負担)が発生する
訪問看護は、介護保険や医療保険の適用対象となりますが、利用には1割〜3割の自己負担が必要です。
利用頻度やサービス内容によっては、月々の負担額が大きくなる可能性もあります。
詳しい料金体系については次の章で解説しますが、利用を開始する前に、担当のケアマネージャーや事業所の相談員に費用の見積もりを確認することが大切です。
デメリット2:緊急時の対応に時間がかかる可能性
24時間対応体制をとっている事業所であっても、緊急時に連絡してから看護師が到着するまでにはある程度の時間がかかります。
病院のように、常に医師や看護師がそばにいる環境とは異なります。
そのため、どのような状態になったら緊急連絡をするのか、救急車を呼ぶべき状況はどのような時かなど、事前にルールを決めておくことが重要です。
| 緊急時対応の事前確認リスト |
|---|
| – 24時間対応の緊急連絡先はどこか |
| – 緊急訪問が可能か、その場合の追加料金はいくらか |
| – どのような症状が出たら連絡すべきか(具体的な基準) |
| – 救急車を呼ぶべき症状の基準は何か |
| – 主治医や他のサービス事業者との連携方法はどうか |
訪問看護の料金体系と利用までの流れ
実際に訪問看護を利用する際の料金は、どの公的保険が適用されるかによって異なります。
ここでは、「介護保険」「医療保険」、そして保険適用外の「自費利用」の3つのケースについて解説します。
また、サービス開始までの一般的な流れもご紹介します。
| 保険種別 | 対象者 | 自己負担割合 | 利用限度など |
|---|---|---|---|
| 介護保険 | 65歳以上で要支援・要介護認定を受けた方 40〜64歳で特定疾病により認定を受けた方 | 1割〜3割 (所得による) | ケアプランに基づき、要介護度ごとの支給限度額の範囲内で利用。 |
| 医療保険 | 40歳未満の方 要支援・要介護認定を受けていない方 厚生労働大臣が定める疾病等の方 病状の急性増悪期、退院直後の方など | 1割〜3割 (年齢・所得による) | 原則週3回まで。ただし、特定の疾病や状態の場合は回数制限が緩和される。 |
| 自費利用 | 保険適用の条件に合わない方 保険の利用限度を超えてサービスを受けたい方 | 10割(全額自己負担) | 事業所が定める料金。回数や時間の制限がなく、柔軟なサービスを受けられる。 |
自費で利用する場合の料金は事業所によって様々ですが、看護師によるケアは1時間あたり8,000円〜12,000円程度が相場とされています 。
サービスを利用するまでの流れは、一般的に以下の4つのステップで進みます。
- 相談
現在治療を受けている病院の相談室や、担当のケアマネージャー、地域包括支援センターなどに「訪問看護を利用したい」と相談します。 - 主治医からの指示書
訪問看護の利用には、主治医が発行する「訪問看護指示書」が必ず必要になります。相談先と連携し、主治医に作成を依頼します。 - 事業所との契約
利用する訪問看護ステーションを決定し、事業所の担当者と面談します。サービス内容や料金、緊急時の対応などについて説明を受け、納得した上で契約を結びます。 - サービス開始
ケアプランや訪問看護計画書に基づき、定期的な訪問が開始されます。
訪問看護とは何ですか?
訪問看護とは、看護師が利用者の自宅を訪問し、医療的ケアや療養支援を提供するサービスです。住み慣れた地域や家庭で、その人らしい暮らしを支援することを目的としています。
訪問看護と他の訪問サービスとの違いは何ですか?
訪問看護は医療的ケアと療養支援を提供し、看護師や理学療法士が担当します。訪問診療は医師による診察と治療、訪問介護は身体介助や生活援助を行います。それぞれの目的と担当者の違いを理解することが重要です。
訪問看護のメリットにはどのようなものがありますか?
訪問看護のメリットには、夜勤や土日休みでワークライフバランスを保てる点、比較的高い給与水準、一人ひとりと深く向き合える看護、在宅医療の将来性、柔軟な働き方ができる点などがあります。
訪問看護を利用する際の注意点は何ですか?
注意点には、自己負担の費用、緊急時の対応に時間がかかる可能性、オンコールや一人での現場作業のプレッシャー、高いアセスメント力と判断力の必要性、教育・研修体制の不十分さがあります。事前にしっかり確認し対策を講じることが重要です。
訪問看護の料金体系と利用の流れはどうなっていますか?
料金は保険適用によって異なり、自己負担割合は1割〜3割です。利用の流れは相談から始まり、医師の指示書取得、事業所との契約、サービス開始のステップを踏みます。公的保険や自費利用など多様な選択肢があり、事前に費用や手続きについて確認が必要です。