ご家族の在宅療養を支える中で、「訪問看護にもっと頻繁に来てほしい」と感じることはありませんか。
親御さんや配偶者の容態が変化し、不安な夜を過ごしている方もいらっしゃるでしょう。
また、ご自身の介護による心身の負担が限界に近づき、「毎日でも専門家に来てほしい」と切実に願う方も少なくありません。
しかし、訪問看護の利用回数は、介護保険や医療保険といった複雑な制度によって決められています。
「うちの場合は週に何回まで利用できるの?」「どうすれば回数を増やせるの?」といった疑問や悩みを抱えながらも、誰に相談すれば良いか分からずにいる方も多いのが現状です。
この記事では、そんなあなたのための道しるべです。
訪問看護の利用回数を決める基本的なルールから、週4回以上の訪問や毎日の訪問を可能にする特別な条件まで、専門外の方にも分かりやすく解説します。
この記事を最後まで読めば、ご自身の状況に合わせて利用回数を増やすための具体的な方法と、医師やケアマネジャーへの相談の仕方が分かります。
まずは基本から。訪問看護の回数を決める「医療保険」と「介護保険」の違い
訪問看護の利用回数を理解するためには、まず「医療保険」と「介護保険」という2つの公的制度について知る必要があります。
どちらの保険が適用されるかによって、利用回数のルールが大きく異なるからです。
ご家族がどちらに該当するのかを把握することが、最初のステップとなります。
【介護保険】ケアプラン次第で回数に上限なし!ただし「限度額」に注意
介護保険を利用する場合、訪問看護の利用回数に「週何回まで」という明確な上限はありません。
しかし、無制限に利用できるわけではなく、要介護度ごとに定められた「区分支給限度基準額」という月々の上限金額の範囲内でサービスを組み合わせる必要があります。
この限度額には、訪問看護だけでなく、デイサービスや訪問介護、福祉用具のレンタルなど、他の介護サービスの費用も含まれます。
そのため、他のサービスを多く利用している場合は、訪問看護に使える金額が少なくなり、結果的に利用回数が制限されることがあります。
どのサービスをどれくらい利用するかは、担当のケアマネジャーが作成する「ケアプラン」によって決まります。
| 要介護度 | 区分支給限度基準額(1ヶ月あたり) |
|---|---|
| 要支援 1 | 50,320 円 |
| 要支援 2 | 105,310 円 |
| 要介護 1 | 167,650 円 |
| 要介護 2 | 197,050 円 |
| 要介護 3 | 270,480 円 |
| 要介護 4 | 309,380 円 |
| 要介護 5 | 362,170 円 |
【医療保険】原則は「週3回まで」が基本ルール
医療保険で訪問看護を利用する場合、原則として訪問は1週間に3回までと定められています。
これは、年齢に関わらず、医師が訪問看護の必要性を認めたすべての方が対象となる基本ルールです。
介護保険のように他のサービスとの兼ね合いを考える必要はありませんが、利用回数には明確な制限があるのが特徴です。
ただし、この「週3回まで」という原則にはいくつかの例外が存在します。
利用者の病状が急に悪化した場合や、国が指定する特定の難病を抱えている場合などには、週4回以上の訪問が認められることがあります。
この例外規定については、後ほど詳しく解説します。
どっちが優先?迷ったら「要介護認定を受けていれば、まず介護保険」
「自分の家族はどちらの保険を使えばいいの?」と迷う方も多いでしょう。
訪問看護の保険適用には、明確な優先順位があります。
原則として、65歳以上で要支援・要介護認定を受けている方は、介護保険が優先して適用されます。
ただし、要介護認定を受けている方でも、特定の病気や状態(末期がんなど)に該当する場合は、医療保険が優先される特例もあります。
どちらが適用されるかによって利用のルールが大きく変わるため、担当のケアマネジャーや訪問看護ステーションに確認することが重要です。
| 項目 | 介護保険(優先) | 医療保険 |
|---|---|---|
| 対象者 | 要支援・要介護認定を受けた方 | 年齢制限なし(医師が必要と認めた方) |
| 回数制限 | ケアプランの限度額内(明確な上限なし) | 原則 週3回まで(例外あり) |
| 優先順位 | 原則として、要介護認定者は介護保険が優先 | 末期がんや特定の難病など、特例の場合は医療保険が優先 |
【重要】訪問看護を週4回以上・毎日利用できる3つの特例ケース
「原則は分かったけれど、週3回ではとても足りない」と感じている方もご安心ください。
医療保険には、利用者の状態に応じて、週4回以上の訪問や毎日の訪問さえも可能にする3つの特例的なケースが設けられています。
「毎日でも来てほしい」という切実な願いを叶えるための重要な制度です。
ご家族の状態がこれらの条件に当てはまるか、ぜひ確認してみてください。
特例1:急な体調悪化や退院直後に使える「特別訪問看護指示書」
「特別訪問看護指示書」は、利用者の病状が急激に悪化した場合や、病院から退院した直後などで、集中的なケアが必要だと主治医が判断した際に交付される特別な指示書です。
この指示書が交付されると、指示日から最長14日間、毎日訪問看護を利用できます。
必要に応じて、1日に2回や3回といった複数回の訪問も可能になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 交付条件の例 | – 急性感染症などによる急な症状の悪化 – 末期がん以外の終末期 – 退院直後で頻回な訪問が必要な場合 – 気管カニューレを使用している状態 – 真皮を超える重度の褥瘡(床ずれ)がある状態 |
| 有効期間 | 原則として指示日から14日間 |
| 利用頻度 | 期間中は毎日、1日複数回の訪問も可能 |
| 交付頻度 | 原則として月に1回まで(特定の重篤な状態では月に2回まで可) |
この制度は、在宅療養中の急な「もしも」の時に、家族を力強く支えてくれるセーフティーネットです 。
特例2:国が定める特定の難病や状態に該当する場合(別表7・8)
厚生労働省が定める特定の疾病(別表第7)や状態(別表第8)に該当する方は、医療保険の「週3回まで」という回数制限の対象外となります。
これにより、週4回以上の訪問看護を継続的に利用することが可能です。
ご家族が以下のような難病や状態と診断されている場合は、この特例に該当する可能性があります。
| 対象区分 | 具体的な疾病・状態の例 |
|---|---|
| 別表第7(疾病) | – 末期の悪性腫瘍(がん) – 筋萎縮性側索硬化症(ALS) – パーキンソン病関連疾患 – 多発性硬化症、重症筋無力症 – 人工呼吸器を使用している状態 など |
| 別表第8(状態) | – 在宅で悪性腫瘍の鎮痛療法などを受けている状態 – 気管カニューレや留置カテーテルを使用している状態 – 在宅酸素療法を行っている状態 – 真皮を超える褥瘡の状態 など |
これらの疾病や状態に該当する場合は、回数を気にすることなく、必要なケアを受けることができます 。
特例3:ターミナルケア(終末期)で手厚いケアが必要な場合
人生の最期を住み慣れた自宅で穏やかに過ごしたいと願う方のために、ターミナルケア(終末期ケア)では手厚い訪問看護が提供されます。
この段階では、医療保険・介護保険のどちらを利用しているかに関わらず、利用者の身体的・精神的な苦痛を和らげ、ご家族を支えるために、必要に応じて毎日の訪問など、頻回な訪問が認められています。
回数制限にとらわれず、ご本人とご家族が安心して最期の時を過ごせるよう、最大限のサポートが行われます。
うちの場合は?病状・状態で見る訪問看護の利用回数の目安
「他の人はどのくらいの頻度で利用しているの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
もちろん、最適な回数は一人ひとりの状態によって全く異なります。
しかし、一般的な目安を知ることで、ご自身の状況を客観的に捉える助けになります。
ここでは、いくつかのケース別に利用回数の目安をご紹介します。
| 利用者の状態・目的 | 利用回数の目安 | 主なケア内容 |
|---|---|---|
| 医療処置が頻繁 (点滴、褥瘡、カテーテル管理など) | 週2~3回以上 | 処置、バイタルチェック、症状観察、清潔ケア |
| リハビリが中心 (退院直後、機能維持など) | 週1~3回 | 身体機能訓練、日常生活動作訓練、福祉用具の選定 |
| 認知症・精神疾患 (見守り、服薬管理など) | 週1~2回 | 服薬管理、症状観察、コミュニケーション、家族支援 |
| 健康状態の維持 (病状安定期) | 月1回~週1回 | 健康相談、バイタルチェック、療養生活の指導 |
医療処置(点滴、褥瘡ケアなど)が頻繁に必要なケース
ご自宅で点滴管理やインスリン注射、褥瘡(床ずれ)の処置、カテーテルの管理など、専門的な医療処置が日常的に必要な場合は、訪問看護の利用頻度が高くなる傾向があります。
処置の内容や頻度にもよりますが、週に2~3回、あるいはそれ以上の訪問が計画されることが一般的です。
確実な医療処置は、在宅療養の安心の基盤となります。
リハビリテーションが中心のケース
脳梗塞の後遺症などで退院した直後や、身体機能の低下を防ぎたい場合など、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)による訪問リハビリテーションが中心となるケースもあります。
目標に応じて頻度は異なりますが、一般的には週に1~3回程度の訪問で、身体機能の回復や維持を目指したプログラムが組まれます。
日常生活を少しでも楽に送るための大切なサポートです。
認知症や精神疾患があり、見守りや服薬管理が必要なケース
認知症の症状緩和や、精神疾患をお持ちの方の心の安定、確実な服薬管理などを目的として訪問看護が利用されることもあります。
この場合、週に1~2回程度の定期的な訪問を通じて、ご本人の状態を観察し、ご家族からの相談に応じます。
専門家が定期的に関わることは、ご本人だけでなく、介護するご家族にとっても大きな安心に繋がります。
訪問看護の回数を増やしたい!誰に、どうやって相談すればいい?
「うちの家族も、もっと回数を増やせるかもしれない」と感じたら、次はいよいよ行動に移す時です。
しかし、誰に、どのように相談すれば良いのでしょうか。
訪問看護の回数を増やすためのプロセスは、決して難しくありません。
以下の3つのステップに沿って、まずは身近な専門家に相談することから始めましょう。
ステップ1:まずは担当ケアマネジャーか訪問看護師に現状を伝える
最初の相談相手として最も適しているのは、日頃から関わりのある担当のケアマネジャー、または訪問看護師です。
難しく考えず、ありのままの状況や気持ちを伝えることが大切です。
伝えるべき内容の例
- 本人の体調の変化: 「最近、痛みを訴えることが増えた」「夜、眠れない日が多くなった」など
- 介護する家族の状況: 「夜中の対応で眠れず、体力が限界に近い」「介護の負担が精神的につらい」など
- 具体的な希望: 「お風呂の介助を週2回に増やしてほしい」「もう少し頻繁に様子を見に来てくれると安心できる」など
まずはあなたの「困っていること」や「こうしてほしい」という思いを率直に話してみてください 。
ステップ2:主治医との連携と「訪問看護指示書」の見直し
相談を受けたケアマネジャーや訪問看護師は、その内容をもとに利用者の状態を改めて評価(アセスメント)します。
そして、回数を増やす必要があると判断した場合、主治医にその情報を共有し、連携を図ります。
訪問看護は医師の指示に基づいて行われるため、最終的に回数を増やすためには、主治医が医学的な必要性を認め、「訪問看護指示書」の内容を更新してもらう必要があります 。
ステップ3:ケアプランの変更とサービス利用の開始
主治医から回数を増やすことへの同意と新しい指示書が得られたら、ケアマネジャーがそれに基づいてケアプランを修正します。
新しいケアプランには、変更後の訪問看護の回数やサービス内容、それに伴う費用などが明記されます。
利用者と家族がその内容に同意し、署名をすることで正式にプランが変更となり、増やした回数でのサービス利用がスタートします。
回数を増やしたらいくらかかる?費用面の不安を解消します
訪問看護の回数を増やす上で、やはり気になるのは経済的な負担ではないでしょうか。
「たくさん来てもらいたいけれど、費用が高額になるのでは…」と心配になるのは当然のことです。
しかし、公的な保険制度には、自己負担が過大にならないようにするための仕組みが備わっています。
ここでは、具体的な料金の目安と、負担を軽減する制度について解説します。
【料金シミュレーション】医療保険と介護保険の自己負担額の目安
訪問看護の自己負担額は、利用する保険やサービス時間によって異なります。
以下に、自己負担1割の場合の料金の目安をまとめました。
ご自身のケースでどれくらいの費用になるか、イメージを掴むための参考にしてください。
▼介護保険の場合(1回あたりの自己負担額の目安)
| サービス提供時間 | 自己負担額(1割の場合) |
|---|---|
| 20分未満 | 約313円 |
| 20分以上30分未満 | 約472円 |
| 30分以上1時間未満 | 約821円 |
| 1時間以上1時間30分未満 | 約1,125円 |
▼医療保険の場合(1回あたりの自己負担額の目安)
| 訪問の種類 | 自己負担額(1割の場合) |
|---|---|
| 週3日目までの訪問 | 約555円~ |
| 週4日目以降の訪問 | 約655円~ |
| 24時間対応体制加算など、各種加算が別途かかる場合があります。 |
上記はあくまで基本的な料金であり、早朝・深夜の訪問や緊急時訪問などには追加料金(加算)がかかります 。
自己負担には上限あり!負担を抑える「高額療養費制度」
特に医療保険で「特別訪問看護指示書」などを利用し、訪問回数が大幅に増えた場合、自己負担額が高額になることがあります。
しかし、そのような場合でも、1ヶ月の医療費の自己負担額には所得に応じた上限額が定められています。
この「高額療養費制度」により、上限額を超えて支払った金額は、後から払い戻しを受けることができます。
つまり、医療費が青天井に増え続けるわけではないので、安心して必要な医療を受けることができます 。
まとめ:一人で抱え込まず、まずは専門家に相談することが第一歩
この記事では、訪問看護の利用回数がどのように決まるのか、そして「もっと来てほしい」という願いを叶えるための具体的な方法について解説してきました。
この記事のポイント
- 訪問看護の回数は「介護保険」か「医療保険」かによってルールが異なる
- 医療保険には「週3回まで」の原則があるが、「特別訪問看護指示書」などの特例を使えば週4回以上の訪問も可能になる
- 回数を増やしたい時は、まず担当のケアマネジャーや訪問看護師に現状を伝えることが重要
- 費用面では、自己負担を軽減するための公的制度がある
在宅での介護は、時に孤独で、先の見えない不安に襲われることもあるでしょう。
しかし、あなたは一人ではありません。
あなたの周りには、医師、ケアマネジャー、訪問看護師といった、在宅療養を支える専門家チームがいます。
もし今、ご家族のことで悩んでいたり、介護に限界を感じていたりするのなら、どうか一人で抱え込まず、その思いを専門家に打ち明けてみてください。
あなたの「もっと来てほしい」という一言が、より良い在宅療養への扉を開く第一歩になるはずです。
訪問看護の利用回数はどう決まるのですか?
訪問看護の利用回数は、主に介護保険と医療保険の制度によって異なります。介護保険ではケアプランの限度額内で無制限に利用できる一方、医療保険では基本的に週3回までと定められていますが、特例を利用すれば増やすことも可能です。
どうすれば訪問看護の回数を増やせますか?
訪問看護の回数を増やすには、まず担当のケアマネジャーや訪問看護師に現状を伝え、その後、主治医と連携して新たな訪問看護指示書を作成してもらいます。これによりケアプランの修正が行われ、サービスの利用回数が増えます。
訪問看護の回数を増やすにはどのような例外や特例がありますか?
いくつかの特例があり、1つは急な体調の悪化や退院直後に使える「特別訪問看護指示書」、2つ目は特定の難病や状態に該当する場合です。3つ目はターミナルケア(終末期)で必要に応じて頻繁な訪問も認められています。
訪問看護の回数を増やすことで費用はどのくらいかかりますか?
自己負担額は保険種類やサービス時間によって異なり、例えば介護保険では1回あたり約313円から821円、医療保険では約555円から655円の範囲です。ただし、高額療養費制度により、一定額以上の支払いは後から払い戻しを受けることが可能です。
訪問看護の回数を増やしたい場合、誰に相談すれば良いのですか?
まずは、日頃から関わりのあるケアマネジャーや訪問看護師に現状や希望を伝えることが重要です。その後、必要に応じて主治医と連携し、医師の許可を得た上でケアプランを変更します。