訪問看護ステーションでレセプト請求を担当されている方や、現場の管理者・看護師の皆様は、日々複雑な算定業務に取り組まれていることと思います。
特に、夜間や早朝といった時間外の訪問に関する加算は、介護保険と医療保険でルールが異なり、「このケース、算定して大丈夫?」「算定ミスで返戻になったらどうしよう…」といった不安を感じる場面も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなお悩みを解決するために、訪問看護の「夜間・早朝・深夜加算」について、算定要件から複雑なケースの計算方法まで、分かりやすく解説します。
この記事を最後まで読めば、算定の根拠を明確に理解でき、自信を持って請求業務を行えるようになります。
訪問看護の時間外加算とは?3つの時間帯と基本ルールをまずはおさらい
訪問看護における時間外加算は、通常のサービス提供時間帯(日中)以外に行われる訪問看護サービスを評価するための制度です。
24時間体制で利用者の在宅療養を支える訪問看護ステーションにとって、非常に重要な加算となります。
まずは、この加算制度の基本的な考え方とルールを確認していきましょう。
「早朝・夜間」「深夜」の具体的な時間帯と加算の名称
時間外加算は、サービスを提供する時間帯によって3つに区分されます。
時間帯の定義は介護保険と医療保険で共通していますが、加算の名称が少し異なりますので注意が必要です。
| 時間帯区分 | 具体的な時間 | 介護保険での加算名称 | 医療保険での加算名称 |
|---|---|---|---|
| 早朝 | 午前 6 時 ~ 午前 8 時 | 早朝・夜間加算 | 早朝・夜間訪問看護加算 |
| 夜間 | 午後 6 時 ~ 午後 10 時 | ||
| 深夜 | 午後 10 時 ~ 翌午前 6 時 | 深夜加算 | 深夜訪問看護加算 |
混同しやすい「緊急時訪問看護加算」との役割の違い
時間外加算を理解する上で、よく混同されがちなのが「緊急時訪問看護加算」です。
この2つの加算は、評価する目的が根本的に異なります。
算定ミスを防ぐためにも、初めにこの違いをしっかり区別しておきましょう。
| 加算の種類 | 評価の目的 | 訪問のタイミング |
|---|---|---|
| 時間外加算 (夜間・早朝・深夜加算) | 計画的な時間外訪問の実施そのもの | あらかじめ計画に位置付けられた訪問 |
| 緊急時訪問看護加算 | 24時間いつでも対応できる体制と、計画外の緊急訪問 | 利用者の状態変化などによる、計画外の緊急訪問 |
簡単に言うと、時間外加算は「決まっていた訪問が夜間だった」場合に、緊急時訪問看護加算は「予定外の呼び出しで緊急訪問した」場合に算定するイメージです。
【介護保険】夜間・早朝・深夜加算の算定要件と単位数
ここからは、介護保険における時間外加算のルールを詳しく見ていきましょう。
介護保険では、基本となるサービス費(所定単位数)に対して、一定の割合を上乗せする形で報酬が計算されます。
算定するための3つの要件
介護保険で時間外加算を算定するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 1. 計画への位置付け
- 訪問があらかじめ居宅サービス計画や訪問看護計画に位置付けられている必要があります。
- ステーションの都合で時間を変更した場合は算定できません。
- 2. 20分以上のサービス提供
- サービス提供時間が20分未満の短い訪問では、たとえ時間帯が該当していても加算は算定できません。
- 3. 時間帯の割合
- 全体のサービス提供時間のうち、加算対象となる時間帯がごくわずかな場合は算定できません。
加算率と単位数の計算方法【具体例つき】
介護保険の時間外加算は、所定単位数に以下の割合を乗じて計算します。
| 加算の種類 | 加算率 |
|---|---|
| 早朝・夜間加算 | 所定単位数の 25 % を加算 |
| 深夜加算 | 所定単位数の 50 % を加算 |
【計算例】
例えば、所定単位数 574 単位のサービスを午後 7 時に提供した場合の計算は以下のようになります。
| 項目 | 単位数 | 計算 |
|---|---|---|
| 基本サービス費 | 574 単位 | – |
| 早朝・夜間加算 | 144 単位 | 574 単位 × 0.25 = 143.5 → 144 単位(小数点以下切り上げ) |
| 合計 | 718 単位 | 574 + 144 |
このように、具体的な単位数を用いて計算することで、請求額を正確に把握することができます。
【医療保険】夜間・早朝・深夜加算の算定要件と料金
次に、医療保険における時間外加算のルールです。
医療保険では、介護保険のような割合計算ではなく、1回の訪問につき決められた金額が加算される「定額制」となっています。
算定するための要件
医療保険で時間外加算を算定するための主な要件は以下の通りです。
- 利用者または家族の求めに応じた訪問であること
- 介護保険と同様に、ステーションの都合で時間を変更した場合は算定できません。
- 計画的な訪問であること
- 基本的には、訪問看護指示書および訪問看護計画書に基づいた訪問が対象となります。
加算額と算定回数の注意点
医療保険の時間外加算額と、算定する上で特に注意すべき回数制限は以下の通りです。
| 加算の種類 | 1回あたりの加算額 | 算定回数の上限 |
|---|---|---|
| 早朝・夜間訪問看護加算 | 2,100 円 | 1日につき1回まで |
| 深夜訪問看護加算 | 4,200 円 | 1日につき1回まで |
ここで最も重要なのは「算定回数の上限」です。
例えば、同じ利用者に同日の午前 7 時(早朝)と午後 7 時(夜間)に訪問した場合でも、早朝・夜間訪問看護加算は2回分ではなく、1回分しか算定できません。
ただし、早朝・夜間帯と深夜帯に1回ずつ訪問した場合は、それぞれ算定が可能です。
【比較表】介護保険と医療保険の6つの違いと算定時の重要ポイント
これまで解説してきた内容を、一つの表にまとめて比較してみましょう。
この表で両者の違いを正確に把握することが、算定ミスを防ぐための鍵となります。
| 比較項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 1. 算定の根拠 | 居宅サービス計画・訪問看護計画 | 利用者・家族からの求め |
| 2. 報酬形式 | 割合 で加算(基本単位数の25% or 50%) | 定額 で加算(2,100円 or 4,200円) |
| 3. 報酬額(例) | サービス内容により変動 | 常に一定額 |
| 4. 算定回数制限 | 特になし(訪問ごと) | 早朝・夜間、深夜それぞれ1日1回まで |
| 5. 緊急時加算 との併算定 | 条件付き (月の初回計画外訪問は不可) | 常に可能 |
| 6. 留意点 | 20分未満の訪問は対象外 | 同日早朝・夜間の訪問は1回分 |
最重要!「緊急時訪問看護加算」との併算定ルールを徹底解説
比較表の中でも、特に複雑で間違いやすいのが「緊急時訪問看護加算」との併算定ルールです。
- 介護保険の場合
- 緊急時訪問看護加算を算定している利用者に対し、計画外の緊急訪問を行った場合、その月1回目の訪問では夜間・早朝・深夜加算は算定できません。
- しかし、同月2回目以降の緊急訪問や、もともと計画されていた時間外訪問については、算定可能です。
- 医療保険の場合
- 医療保険では、緊急訪問看護加算を算定していても、時間外加算を常に併せて算定できます。
この違いは、制度の趣旨の違いから生じています。
介護保険の緊急時加算は体制評価の側面が強いため、初回の緊急対応は包括的に評価されるという考え方です。
一方、医療保険は訪問実績に応じて支払われるため、それぞれの加算を別々に評価します。
「24時間対応体制加算」の届出は必要?
しばしば「夜間加算を算定するには、24時間対応体制加算の届出が必要ですか?」という質問があります。
結論から言うと、届出は不要です。
時間外加算は、あくまで「時間外に訪問を実施したこと」に対する評価です。
一方、24時間対応体制加算は「いつでも連絡・対応できる体制を整備していること」への評価であり、目的が異なります。
【具体例でわかる】訪問看護の時間外加算 Q&A
最後に、現場で判断に迷いやすい具体的なケースをQ&A形式で解説します。
ご自身のステーションの状況と照らし合わせながらご確認ください。
Q1. サービス提供が夜間と深夜をまたぐ場合の算定方法は?
A. 原則として、サービスを開始した時点の時間帯が適用されます。
例えば、午後 9 時 45 分から 30 分間の訪問(終了は午後 10 時 15 分)を行ったとします。
サービス提供時間には深夜帯(午後 10 時以降)が含まれますが、開始時刻が夜間帯(午後 6 時~午後 10 時)であるため、この場合は「夜間加算」を算定するのが基本です。
| 訪問時間 | 開始時刻 | 終了時刻 | 適用される加算 |
|---|---|---|---|
| 午後 9:45 ~ 午後 10:15 | 夜間帯 | 深夜帯 | 夜間加算 |
ただし、訪問時間が長時間にわたり、深夜帯のサービス提供割合が明らかに多い場合などは、保険者によって判断が異なる可能性もあります。
迷った際は、各保険者に確認することをおすすめします。
Q2. 【医療保険】同日に早朝と夜間の2回訪問した場合、加算はどうなる?
A. 早朝・夜間訪問看護加算を「1回分」のみ算定します。
これは医療保険の算定ルールで非常に間違いやすいポイントです。
午前 7 時に訪問し、同日の午後 7 時に再度訪問した場合、どちらも「早朝・夜間」の時間帯に含まれます。
しかし、算定は1日につき1回までのため、2回分の加算(2,100 円 × 2)はできず、1回分(2,100 円)のみの算定となります。
Q3. 【介護保険】緊急時訪問看護加算を算定中。夜間に緊急訪問したら加算できる?
A. 「その月の何回目の計画外訪問か」によって結論が変わります。
このケースは、状況を整理して判断する必要があります。
| ケース | 状況 | 夜間加算の算定 |
|---|---|---|
| 1 | その月の1回目の計画外緊急訪問だった | 算定できない |
| 2 | その月の2回目以降の計画外緊急訪問だった | 算定できる |
| 3 | もともと計画されていた訪問だった | 算定できる |
このように、介護保険では「計画外か、計画内か」「月何回目の訪問か」が併算定の可否を分ける重要なポイントになります。
まとめ:夜間加算の正確な理解で、算定ミスを防ぎステーション経営を安定させよう
今回は、訪問看護における夜間・早朝・深夜加算について、基本的なルールから保険ごとの違い、具体的なケーススタディまで詳しく解説しました。
- 時間外加算は「計画的な」時間外訪問を評価する制度
- 介護保険は「割合制」、医療保険は「定額制」
- 医療保険には「1日1回」の回数制限がある
- 最も複雑なのは「緊急時訪問看護加算」との併算定ルール
これらの加算を正確に理解し、適切に算定することは、利用者の24時間体制の療養生活を支えるだけでなく、訪問看護ステーションの安定した経営にも不可欠です。
日々の業務で算定に迷った際は、ぜひこの記事を読み返していただき、正確なレセプト請求にお役立てください。
訪問看護の時間外加算とは何ですか?その基本的なルールは何ですか?
訪問看護における時間外加算は、通常の時間帯以外に行われる訪問看護サービスに対して提供される加算制度であり、夜間・早朝・深夜の3つの時間帯に分かれ、それぞれの基本的なルールと要件を満たす必要があります。
介護保険と医療保険の時間外加算にはどのような違いがありますか?
介護保険では、時間外加算は割合で計算され、回数制限はありませんが、医療保険では定額制で、1日あたりの訪問回数に上限があり、それぞれの制度の性質の違いによって算定方法や制限が異なります。
緊急時訪問看護加算と時間外加算の主な違いは何ですか?
緊急時訪問看護加算は計画外の緊急対応に対して算定され、訪問そのものの緊急性を評価します。一方、時間外加算は事前に計画された時間外のサービスに対して算定され、訪問の計画性が評価のポイントです。
夜間・早朝・深夜加算を適用するための具体的な算定要件は何ですか?
これらの加算を算定するには、事前のサービス計画に位置付けられ、サービス提供時間が20分以上で、全体の提供時間の中で該当時間帯が一定の割合を占めている必要があります。
訪問看護の時間外加算の算定に関する具体的なケース例や注意点は何ですか?
例えば、サービス時間が夜間と深夜をまたぐ場合は、その開始時点の時間帯を基準とし、医療保険では同じ日に早朝と夜間に訪問しても1回のみの加算となります。また、緊急対応の状況や訪問時間の長さによる判断も重要です。