訪問看護ステーションの管理者や請求担当者の皆様、日々の業務お疲れ様です。
「同一建物減算のルールが複雑で、請求のたびに不安になる…」
「介護保険と医療保険で扱いが違うのがややこしい」
「もし請求ミスで返戻になったら…」
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
同一建物減算は、訪問看護の報酬請求において避けては通れない重要なルールです。
しかし、その要件は複雑で、正確な理解がなければ意図せず減収につながるリスクもあります。
ご安心ください。
この記事を最後まで読めば、複雑な同一建物減算のすべてがスッキリと理解できます。
介護保険と医療保険の違いから、夫婦利用のような具体的なケーススタディ、そして明日から実践できる経営対策まで、実務で本当に役立つ情報だけを凝縮しました。
この記事が、皆様の請求業務への自信と、ステーションの安定経営につながる一助となれば幸いです。
そもそも同一建物減算とは?制度の目的と基本をわかりやすく解説
同一建物減算とは、訪問看護ステーションが同じ建物や敷地内に住む複数の利用者様へサービスを提供する場合に、介護報酬や診療報酬が一定割合で減額される仕組みのことです。
「移動時間が短縮されて効率的なのに、なぜ報酬が減るの?」と疑問に思われるかもしれません。
この制度には、主に以下のような目的があります。
- サービス提供の効率化の反映
- 複数の利用者様をまとめて訪問できるため、看護師の移動時間や交通費が削減されます。
- この効率化によって生まれた利益を報酬に反映させることで、制度全体の公平性を保ちます。
- 利用者間の公平性の確保
- 離れた場所に住む一軒家の利用者様と、集合住宅の利用者様との間で、サービス提供にかかるコストが異なります。
- この差を報酬体系で調整し、公平なサービス利用を実現する狙いがあります。
- 介護・医療保険制度の持続可能性
- 効率的なサービス提供を評価することで、限りある介護・医療資源を有効活用します。
- これにより、制度全体の財政的な持続可能性を高めることにつながります。
この制度は、介護保険法や医療保険制度に基づく正式な算定ルールとして定められています。
つまり、訪問看護事業を運営する上で必ず遵守しなければならない重要な基準なのです。
【徹底比較】介護保険と医療保険でこんなに違う!減算ルールのすべて
同一建物減算を理解する上で最も重要なポイントは、介護保険と医療保険でルールが大きく異なることです。
両者を混同してしまうと、請求ミスの原因になりかねません。
まずは、下の表で全体像をしっかりと掴みましょう。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 減算の基準 | 建物の位置関係と1か月の利用者数 | 同一日の訪問人数 |
| 対象となる建物 | – 事業所と同一敷地内・隣接の建物 – 上記以外で月20人以上が利用する建物 | 利用者が居住する同一の建物 |
| 減算率 | – 10% 減算 – 15% 減算 (同一敷地内等で月50人以上) | – 2人目まで:減算なし – 3人目以降:50% 減算 |
| 計算単位 | 1か月単位で判定 | 1日 (暦日) 単位で判定 |
| 減算対象外の例外 | 敷地が広大、道路等で隔てられ効率化につながらない場合など | 原則としてなし |
このように、判断の基準となる「時間軸」と「場所の定義」が全く異なります。
介護保険は「月単位で、建物の状況と利用者数」を見るのに対し、医療保険は「日単位で、訪問した人数」だけを見る、と覚えるのがポイントです。
では、それぞれの詳細なルールを見ていきましょう。
介護保険の場合:「同一敷地内建物等」の定義と利用者数に応じた2段階の減算
介護保険の同一建物減산は、建物の定義が複雑です。
まず、減算の対象となる「同一敷地内建物等」とは、以下のいずれかに該当する建物を指します。
- 事業所と構造上または外形上、一体的な建築物
- 例:事業所が1階にあり、利用者様が2階以上に住んでいるマンション
- 事業所と同一の敷地内にある別の建物
- 例:同じ敷地内にあるA棟とB棟
- 事業所と隣接する敷地にある建物
- 例:幅員の狭い道路を挟んで向かい側にある建物
ただし、敷地が広大で建物が点在していたり、幹線道路や河川で隔てられていたりして、移動の効率化につながらないと判断される場合は、減算の対象外となります。
その上で、減算率と適用条件は利用者数に応じて次の2段階に分かれます。
| 減算率 | 適用条件 |
|---|---|
| 10%減算 | 1. 事業所と「同一敷地内建物等」以外の建物で、1か月の平均利用者数が20人以上の場合 2. 事業所と「同一敷地内建物等」に居住する利用者(15%減算に該当しない場合) |
| 15%減算 | 事業所と「同一敷地内建物等」に居住する1か月の平均利用者数が50人以上の場合 |
ここでいう「1か月の平均利用者数」は、その月の利用者数の日ごとの合計を、その月の日数で割って算出します(小数点以下切り捨て)。
医療保険の場合:同一日の訪問人数に応じたシンプルな減算
医療保険における同一建物減算は、介護保険に比べて非常にシンプルです。
判断基準はただ一つ、「同じ日に、同じ建物の何人の利用者様を訪問したか」だけです。
この場合、「訪問看護基本療養費(Ⅱ)」を算定することになります。
| 同一日の訪問人数 | 減算率 | 算定する療養費 |
|---|---|---|
| 1人目 | 減算なし | 訪問看護基本療養費(Ⅰ) |
| 2人目 | 減算なし | 訪問看護基本療養費(Ⅱ) |
| 3人目以降 | 50%減算 | 訪問看護基本療養費(Ⅱ) |
ポイントは、1人目の利用者様のみ通常の「訪問看護基本療養費(Ⅰ)」となり、同日に同じ建物を訪問した2人目以降は全員「訪問看護基本療養費(Ⅱ)」で算定する点です。
そして、そのうち3人目以降の方から報酬が50%減算されます。
計算は1日(暦日)単位で行われるため、前日や翌日の訪問人数は一切関係ありません。
「うちのケースは?」実務で迷う具体例をQ&Aでスッキリ解決
制度のルールを理解しても、実際の現場では判断に迷うケースが出てきます。
ここでは、よくある質問をQ&A形式で解説します。
Q1. 同じマンションに住むご夫婦に訪問する場合、減算はどうなりますか?
A1. ご夫婦が利用している保険の種類と、訪問する日によって扱いが変わります。
| ケース | 状況 | 介護保険の減算 | 医療保険の減算 |
|---|---|---|---|
| 1 | 夫婦ともに介護保険を利用 | その建物全体の利用者数に応じて10%または15%減算 | 適用なし |
| 2 | 夫婦ともに医療保険を利用し、同日に訪問 | 2人とも減算なし (訪問看護療養費(Ⅱ)を算定) | 2人目まで減算なし |
| 3 | 夫婦ともに医療保険を利用し、別日に訪問 | 適用なし | それぞれ1人目の訪問となり減算なし |
| 4 | 夫が介護保険、妻が医療保険を利用 | 夫の分は建物全体の利用者数に応じて減算 | 妻の分は減算なし (同日に他の医療保険利用者がいなければ) |
このように、保険制度ごとに減算の有無を個別に判断する必要があります。
Q2. 介護保険の利用者数を数えるとき、要支援の利用者や第1号訪問事業の利用者も含まれますか?
A2. はい、含まれます。
減算要件の利用者数を計算する際には、要介護者だけでなく、要支援者や総合事業である第1号訪問事業の利用者も含めてカウントする必要があります。
事業所のサービス提供実績をすべて合算して判断するようにしてください。
Q3. 「隣接する敷地」とは、具体的にどこまでを指しますか?
A3. 明確な距離の定義はありませんが、一般的には「幅員の狭い道路を挟んで向かい側にある」場合などが該当します。
重要なのは、「サービス提供の効率化が図られるか」という観点です。
例えば、片側2車線以上の幹線道路や大きな川を挟んでいて、渡るために大きく迂回する必要がある場合は、隣接しているとは見なされず、減算の対象外となる可能性が高いです。
減収リスクを回避し安定経営へ!明日から使える5つの実践的対策
同一建物減算は、正しく理解すれば経営上のリスクを管理できます。
ここでは、減算の影響を最小限に抑え、安定したステーション運営を実現するための具体的な対策を5つご紹介します。
| 対策 | 具体的なアクション | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 1. 効率的な訪問スケジュールの作成 | – ルート最適化ツール等を活用し、移動時間を最小化する。 – 同一建物内の訪問は特定の時間帯に集中させる。 | – 看護師の生産性向上 – 交通費などのコスト削減 |
| 2. 利用者ポートフォリオの最適化 | – 特定の集合住宅への依存度を分析し、目標比率を設定する。 – 個別訪問となる戸建て住宅エリアへの営業を強化する。 | – 減算による収益影響の平準化 – 経営リスクの分散 |
| 3. 減算自動計算機能付きソフトの活用 | – 介護・医療保険の減算を自動で判定・計算する請求ソフトを導入する。 – 訪問実績データを分析し、経営判断に役立てる。 | – 請求ミスの防止と返戻リスクの低減 – 請求業務の圧倒的な効率化 |
| 4. 利用者・家族への丁寧な説明 | – 減算制度の目的や料金体系を図解した説明資料を作成する。 – 報酬改定など制度変更時は速やかに情報提供を行う。 | – 利用者との信頼関係構築 – 料金に関するトラブルの未然防止 |
| 5. 記録の徹底と監査対策 | – 訪問先の建物名、部屋番号、訪問順序を正確に記録する。 – 定期的な内部監査で、記録と請求内容の整合性を確認する。 | – 行政指導や監査時の的確な対応 – コンプライアンス遵守体制の強化 |
これらの対策を複合的に実践することで、減算を適切に管理し、健全な事業所経営へとつなげることが可能です。
【2024年度改定】訪問看護に直接変更はないが、関連サービスの動向に要注意
まず結論として、2024年度の介護報酬改定において、訪問看護の同一建物減算の単位数や算定要件に直接的な変更はありませんでした。
しかし、訪問看護と密接に関連する他のサービスでは、集合住宅へのサービス提供のあり方を見直す重要な変更が行われています。
| 対象サービス | 2024年度改定での主な変更点 |
|---|---|
| 訪問介護 | – 同一建物へのサービス提供割合が著しく高い事業所に対し、新たに12%減算が創設された。 |
| 居宅介護支援 | – 同一建物に住む利用者を多数担当する場合の減算区分が、より厳格化された。 |
これらの変更は、特定の集合住宅にサービス提供が集中しすぎることを抑制する国の意向を示しています。
訪問看護には直接影響がないものの、ケアマネジャーのケアプラン作成方針が変わり、結果として訪問看護の依頼内容に変化が生じる可能性があります。
また、将来的には訪問看護にも同様の「集中抑制型」の減算が導入される可能性も否定できません。
関連サービスの動向を常に注視し、変化に対応できる準備をしておくことが重要です。
まとめ:複雑な制度を味方につけ、自信の持てるステーション運営を
今回は、訪問看護における同一建物減算について、制度の基本から保険ごとの違い、実務的な対策までを網羅的に解説しました。
- 同一建物減算は、サービスの効率化と公平性を図るための重要なルールです。
- 介護保険は「月単位・建物と利用者数」、医療保険は「日単位・訪問人数」で判断します。
- 夫婦利用などのケースでは、利用している保険ごとに分けて考える必要があります。
- 請求ソフトの活用や記録の徹底で、請求ミスや監査のリスクは大幅に減らせます。
- 訪問スケジュールや営業戦略を工夫すれば、減算の影響を管理し安定経営が可能です。
複雑に見える制度も、一つひとつのルールを正しく理解し、適切な対策を講じれば、決して怖いものではありません。
むしろ、効率的なステーション運営の指標として活用することも可能です。
この記事で得た知識が、皆様の日々の業務における不安を解消し、自信を持って利用者様と向き合うための一助となることを心から願っています。
同一建物減算とは何ですか?制度の目的と基本を教えてください。
同一建物減算は、訪問看護サービスを同じ建物や敷地内の複数の利用者に提供する場合に、報酬を一定割合で減額する制度です。これはサービス提供の効率化と公平性の維持、制度の持続可能性を目的としています。
介護保険と医療保険での同一建物減算規則の違いは何ですか?
介護保険では、月単位で建物の位置や利用者数に基づき減算されますが、医療保険では、同じ日に訪問した人数に応じて50%減算される点と、判断の時間軸・場所の定義が異なります。
夫婦で異なる保険を利用している場合、どのように減算を扱うのですか?
夫婦が異なる保険を利用している場合、それぞれの制度ごとに減算対象や判断基準を個別に適用し、介護保険と医療保険の規則を区別して対応します。
減算を避けるためにどのような経営対策が有効ですか?
効率的な訪問スケジュールの作成、利用者ポートフォリオの最適化、減算自動計算ソフトの導入、利用者・家族への丁寧な説明、記録の徹底と監査対策を実施し、リスクを管理することが推奨されます。
2024年度の制度改定により、訪問看護にどのような変更がありましたか?
2024年度の改定では、訪問看護の同一建物減算には直接的な変更はありませんでしたが、関連サービスの動向に変化があり、集合住宅へのサービス提供に関する規制が強化されています。