ご家族の在宅療養において、「1日1回の訪問看護では少し心細い」「でも、回数を増やすと費用はどれくらいかかるのだろう」といった不安を感じていませんか。
特に、退院直後やご家族の症状が不安定な時期は、より手厚いケアを望むのは自然なことです。
この記事では、医療保険を使って訪問看護を1日に2回以上利用するための具体的な情報を、専門外の方にも分かりやすく解説します。
複雑に思える制度や料金の仕組みを正しく理解することで、経済的な不安を解消し、ご家族にとって最適なケアプランを選択できるようになります。
まず知っておきたい基本:医療保険の訪問看護は原則「1日1回・週3回まで」
医療保険を使った訪問看護サービスには、基本的なルールが定められています。
原則として、1人の利用者様に対して「1日に1回まで」、そして「1週間に3回まで」と訪問回数の上限が決められています。
これは、必要最小限の訪問で、適切な医療ケアを提供することを前提とした制度設計のためです。
しかし、ご家族の病状によっては、この回数では十分なケアが難しい場合もあります。
そのため、特定の条件を満たす場合には、この原則の例外として1日に複数回の訪問が認められています。
医療保険で1日2回以上の訪問が可能になる2つのケース
医療保険で1日に2回、あるいは3回といった頻回な訪問看護が認められるのは、主に以下の2つのケースです。
どちらも、医師が「集中的な医療的管理が必要な状態である」と判断することが前提となります。
ご自身の状況がどちらかに当てはまるか、確認してみましょう。
| ケース | 対象となる状況 | 訪問期間の目安 |
|---|---|---|
| ケース1 | 特別訪問看護指示書が発行された場合 | 一時的(最長14日間) |
| ケース2 | 厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合 | 長期的・継続的 |
ケース1:医師が一時的に頻回な訪問が必要と判断した「特別訪問看護指示書」がある場合
「特別訪問看護指示書」とは、主治医が「一時的に、毎日または頻回の訪問看護が必要だ」と判断した際に発行される特別な指示書のことです。
いわば、短期間の集中ケアを許可するための証明書のようなものです。
この指示書が発行されると、発行日から最長14日間、週4日以上の訪問や1日複数回の訪問が可能になります。
| 特別訪問看護指示書が発行される主な状態例 |
|---|
| – 急性感染症などで、急に症状が悪化したとき |
| – 末期がん以外の終末期で、痛みの緩和などが必要なとき |
| – 退院直後で、ご自宅での療養生活に慣れるまで集中的な支援が必要なとき |
| – 気管カニューレ(のどに設置する呼吸用の管)を使用している状態 |
| – 真皮を超える深い褥瘡(床ずれ)がある状態 |
これらの状態は、医療的な管理が特に重要となるため、看護師による頻回な訪問が必要と判断されます。
ケース2:国が定める特定の病気や状態(厚生労働大臣が定める疾病等)に該当する場合
病気の種類や体の状態によっては、長期間にわたって手厚い看護が必要となる場合があります。
国が定めた特定の疾病(別表第七)や状態(別表第八)に該当する方は、特別訪問看護指示書がなくても、医療保険で1日複数回、週7日の訪問が認められています。
これらは、継続的な医療的管理やケアがなければ、在宅での療養生活が困難になる可能性が高いと判断されているケースです。
| 対象となる疾病・状態の例 | 該当する表 |
|---|---|
| – 末期の悪性腫瘍(がん) | 別表第七 |
| – 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 別表第七 |
| – パーキンソン病関連疾患(特定の重症度以上) | 別表第七 |
| – 人工呼吸器を使用している状態 | 別表第七 |
| – 在宅で中心静脈栄養(IVH)を行っている状態 | 別表第八 |
| – 気管カニューレを使用している状態 | 別表第八 |
ご家族がこれらの疾病に該当するかどうかは、主治医にご確認ください。
【料金シミュレーション】1日2回訪問の費用は?「難病等複数回訪問加算」と減算ルール
1日に複数回の訪問看護を利用する際、最も気になるのが費用面ではないでしょうか。
ここからは、料金の具体的な仕組みと、自己負担額の目安について詳しく解説します。
料金の仕組みを理解することで、安心してサービスを利用するための見通しを立てることができます。
1日の訪問回数で料金が決まる「難病等複数回訪問加算」の仕組み
医療保険で1日に2回以上の訪問看護を行った場合、通常の基本療養費に加えて「難病等複数回訪問加算」という料金が上乗せされます。
これは、頻回な訪問に対応する訪問看護ステーションの体制を評価するための加算です。
この加算額は、1日の訪問回数に応じて設定されています。
- 1日に2回訪問した場合
- 1日に3回以上訪問した場合
このように、訪問回数が増えるほど加算額も大きくなる仕組みです。
「減算」の正体はこれ!同一建物に住む人数で加算額が変わる仕組み
「減算」という言葉を聞いて、料金が高くなるのではと心配される方もいるかもしれません。
しかし、ここでの「減算」は、むしろ料金が少し安くなる仕組みのことです。
同じ集合住宅や施設に住んでいる他の利用者様も同じ訪問看護ステーションからサービスを受けている場合、訪問の効率が良くなるため、加算額が少し引き下げられます(減算調整)。
| 難病等複数回訪問加算(1日あたり) | 同一建物にサービス利用者が2人以下の場合 | 同一建物にサービス利用者が3人以上の場合(減算適用) |
|---|---|---|
| 1日に2回訪問した場合 | 4,500円 | 4,000円 |
| 1日に3回訪問した場合 | 8,000円 | 7,200円 |
この表の金額は、医療費の総額(10割)です。
実際に支払う自己負担額は、この金額に自身の負担割合(1割~3割)を掛けたものになります。
自己負担額はいくら?1割負担・1日2回訪問した場合の料金例
では、実際に支払う金額はどのくらいになるのでしょうか。
ここでは、1日に2回訪問し、同一建物に利用者が2人以下の場合を例に、自己負担額をシミュレーションしてみましょう。
(※基本療養費やその他の加算は含まず、難病等複数回訪問加算のみで計算しています)
| 自己負担割合 | 1日あたりの自己負担額(目安) | 14日間利用した場合の自己負担額(目安) |
|---|---|---|
| 1割負担 の方 | 450円 | 6,300円 |
| 2割負担 の方 | 900円 | 12,600円 |
| 3割負担 の方 | 1,350円 | 18,900円 |
また、医療費の自己負担額が高額になった場合は、「高額療養費制度」を利用して負担を軽減できる可能性があります。
詳しくは、ご加入の健康保険組合や市町村の担当窓口にご確認ください。
医療保険と介護保険、どっちを使う?知っておくべき保険のルール
訪問看護を利用する際、医療保険と介護保険のどちらを使うのかは、多くの方が迷うポイントです。
基本的には、利用者様の状態や年齢によって、どちらの保険が優先されるかというルールが決まっています。
このルールを知っておくことで、スムーズにサービス利用計画を立てることができます。
原則は介護保険が優先。ただし特定の病状では医療保険に
訪問看護の保険適用には、「介護保険優先の原則」があります。
65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方は、原則として介護保険で訪問看護サービスを利用します。
しかし、以下のような医療ニーズが高い場合は、介護認定を受けていても医療保険が優先されます。
- 「特別訪問看護指示書」が発行された期間中
- 「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する方
つまり、この記事で解説してきた「1日複数回の訪問」が認められるケースでは、介護保険ではなく医療保険が適用されることになります。
要注意!介護保険の「2時間ルール」、医療保険にはありません
介護保険の訪問看護には、通称「2時間ルール」と呼ばれる決まりがあります。
これは、1日に複数回訪問する場合、訪問と訪問の間隔を概ね2時間以上空けなければならないというルールです。
短時間の訪問を不必要に分割して、不当に高い報酬を請求することを防ぐ目的で定められています。
一方で、医療保険の訪問看護には、この「2時間ルール」は存在しません。
医療保険では、病状の急変など医療的な必要性に応じて、短い間隔での訪問が可能です。
この違いは、緊急性の高いケアを提供する上で非常に重要です。
| ルールの比較 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 1日の訪問回数 | 原則1日1回(例外あり) | ケアプランによる(上限なし) |
| 訪問間隔のルール | なし | あり(概ね2時間以上空ける) |
| 優先適用される場面 | 急性期、終末期、特定の疾病 | 慢性期、日常生活の支援 |
1日2回の訪問看護をスムーズに依頼するための手順と注意点
制度や料金について理解が深まったところで、次に具体的な行動に移すための手順と注意点を確認しましょう。
専門家としっかり連携することが、ご家族にとって最適なケアを実現する鍵となります。
訪問回数は誰が決める?まずは主治医やケアマネジャーに相談を
訪問看護の回数を増やしたいと考えたとき、最初の相談相手は主治医またはケアマネジャーです。
1日に複数回の訪問が必要かどうかは、最終的に主治医が医学的な観点から判断します。
家族として「どのような場面で不安を感じるか」「どのようなケアを増やしてほしいか」を具体的に伝えることが大切です。
| 相談から利用開始までの流れ |
|---|
| 1. 主治医・ケアマネジャーへの相談:家族の希望や利用者の状態を伝える。 |
| 2. 医師による判断:医学的な必要性を判断し、指示書を作成する。 |
| 3. ケアプランの調整:ケアマネジャーが訪問回数を盛り込んだケアプランを作成・調整する。 |
| 4. 訪問看護ステーションとの連携:ステーションが指示書とケアプランに基づき、具体的な訪問計画を立てる。 |
| 5. サービス利用開始 |
保険適用外(自費)の選択肢と、複数事業所利用の制限について
もし保険適用の条件に合わない場合でも、全額自己負担の「自費サービス」として訪問回数を増やす選択肢もあります。
費用はかかりますが、保険制度の枠にとらわれず、柔軟なサービスを受けることが可能です。
希望する場合は、利用中の訪問看護ステーションに相談してみましょう。
また、一つ注意点があります。
医療保険の場合、原則として1日に複数の訪問看護ステーションを利用することはできません。
たとえ異なるステーションであっても、同日に訪問した場合、保険請求できるのは1カ所の事業所のみとなりますのでご注意ください。
まとめ:制度を正しく理解し、家族にとって最適な在宅療養を実現しましょう
今回は、医療保険で訪問看護を1日に2回以上利用するための条件や料金について解説しました。
- 医療保険の訪問看護は原則1日1回だが、医師が必要と認める特定のケースでは複数回訪問が可能。
- 「特別訪問看護指示書」や「厚生労働大臣が定める疾病等」への該当が条件となる。
- 費用は「難病等複数回訪問加算」が追加されるが、自己負担は1割~3割。
- 医療保険には介護保険のような「2時間ルール」はなく、柔軟な対応が可能。
- 回数を増やすには、まず主治医やケアマネジャーへの相談が不可欠。
複雑な制度ですが、要点を正しく理解すれば、過度に費用を心配する必要はありません。
大切なご家族が住み慣れた家で安心して過ごせるよう、利用できる制度を有効に活用し、専門家と連携しながら最適な療養環境を整えていきましょう。
医療保険を使った訪問看護の原則と例外は何ですか?
医療保険を利用した訪問看護は、原則として1日に1回、週に3回までの訪問となっています。しかし、医師が必要と認める特定のケースでは、1日に複数回の訪問が可能となる例外があります。
医療保険で1日複数回訪問を可能にする条件は何ですか?
医療保険で1日に2回以上の訪問看護が認められるのは、特別訪問看護指示書が発行された場合(最長14日間)や、厚生労働大臣が定める特定の疾病や状態に該当する場合です。
突然の状態悪化や長期的疾患に対応した複数回訪問の料金や仕組みはどうなっていますか?
複数回の訪問には「難病等複数回訪問加算」が適用され、回数に応じて加算額が増えます。訪問の多さによって加算額も異なり、実際の自己負担は患者さんの負担割合により異なります。
医療保険と介護保険の訪問看護の違いと適用のルールは何ですか?
医療保険は原則1日1回の訪問ですが、介護保険には2時間ルールがあり、訪問間隔を空ける必要があります。疾患や状況に応じてどちらの保険を使うかのルールがあります。
訪問看護の回数を増やすための手続きや注意点は何ですか?
訪問回数を増やすには、まず主治医やケアマネジャーに相談し、医師の判断に基づく指示書の作成とケアプランの調整を行います。複数の事業所の利用は、原則として同日に複数の事業所からのサービスはできません。