ご家族の容態が急に悪化し、在宅での療養に不安を感じていらっしゃるのですね。
「もっと頻繁に看護師さんに来てほしいけれど、制度的に可能なのだろうか」
「1日に4回も訪問看護をお願いしたら、費用は一体いくらになるのだろう」
切迫した状況の中で、このような疑問や不安を抱えるのは当然のことです。
この記事では、医療保険を使った訪問看護を1日に4回利用するための具体的な情報を専門家の視点から解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、以下の点が明確になります。
- 1日4回の訪問が可能になるための「3つの特例条件」
- 実際にかかる費用の詳細と、自己負担を抑えるための公的制度
- いざという時に、誰に、何を相談すればよいか
正しい知識は、あなたと大切なご家族の在宅療養を支える大きな力となります。
どうぞ、ご安心ください。
一つひとつ丁寧に解説していきますので、一緒に見ていきましょう。
【結論】医療保険で1日4回の訪問看護は「特定の条件」を満たせば可能です
はじめに最も重要な結論からお伝えします。
医療保険を使って1日に4回の訪問看護を利用することは、制度上「可能」です。
ただし、これは誰でも無条件に利用できるわけではありません。
医療保険における訪問看護は、原則として「1人の利用者さんにつき1日1回、週3回まで」が基本ルールです。
1日4回という高頻度の訪問は、この原則を超える例外的な対応となります。
具体的には、利用者の生命に危険が及ぶ可能性がある場合や、病状が急激に悪化した場合など、医学的に極めて高い必要性が認められた場合に限られます。
次の章では、そのための具体的な条件を詳しく見ていきましょう。
1日4回の訪問看護を利用できる3つの特例条件とは?
専門的な内容も含まれますが、ご家族がどの条件に当てはまる可能性があるか、一緒に確認していきましょう。
1日4回のような高頻度の訪問を医療保険で可能にする特例条件は、主に以下の3つに集約されます。
これらの条件は、単独または複数で関連し合うことがあります。
それぞれの条件について、もう少し詳しく解説します。
| 条件の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 特別訪問看護指示書 | 主治医が「一時的に頻回な訪問が必要」と判断した場合に交付される特別な指示書。 |
| 国が定める特定の疾病等(別表第七) | 末期の悪性腫瘍や難病など、国が指定した特定の疾病に該当する場合。 |
| 特定の医療的管理(別表第八) | 在宅酸素療法など特定の医療的管理が必要な状態で、別表第七と併せて該当する場合。 |
条件①:急な容態悪化や退院直後に交付される「特別訪問看護指示書」
「特別訪問看護指示書」は、主治医が「一時的に頻回な訪問看護が必要だ」と判断した際に交付される、いわば特別な許可証のようなものです。
この指示書が交付されると、最長14日間にわたって、週4日以上かつ1日複数回の訪問が医療保険で認められます。
具体的には、以下のような状況が対象となります。
| 対象となる状況の例 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 病状の急性増悪期 | 感染症による急な高熱、呼吸状態の悪化、痛みの急激な増強など。 |
| 終末期(ターミナルケア) | 容態が不安定になり、頻繁なケアや観察が必要になった時期。 |
| 退院直後 | 病院から退院したばかりで、在宅療養への移行を密に支援する必要がある時期。 |
また、気管カニューレを使用している方や、皮膚の深いところまで達する重度の床ずれ(褥瘡)がある方は、月に2回までこの指示書の交付が可能です。
条件②:国が定める特定の疾病(別表第七)に該当する
厚生労働大臣が定める特定の疾病や状態に該当する場合も、高頻度の訪問看護が認められます。
これは「別表第七」と呼ばれ、以下のような疾病が含まれます。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- パーキンソン病関連疾患
- 人工呼吸器を使用している状態 など
これらの疾病は、常に専門的な医療的管理が必要で、病状が急変しやすいため、通常の週3回という制限を超えた手厚いケアが制度上認められています。
条件③:特定の医療的管理が必要な状態(別表第八)も関連
「別表第八」は、病名ではなく、以下のような特定の医療的な「状態」にある方が対象です。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理
- 在宅酸素療法指導管理
- 気管カニューレの使用
- 留置カテーテルの使用
- 真皮を超える褥瘡の状態 など
この「別表第八」だけでは介護保険が優先されることが多いです。
しかし、先ほどご説明した「別表第七」の疾病と、「別表第八」の状態の両方に該当する場合、医療保険が適用され、高頻度の訪問看護が可能となります。
| 条件の組み合わせ | 適用される保険 | 頻回訪問の可否 |
|---|---|---|
| 別表第七のみ | 医療保険 | 可能 |
| 別表第八のみ | 介護保険(原則) | ケアプランによる |
| 別表第七 + 別表第八 | 医療保険 | 可能(より手厚いケアが可能) |
最も気になる「料金」の話|1日4回訪問の費用と自己負担の仕組み
制度の次に、最もご心配なのが費用面かと思います。
ここでは、1日4回訪問した場合の料金の仕組みと、自己負担を軽減するための制度について解説します。
お金の不安を少しでも解消できるよう、順を追って見ていきましょう。
1日3回目までの料金計算:「難病等複数回訪問加算」を理解しよう
医療保険で1日に2回以上の訪問を行う場合、通常の基本療養費に加えて「難病等複数回訪問加算」という料金が上乗せされます。
これは、頻回なケアの手間を評価するための加算です。
2024年度の診療報酬に基づくと、料金は以下のようになります(あくまで医療費の総額であり、実際の自己負担額はこの1〜3割です)。
| 訪問回数 | 加算額(1日あたり) | 自己負担額の目安(1割負担の場合) |
|---|---|---|
| 1日2回 | 4,500 円 | 450 円 |
| 1日3回 | 8,000 円 | 800 円 |
この加算は、前述した「特別訪問看護指示書」が交付された方や、「別表第七」「別表第八」に該当する方が対象となります。
【最重要】4回目以降の訪問費用はどうなる?原則自費の可能性も
ここが最も重要なポイントです。
実は、「難病等複数回訪問加算」は、原則として1日3回までの訪問しか算定できません。
つまり、制度上、1日に4回目の訪問看護を依頼した場合、その4回目にかかる費用は保険が適用されない「全額自己負担(自費)」となる可能性が非常に高いのです。
自費サービスの料金は、訪問看護ステーションが独自に設定しているため、一律ではありません。
1回あたり数千円から1万円以上になることもあります。
したがって、1日4回以上の訪問を希望する場合は、必ず事前にケアマネージャーや訪問看護ステーションに以下の点を確認することが不可欠です。
- 4回目の訪問は可能か
- 4回目の訪問が自費になるのか
- 自費の場合、料金は1回いくらになるのか
自己負担を抑える「高額療養費制度」を忘れずに
頻回な訪問で医療費が高額になったとしても、自己負担額が青天井に増え続けるわけではありません。
そのために「高額療養費制度」という公的な制度があります。
これは、1ヶ月にかかった医療費の自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が後から払い戻される仕組みです。
| 年齢・所得区分(70歳未満の例) | 自己負担の上限額(月額) |
|---|---|
| 年収 約1,160万円〜 | 252,600円 + (医療費 – 842,000円) × 1% |
| 年収 約770万〜約1,160万円 | 167,400円 + (医療費 – 558,000円) × 1% |
| 年収 約370万〜約770万円 | 80,100円 + (医療費 – 267,000円) × 1% |
| 〜年収 約370万円 | 57,600円 |
| 住民税非課税者 | 35,400円 |
この制度があることで、経済的な負担を一定の範囲に抑えることができます。
申請方法など、詳しくはご加入の健康保険組合や市町村の担当窓口にご確認ください。
【具体例】1日4回の訪問看護スケジュール(終末期がん患者のケース)
では実際に、1日4回の訪問看護がどのように行われるのか、具体的なイメージを持ってみましょう。
ここでは、ご自宅での緩和ケアを希望されている終末期のがん患者さんの例をご紹介します。
| 時間帯 | 訪問の目的と主なケア内容 |
|---|---|
| 午前 (9:00 – 10:00) | 状態の安定化 – 呼吸状態の観察、痰の吸引 – 体位変換、痛みの評価と薬剤調整の補助 – 点滴の管理 |
| 昼 (13:00 – 14:00) | 苦痛緩和と栄養 – 痛みの再評価、安楽な姿勢の調整 – 口腔ケア、食事介助 – ご家族からの状況聴取と精神的サポート |
| 午後 (17:00 – 18:00) | 清潔保持と排泄ケア – 全身状態の観察、体位変換 – 体を拭く、部分的な入浴の介助 – おむつ交換、排泄の介助 |
| 夜間 (21:00 – 22:00) | 夜間の安眠確保 – 痛みの評価、呼吸困難感の評価 – 体位変換、睡眠導入の補助 – ご家族への声かけ、夜間の注意点伝達 |
このように、各時間帯で目的を明確にし、専門的なケアを組み合わせて行うことで、利用者の身体的な苦痛を和らげ、ご家族の介護負担を軽減し、穏やかな在宅での療養生活を支えます。
制度利用で迷わないためのQ&A
ここでは、よくあるご質問についてお答えします。
特に介護保険との違いは混同しやすいため、ぜひご確認ください。
介護保険の「2時間ルール」は医療保険にもある?
介護保険で訪問看護を1日に複数回利用する場合、原則として「訪問と訪問の間隔を概ね2時間以上空けなければならない」という「2時間ルール」が存在します。
しかし、今回解説している医療保険での高頻度訪問には、この「2時間ルール」は原則として適用されません。
これは、医療保険が適用されるケースは、より緊急性が高く、医学的な必要性に基づいて柔軟な対応が求められるためです。
利用者の容態に合わせて、必要なタイミングで訪問計画を立てることが可能です。
| 保険の種類 | 2時間ルールの適用 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 原則、あり | 短時間訪問の乱用を防ぎ、計画的なサービス提供を促すため。 |
| 医療保険 | 原則、なし | 急性期や重篤な病状への、緊急かつ柔軟な対応を優先するため。 |
まとめ:正しい知識で、あなたと大切な家族の在宅療養を支える
最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。
- 1日4回の訪問は可能: 医療保険では、特別な条件下で1日4回の訪問看護が認められます。
- 3つの特例条件: 主な条件は「特別訪問看護指示書」「別表第七(特定の疾病)」「別表第八(特定の状態)」です。
- 4回目の費用に注意: 1日4回目の訪問は、保険適用外の「自費」になる可能性が高いです。必ず事前に確認しましょう。
- 公的制度を活用: 自己負担額が高額になっても「高額療養費制度」で負担を抑えられます。
- まずは相談を: 不安や疑問があれば、一人で抱え込まずに主治医やケアマネージャー、訪問看護ステーションにすぐに相談してください。
ご家族の容態が不安定な時、精神的にも肉体的にもご負担が大きいこととお察しします。
しかし、今回ご紹介したように、日本の医療保険制度は、いざという時に手厚いケアを受けられるようになっています。
制度を正しく理解し、専門家と連携することで、あなたと大切なご家族が安心して在宅での時間を過ごすための一助となれば幸いです。
サービスサイトを詳しく見る医療保険を使って1日に4回の訪問看護を利用することは可能ですか?
はい、医療保険を利用して1日に4回の訪問看護を行うことは特定の条件を満たせば制度上可能です。ただし、これは一定の条件や特例に限定されます。
1日4回の訪問看護を可能にするための主要な条件は何ですか?
1日4回の訪問看護を利用するためには、「特別訪問看護指示書」の交付、国が定める特定の疾病への該当、または特定の医療的管理の必要性という3つの主要な条件を満たす必要があります。
高頻度の訪問看護にかかる費用について教えてください。
1日3回目までの費用は「難病等複数回訪問加算」が適用され、自己負担は約450円から800円程度です。ただし、4回目以降の訪問は原則として自費となるため、その費用は訪問看護ステーションによります。
4回目の訪問看護はどうなるのですか?
原則として4回目の訪問は保険適用外となり、全額自己負担(自費)となる可能性が高いです。そのため、事前に費用や対応について訪問看護ステーションに確認することが重要です。
自己負担が高額になった場合、どのように負担を軽減できますか?
自己負担が高額となった場合には、「高額療養費制度」が適用され、一定の自己負担額を超えた分について後から払い戻しを受けることができます。この制度の詳細は、加入している健康保険組合や市町村に確認してください。