訪問看護ステーションの管理者や現場で働く皆さん、日々の業務お疲れ様です。
「この利用者のケース、2時間ルールに違反しないかな?」
「算定ミスでレセプトが返戻になったらどうしよう…」
ケアプランの作成やレセプト請求の際に、このような不安を感じることはありませんか。
訪問看護の「2時間ルール」は、算定要件が複雑で、判断に迷う場面も多いルールです。
しかし、このルールを正しく理解することは、法令を遵守し、事業所を安定的に運営するために不可欠です。
この記事では、訪問看護の2時間ルールについて、基本から例外ケース、保険の適用関係まで、誰にでも分かるように体系的に解説します。
この記事を読めば、複雑なルールを自信を持って運用できるようになり、日々の業務の不安を解消できます。
まずは基本から|訪問看護の「2時間ルール」とは?
訪問看護の報酬算定において、2時間ルールは避けて通れない重要な規定です。
しかし、なぜこのようなルールが存在するのか、その目的を理解することが正確な運用の第一歩となります。
ここでは、ルールの基本的な定義と、その背景にある目的を分かりやすく解説します。
この基本を押さえることで、後述する例外規定などの応用的な内容がスムーズに理解できるようになります。
2時間ルールの基本的な定義と算定の原則
訪問看護における「2時間ルール」とは、非常にシンプルな原則に基づいています。
それは、「同一の利用者に対し、同じ職種のスタッフが1日に複数回訪問する場合、前回の訪問終了時刻から次回の訪問開始時刻まで、原則として2時間以上の間隔を空けなければならない」というものです。
このルールは、介護保険と医療保険、両方の訪問看護に共通して適用されます。
つまり、看護師が午前に訪問した後、再び同じ看護師が訪問する際には、2時間以上の間隔が必要になるということです。
なぜ「2時間」の間隔が必要?ルールの目的と背景を理解する
では、なぜわざわざ「2時間」という間隔を設ける必要があるのでしょうか。
このルールは、単に事業所を縛るためのものではなく、適切なサービス提供と公平な報酬体系を維持するために設けられました。
主な目的は、以下の3つに集約されます。
| 目的 | 解説 |
|---|---|
| 1. サービスの質の維持 | 各訪問を独立したケアとして評価し、十分な準備や観察、処置の時間を確保します。短い間隔での訪問は、実質的なケア時間を圧迫し、サービスの質を低下させる恐れがあるためです。 |
| 2. 報酬算定の公平性 | 短い間隔の複数回訪問をまとめて「1回の長時間訪問」として算定することを防ぎます。これにより、提供された個々のサービスが適切に評価され、過大請求や不正請求を防ぎます。 |
| 3. 効率的なサービス提供 | 訪問間隔を設けることで、事業所は他の利用者への訪問や記録作業などの時間を確保できます。これにより、限られた医療・介護資源を効率的に配分し、事業所全体の運営を円滑にします。 |
【最重要】算定可否の分かれ目!2時間ルールが適用されない「5つの例外ケース」
2時間ルールには、利用者の状態や状況に応じて、ルールが適用されない「例外」が定められています。
この例外規定を正しく理解することが、現場での適切な判断と算定ミスの防止に直結します。
ここでは、実務上最も重要な5つの例外ケースを、具体的な条件とともに一つずつ詳しく解説します。
これらのケースを把握することで、返戻のリスクを大幅に減らし、自信を持ってケアプランを作成できるようになります。
ケース1:緊急時の訪問(緊急時訪問看護加算)
利用者の容態が急変した場合など、計画外で緊急の対応が必要になった訪問は、2時間ルールの例外となります。
この場合、前回の訪問から2時間未満であっても、独立した訪問として算定が可能です。
- 介護保険: 「緊急時訪問看護加算」を算定している利用者が対象。
- 医療保険: 「緊急訪問看護加算」の対象となる訪問。
いずれも、利用者や家族からの緊急要請に基づき、ケアマネージャー等が計画していなかった訪問であることが条件です。
ケース2:20分未満の短時間訪問
インスリン注射や喀痰吸引など、短時間で頻回な医療処置が必要な利用者への訪問も、例外として扱われることがあります。
ただし、これには厳格な条件が伴います。
- 居宅サービス計画または訪問看護計画に、週1回以上「20分以上の看護師等による訪問」が含まれている必要があります。
- 原則として、20分未満の訪問だけで計画を組んだり、単独で算定したりすることはできません。
あくまで包括的な看護計画の一部として、短時間訪問が必要であると認められた場合に適用されます。
ケース3:病状悪化や医師の特別な指示がある場合(特別訪問看護指示書)
利用者の病状が急性増悪し、主治医が一時的に頻回な訪問が必要と判断した場合も、2時間ルールの適用外となります。
この場合、主治医から「特別訪問看護指示書」が交付されます。
- 指示書の有効期間は最大14日間です。
- この期間中は医療保険が適用され、1日に複数回の訪問が可能になります。
また、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者(特別管理加算の対象者など)も、状態に応じて柔軟な対応が認められます。
ケース4:看護師とリハビリ職など「異なる職種」による訪問
2時間ルールが適用されるのは、あくまで「同じ職種」が続けて訪問する場合です。
したがって、異なる専門職がそれぞれ訪問する場合には、2時間の間隔を空ける必要はありません。
例えば、午前中に看護師がバイタルチェックや医療処置を行い、その1時間後に理学療法士がリハビリテーションを行う、といったケースは問題なく算定できます。
それぞれの専門性に基づいた異なるサービスと見なされるためです。
ケース5:計画では2時間以上空いていたが、結果的に2時間未満になった場合
現場では、予期せぬ事態も起こり得ます。
例えば、交通渋滞を避けて早く到着してしまったり、前の利用者のケアが想定より早く終わったりして、計画上は2時間以上空いていたものの、結果的に2時間未満になってしまうケースです。
この場合、原則としては合算での算定対象となります。
ただし、なぜ間隔が短くなったのか、その理由を訪問看護記録に明確に記載しておくことが極めて重要です。
正当な理由があれば、監査等で説明が可能です。
| 例外ケース | 主な条件・ポイント |
|---|---|
| 1. 緊急訪問 | 計画外の緊急要請に基づく訪問であること。 |
| 2. 20分未満の訪問 | 頻回な医療処置が必要で、かつ週1回以上の20分以上の訪問が計画にあること。 |
| 3. 医師の特別な指示 | 「特別訪問看護指示書」が交付されていること(急性増悪時など)。 |
| 4. 異なる職種 | 看護師と理学療法士など、違う職種のスタッフが訪問する場合。 |
| 5. 計画外の短縮 | 交通事情などやむを得ない理由がある場合、記録への明記が必須。 |
医療保険?介護保険?迷わないための適用範囲と優先順位
2時間ルールの適用を考える前に、まずその訪問が「医療保険」と「介護保険」のどちらで算定されるべきかを正しく判断する必要があります。
保険の適用を誤ると、レセプトが返戻される大きな原因となります。
ここでは、両保険の適用範囲と優先順位を明確にし、現場で迷わないための判断基準を解説します。
この点をクリアにすれば、より正確な請求業務が可能になります。
原則は介護保険優先!医療保険が適用される条件とは
訪問看護の保険適用には、明確な優先順位があります。
大原則として、要介護・要支援認定を受けている方については、「介護保険が優先」されます。
しかし、要介護認定者であっても、以下のような特定の条件に該当する場合は、例外的に医療保険が適用されます。
- 厚生労働大臣が定める疾病等の場合
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- パーキンソン病関連疾患 など
- 急性増悪などにより「特別訪問看護指示書」が交付された場合
- 主治医の指示に基づき、一時的に集中的な訪問看護が必要な期間。
【比較表】ひと目でわかる医療保険と介護保険のルール適用の違い
医療保険と介護保険では、対象者や料金体系だけでなく、2時間ルールの運用に関わる部分にも違いがあります。
以下の表で、両者の違いを視覚的に整理しました。
日々の業務で迷った際の確認用としてご活用ください。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 対象者 | 要介護1〜5、要支援1〜2の認定を受けた方 | 年齢に関わらず、病気や怪我で訪問看護が必要な方 |
| 優先順位 | 原則として優先される | 厚労省指定の疾病、特別指示書交付時などに優先 |
| 訪問時間区分 | 20分未満、30分未満、1時間未満、1.5時間未満 | 30分以上90分以内が基本 |
| 2時間ルールの適用 | 適用される | 適用される(緊急訪問などの例外あり) |
| 自己負担割合 | 所得に応じ1割〜3割 | 年齢や所得に応じ1割〜3割 |
うっかりミスは命取り!ルール違反時の報酬算定と返戻リスク
2時間ルールを正しく理解せずに算定を行うと、どのような結果を招くのでしょうか。
意図せずともルールに違反してしまった場合、それは「誤請求」と見なされ、レセプトの返戻や、最悪の場合には指導・監査の対象となる可能性があります。
ここでは、ルール違反時の具体的な報酬の扱いや、混同しやすい他のルールとの違いを解説し、事業所が被るリスクを未然に防ぎます。
2時間未満で訪問した場合の報酬はどうなる?「合算ルール」を解説
例外ケースに該当しないにもかかわらず、2時間未満の間隔で同一職種が訪問した場合、それぞれの訪問は独立したものとは見なされません。
この場合、2つの訪問の所要時間が「合算」され、1回の訪問として報酬が算定されます。
| 算定例 | 状況 | 正しい算定方法 |
|---|---|---|
| 誤った算定 | 9:00〜9:20(20分)と10:00〜10:20(20分)の訪問を、それぞれ「20分未満」として2回分請求する。 | これは誤りです。2回分の報酬は算定できません。 |
| 正しい算定 | 2つの訪問の間隔が1時間であり、2時間未満のため合算する。合計40分のサービス提供として「30分以上1時間未満」の報酬を1回分請求する。 | これが正しい算定方法です。 |
このように、合算ルールを知らないと、請求額が大きく変わってしまい、返戻の原因となります。
「長時間訪問看護加算」や「90分ルール」との違いと正しい使い分け
現場では、2時間ルールと他の時間に関するルールが混同されることがあります。
特に、「長時間訪問看護加算」や「90分ルール」との違いは明確に区別しておく必要があります。
- 2時間ルール: 1日に複数回訪問する際の「訪問と訪問の間隔」に関するルールです。
- 長時間訪問看護加算: 1回あたりの訪問が長時間(例:90分以上)に及んだ場合に算定できる「加算」です。
- 90分ルール: 介護保険において、通常1回あたりの訪問時間は90分が上限とされている原則のことです。
これらのルールの目的と適用場面は全く異なりますので、正しく使い分けることが重要です。
現場の「これってどう?」を解決!ケーススタディで学ぶ実践的な判断基準
これまで解説してきた知識を、実際の現場でどのように活用すればよいのでしょうか。
このセクションでは、訪問看護の現場で実際に起こりうる具体的なケースを取り上げ、2時間ルールをどのように適用して判断すべきかをシミュレーションします。
単なる知識のインプットだけでなく、実践的な問題解決能力を養うことを目指します。
事例1:同日に同じ看護師が複数回、短時間の医療処置で訪問するケース
Aさんは胃ろうからの経管栄養と1日2回のインスリン注射が必要な利用者です。
- 9:00〜9:30:看護師が訪問し、経管栄養を実施(30分)
- 11:00〜11:10:同じ看護師が訪問し、インスリン注射を実施(10分)
この場合、9:30の訪問終了から11:00の訪問開始まで、間隔は1時間30分しかありません。
これは原則として合算対象ですが、「20分未満の訪問」の例外ケースに該当する可能性があります。
ただし、そのためにはAさんのケアプランに週1回以上の20分以上の訪問が含まれている必要があります。
この点をケアマネージャーと確認し、訪問看護計画書にも短時間訪問の必要性を明記しておくことが不可欠です。
事例2:複数の訪問看護ステーションが同日に介入するケース
Bさんのケアには、A訪問看護ステーションとB訪問看護ステーションの2事業所が関わっています。
- 10:00〜10:40:A事業所の看護師が訪問
- 11:30〜12:00:B事業所の看護師が訪問
この場合、訪問の間隔は2時間未満ですが、介入している事業所が異なります。
2時間ルールは、基本的に「同一事業所内」での複数回訪問を想定したルールです。
そのため、異なる事業所による訪問であれば、通常は合算の対象とはなりません。
しかし、ケアの重複を避け、連携を密にするためにも、サービス担当者会議などで各事業所の役割分担と訪問時間を明確に共有しておくことが望ましいです。
【速報】2026年度報酬改定でどう変わる?訪問看護の未来予測
訪問看護を取り巻く制度は、常に変化しています。
特に、2026年度に予定されている診療報酬・介護報酬の同時改定は、2時間ルールを含む訪問看護のあり方に大きな影響を与える可能性があります。
ここでは、現時点で議論されている改定の方向性について触れ、今後の動向を予測します。
(注:以下の情報は議論段階のものであり、確定情報ではありません)
- 20分未満訪問の厳格化:
一部の不適切な短時間・頻回訪問に対応するため、20分未満の訪問に対する報酬が見直される可能性があります。 - 同一建物居住者への訪問の適正化:
集合住宅等への訪問における報酬の減算措置などが検討されており、より効率的で公平なサービス提供が求められる見込みです。 - 処遇改善の動向:
訪問看護に携わる人材の確保と定着を目指し、持続的な賃上げに繋がる処遇改善加算の新設が予定されています。
これらの動向を注視し、事業所として早めに備えていくことが重要です。
まとめ:2時間ルールを正しく理解し、質の高いケアと健全な事業所運営を実現しよう
訪問看護の「2時間ルール」は、一見すると複雑で厳しい制約に感じるかもしれません。
しかし、その本質は、サービスの質を担保し、公平な報酬体系を維持することで、利用者と事業所の双方を守るための重要な仕組みです。
この記事で解説した基本原則、5つの例外ケース、保険適用の考え方を正しく理解し、実践することで、以下の3つを実現できます。
- コンプライアンスの徹底: 算定ミスや返戻リスクを回避し、健全な事業所運営が可能になります。
- 業務の効率化: 判断に迷う時間が減り、適切なサービス計画をスムーズに立案できます。
- サービスの質の向上: ルールの制約を理解した上で、利用者にとって最適なケアを提供できます。
本記事が、日々の業務に奮闘する皆様の不安を解消し、自信を持ってケアを提供するための一助となれば幸いです。
訪問看護の「2時間ルール」とは何ですか?
訪問看護の「2時間ルール」とは、同一の利用者に対して同じ職種のスタッフが複数回訪問する場合、訪問と訪問の間隔を原則として2時間以上空ける必要がある規定です。これはサービスの質の維持、公平な報酬算定、効率的なサービス提供を目的としています。
2時間ルールの例外ケースにはどのようなものがありますか?
例外ケースには、緊急時の訪問、20分未満の短時間訪問、医師の特別な指示による訪問、異なる職種のスタッフによる訪問、計画では2時間以上空いていたが結果的に短くなった場合があります。これらはそれぞれの条件を満たす必要があります。
医療保険と介護保険の適用範囲と優先順位の違いは何ですか?
介護保険は要介護または要支援の認定を受けた方に優先して適用され、訪問時間も短い範囲に制限されます。一方、医療保険は特定の疾病を持つ利用者や、医師からの特別指示がある場合に適用され、訪問時間も基本的に30分以上の設定です。
ルール違反時にどのようなリスクが生じますか?
ルール違反をした場合、誤請求と見なされ、レセプトの返戻や監査・指導の対象となる可能性があります。不適切な算定は事業所の信用や財務に悪影響を及ぼすため、正確な運用が重要です。
今後の訪問看護制度の改正動向はどうなるのですか?
2026年度の制度改正には、20分未満の訪問の厳格化や、集合住宅等への訪問の適正化、処遇改善の動きが含まれる可能性があります。これらの改正は、公平で効率的なサービス提供を促進し、質の向上を目的としています。