「定期巡回サービスと訪問看護、具体的に何が違うのだろう?」
「ケアプランに組み込みたいけれど、併用や連携のルールが複雑で…」
「事業者として連携を検討しているが、報酬体系がよくわからない」
ケアマネージャーや訪問看護ステーションの管理者として、このような悩みを抱えてはいないでしょうか。
24時間365日の安心を提供する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、在宅ケアの重要な選択肢です。
しかし、その制度は複雑で、従来の訪問看護との違いや実務上のルールを正確に把握するのは簡単ではありません。
この記事では、専門職であるあなたのために、訪問看護と定期巡回サービスの違いを徹底的に解説します。
サービス内容の比較から、実務でつまずきやすい併用・連携のルール、そして事業者なら必ず押さえたい報酬体系まで、網羅的に理解できます。
この記事を読めば、自信を持って利用者様へ最適なケアプランを提案し、事業所としての的確な判断を下せるようになるでしょう。
そもそも「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とは?
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回サービス)は、介護保険制度における地域密着型サービスの一つです。
その最大の目的は、要介護度が重くなっても、利用者が可能な限り住み慣れた自宅での生活を続けられるように支援することにあります。
24時間365日、訪問介護と訪問看護を一体的または連携して提供することで、切れ目のないケアを実現します。
4つのサービス内容と2つの提供体制(一体型・連携型)
定期巡回サービスは、4つの異なるサービスを組み合わせて提供されるのが特徴です。
また、その提供体制には「一体型」と「連携型」の2種類が存在します。
厚生労働省の統計によれば、全体の約73.7%が「連携型」であり、多くの事業所が他の訪問看護ステーションと連携してサービスを提供しています。
| サービスの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 定期巡回サービス | 訪問介護員などが定期的に利用者の居宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの身体介護や、調理、掃除などの生活援助を行います。 |
| 随時対応サービス | 利用者からの緊急コールなどに対し、オペレーターが24時間体制で対応します。状況を判断し、次のサービスを手配します。 |
| 随時訪問サービス | 随時対応サービスの結果、必要と判断された場合に訪問介護員などが緊急で利用者の居宅を訪問し、必要な援助を行います。 |
| 訪問看護サービス | 主治医の指示に基づき、看護師などが利用者の居宅を訪問します。療養上の世話や診療の補助(医療的ケア)を実施します。 |
| 提供体制 | 特徴 |
|---|---|
| 一体型 | 一つの事業所が、訪問介護と訪問看護の両方を一体的に提供する形態です。情報共有がスムーズに行えるメリットがあります。 |
| 連携型 | 訪問介護を行う事業所が、外部の訪問看護事業所と連携してサービスを提供する形態です。多くの事業所がこの形態をとっています。 |
【比較表で解説】従来の訪問看護・訪問介護との3つの大きな違い
定期巡回サービスと従来の訪問看護・訪問介護は、似ているようで根本的な考え方や提供スタイルが異なります。
ケアプランを作成したり、事業連携を検討したりする上で、この違いを正確に理解しておくことは非常に重要です。
ここでは、特に実務に影響する3つの大きな違いについて、比較表を交えながら詳しく解説します。
| 比較項目 | 定期巡回サービス | 従来の訪問看護・訪問介護 |
|---|---|---|
| 提供の考え方 | 24時間365日の安心を包括的に提供するケア | ケアプランに基づき、計画された時間に提供するケア |
| 訪問スタイル | 1日に複数回の短時間訪問も可能で柔軟性が高い | 30分、60分など、サービス提供時間単位での訪問 |
| 報酬体系 | 月額定額制(包括報酬) | 出来高制(サービス提供時間や内容に応じる) |
| サービス内容 | 4つのサービスを組み合わせて提供 | 訪問看護、訪問介護など、サービスが独立している |
| 他サービス併用 | 訪問介護など内容が重複するサービスは原則併用不可 | ケアプランの範囲内で他のサービスと組み合わせ可能 |
違い1:提供の考え方(24時間対応の包括ケア vs 計画に基づくケア)
最も根本的な違いは、サービスの提供思想にあります。
従来の訪問サービスは、ケアプランで定められた日時に、決められた内容のケアを提供する「計画に基づくケア」です。
一方で定期巡回サービスは、計画的な訪問に加え、利用者の「困った」にいつでも応えられる体制を整える「24時間対応の包括ケア」です。
この体制により、利用者は施設に入居しているかのような安心感を自宅で得ることが可能になります。
違い2:訪問スタイル(短時間・複数回の柔軟な訪問 vs 単位ごとの訪問)
従来の訪問介護では対応が難しかったニーズに応えられるのが、定期巡回サービスの大きな特徴です。
例えば、「1日に数回の服薬確認」や「頻繁なトイレ誘導」といった、短時間でこまめなケアが必要なケースに対応できます。
これは、従来のサービスが30分単位など時間で区切られるのに対し、定期巡回サービスは利用者の生活リズムに合わせて柔軟に訪問計画を立てられるためです。
この柔軟性が、利用者の在宅生活の質を大きく向上させます。
違い3:報酬体系(月額定額制 vs 出来高制)
報酬体系の違いは、利用者負担と事業所運営の両面に影響します。
定期巡回サービスは、要介護度に応じた月額定額制です。
そのため、サービス利用回数が増えても費用は変わりません。
これは、頻繁なケアが必要な要介護度の高い利用者にとっては、費用を気にせず安心してサービスを利用できる大きなメリットとなります。
一方、事業者にとっては、安定した収益を見込みやすいという利点があります。
【ケアマネ・事業者必見】訪問看護との併用・連携の実務知識
実務において最も判断に迷うのが、他のサービスとの「併用」や、他事業所との「連携」に関するルールではないでしょうか。
制度を正しく理解していないと、利用者への不利益や、行政指導・減算のリスクにもつながりかねません。
ここでは、ケアマネージャーや事業者が押さえておくべき併用・連携の実務知識を、具体的なケースを想定して解説します。
他の訪問看護ステーションとの併用は可能?原則と例外を解説
「定期巡回サービスで訪問看護を受けているが、特定の疾患に強い別のステーションの看護も受けさせたい」といったケースは少なくありません。
この問いに対する答えは、「原則として併用は不可だが、例外的に認められる場合がある」となります。
基本的には、定期巡回サービスの報酬に訪問看護費用が含まれているため、他の訪問看護サービスを介護保険で利用することはできません。
ただし、以下の表に示すようなケースでは、例外的に併用が認められることがあります。
| 併用が認められる可能性があるケース | 具体例・条件 |
|---|---|
| 専門的な看護が必要な場合 | 精神科訪問看護など、特別な知識や技術を要する看護が必要と医師が判断した場合。 |
| 退院・退所直後の集中支援 | 退院・退所後、一時的に頻回な訪問看護が必要な場合に、特別指示書に基づき医療保険での訪問看護を利用する場合。 |
| 内容が重複しないサービス | 定期巡回サービスと併用が明確に認められている「通院等乗降介助」など。 |
これらの判断は個別のケースに依存するため、必ず事前に保険者(市区町村)へ確認することが重要です。
「連携型」における役割分担と情報共有のポイント
連携型でサービスを提供する際、訪問看護ステーションは重要な役割を担います。
円滑なサービス提供のためには、定期巡回事業所との明確な役割分担と、密な情報共有が不可欠です。
特に以下のポイントを押さえることが、質の高いケアにつながります。
- 役割分担の明確化
- アセスメント:利用者の初回アセスメントには看護師の同行が必須です。
- 計画書作成:訪問看護計画書は、定期巡回サービスの全体計画と整合性をとる必要があります。
- 随時訪問:緊急時の訪問依頼に備え、対応可能な体制を整えておく必要があります。
- 情報共有の徹底
- 定期的なカンファレンスの実施:サービス担当者会議とは別に、日常的な情報交換の場を設けます。
- ICTツールの活用:スマートフォンアプリ「スマケア」などの情報共有ツールを導入し、リアルタイムで利用者の状態やケア内容を共有します。
【事業者向け】報酬(単位数)と加算・減算の完全ガイド
事業所の運営において、報酬の正確な理解は経営の根幹をなします。
定期巡回サービスは月額包括報酬であり、その計算方法は複雑です。
ここでは、事業所の管理者や請求担当者向けに、基本報酬から主要な加算・減算までを網羅的に解説します。
要介護度別の基本報酬と計算シミュレーション
定期巡回サービスの基本報酬は、事業所の体制(一体型/連携型、訪問看護の提供有無)と利用者の要介護度によって定められています。
以下は、訪問看護サービスを提供しない場合の基本報酬の一例です。
| 要介護度 | 1月あたりの単位数 |
|---|---|
| 要介護1 | 5,754 単位 |
| 要介護2 | 10,248 単位 |
| 要介護3 | 17,041 単位 |
| 要介護4 | 21,524 単位 |
| 要介護5 | 25,831 単位 |
【計算シミュレーション】
要介護3の利用者が、1単位10円の地域でサービスを利用した場合の1ヶ月の費用(自己負担1割)
17,041単位 × 10円/単位 = 170,410円(総費用)170,410円 × 0.1 = 17,041円(利用者負担額)
※実際には各種加算や地域区分が上乗せされます。
押さえておくべき主要な加算・減算項目
基本報酬に加えて、サービスの提供体制や内容に応じて各種加算・減算が適用されます。
これらを正確に算定することが、適切な事業所収益の確保とコンプライアンス遵守につながります。
| 加算・減算の名称 | 単位数(例) | 主な算定要件 |
|---|---|---|
| 【加算】 | ||
| 緊急時訪問看護加算 | 540 単位/月 | 利用者や家族からの求めに応じ、主治医の指示のもと計画外の緊急訪問看護を行った場合に算定。 |
| 特別管理加算 (Ⅰ) | 500 単位/月 | 在宅悪性腫瘍等指導管理など、特に重度な医療的管理が必要な利用者に対して計画的な管理を行った場合に算定。 |
| 特別管理加算 (Ⅱ) | 250 単位/月 | 在宅酸素療法指導管理など、(Ⅰ)以外の医療的管理が必要な利用者に対して計画的な管理を行った場合に算定。 |
| 初回加算 | 300 単位/月 | 新規にサービス計画を作成した利用者に対して、サービス提供責任者が初回または同行訪問した場合に算定。 |
| 【減算】 | ||
| 同一建物減算 | -10% または -15% | 事業所と同一の建物や、隣接する建物に居住する利用者へサービスを提供した場合に適用。 |
| 人員基準欠如減算 | -70% | 定められた人員基準を満たしていない場合に適用。ペナルティが非常に大きいため注意が必要。 |
月の途中での利用開始・終了時の日割り計算ルール
実務で頻繁に発生するのが、月の途中でサービスの利用を開始、または終了した場合の報酬計算です。
定期巡回サービスは月額定額制ですが、月途中での契約・解約の場合は日割り計算が適用されます。
計算方法は以下の通りです。
- 月額の包括報酬単位数を暦日数で割る(小数点以下は四捨五入)。
- 1で算出した1日あたりの単位数に、サービス提供日数を掛ける。
このルールを正しく適用し、過不足のない請求を行うことが重要です。
導入前に確認すべきデメリットと行政手続き
定期巡回サービスは多くのメリットを持つ一方で、導入・連携を検討する際にはデメリットや注意点も理解しておく必要があります。
また、事業を開始するためには、定められた行政手続きを遺漏なく行うことが求められます。
ここでは、客観的な判断を下すための情報を提供します。
| 対象者 | デメリット・注意点 |
|---|---|
| 利用者側 | – 費用面の割高感:要介護度が低く、サービス利用回数が少ない場合、出来高制より費用が高くなる可能性がある 。 – ヘルパーの固定が困難:24時間体制のため複数の職員が交代で訪問するため、特定のヘルパーを指名することが難しい。 – 他サービスとの併用制限:訪問介護など、使い慣れたサービスが利用できなくなる場合がある。 |
| 事業者側 | – 人材確保の難しさ:24時間365日対応できるオペレーターや、夜間に訪問できる介護職員・看護師の確保が大きな課題となる。 – ICT導入コストと習熟:効率的な運営にはICTの活用が不可欠だが、初期投資や職員への研修が必要となる。 – 連携先との調整:連携型の場合、他事業所との密な情報共有や役割分担の調整に労力がかかる。 |
サービスを開始する際は、事業所が所在する市区町村の介護保険担当課へ、指定申請を行う必要があります。
主な手続きの流れと必要書類は以下の通りです。
- 手続きの流れ
- 事前相談・協議
- 申請書類の提出
- 書類審査・現地調査
- 指定・事業開始
- 主な必要書類
- 指定申請書
- 事業所の平面図、写真
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 運営規程
- 連携する訪問看護事業所との契約内容を記した書類(連携型の場合)
まとめ:地域包括ケアの要として定期巡回サービスを使いこなすために
本記事では、定期巡回サービスと従来の訪問看護との違いを中心に、併用・連携ルールから報酬体系まで、専門職向けに詳しく解説しました。
定期巡回サービスは、24時間365日の安心を提供し、医療ニーズの高い高齢者の在宅生活を支える上で非常に強力な選択肢です。
その価値は、「訪問」「看護」「定期巡回」という3つの側面が統合されることで最大限に発揮されます。
一方で、人材確保や多職種連携、費用対効果の見極めなど、導入・運用には課題も伴います。
2026年度の介護保険制度改正では、夜間対応型訪問介護との統合・整備も検討されており、今後ますますその重要性は高まっていくでしょう。
この記事で得た知識をもとに、利用者一人ひとりに最適なケアを提供し、地域包括ケアシステムの中核を担う専門職として、このサービスを戦略的に活用していくことが期待されます。
定期巡回サービスと訪問看護の違いは何ですか?
定期巡回サービスは、24時間365日の包括的な在宅ケアを提供し、複数回の短時間訪問や随時対応を含むのに対し、訪問看護は主治医の指示に基づき、必要なときに看護師が訪問し医療的ケアを行います。
定期巡回サービスの提供体制にはどのようなものがありますか?
定期巡回サービスには、一体型と連携型の二種類があります。一体型は単一の事業所が訪問介護と訪問看護を提供し、連携型は外部の訪問看護事業所と連携してサービスを展開します。
従来の訪問看護・訪問介護との最大の違いは何ですか?
定期巡回サービスは24時間対応の包括ケアや短時間・複数回の柔軟な訪問、月額定額制の報酬体系など、サービスの提供思想やスタイルが従来の計画に基づくサービスと異なります。
併用や連携のルールについて、どのように理解すればよいですか?
他の訪問看護との併用は原則不可だが、専門的な看護や退院直後のケースなど特定条件下では例外的に認められる場合があります。連携型では、役割分担と情報共有を密に行うことが重要です。
定期巡回サービスの報酬体系と計算方法は何ですか?
定期巡回サービスの基本報酬は月額定額制で、要介護度やサービス提供体制により異なります。月途中の開始・終了時には、暦日で割った単位数に提供日数をかけて日割り計算を行います。