訪問看護ステーションの運営において、「サービス提供体制強化加算」という言葉を耳にしたことはありませんか。
「なんだか複雑でよくわからない」「うちの事業所でも算定できるのだろうか」と感じている方も多いかもしれません。
この記事では、そんな疑問や不安を解消するために、訪問看護のサービス提供体制強化加算について徹底的に解説します。
なお、現場では「サービス提供体制加算」と呼ばれることもありますが、正式名称は「サービス提供体制強化加算」です。
この記事を最後まで読めば、令和6年度(2024年度)の最新情報に基づいた算定要件から、具体的な計算方法、届出の手続き、そして算定後のリスク管理まで、すべてを理解できます。
加算を正しく算定し、事業所の収益向上と安定した経営基盤の構築に繋げていきましょう。
訪問看護のサービス提供体制強化加asanとは?目的と令和6年度改定のポイント
サービス提供体制強化加算は、質の高いサービスを提供する事業所を評価し、人材の定着を促すための制度です。
この加算は介護保険サービスのみが対象であり、医療保険の訪問看護には適用されない点をまず押さえておきましょう。
令和6年度の介護報酬改定では、この加算の単位数や算定要件に大きな変更はありませんでした。
これは、現行制度が一定の成果を上げていると評価されたためと考えられます。
加算の目的は「質の高いサービス提供」と「人材定着の促進」
この加算がなぜ存在するのか、その背景には国の2つの大きな狙いがあります。
一つは、経験豊富な職員や専門資格を持つ職員を評価することで、利用者への「質の高いサービス提供」を促すことです。
もう一つは、職員が長く働き続けられる環境づくりを後押しし、「人材の確保と定着を促進」することです。
つまり、この加算は単なる報酬増ではなく、事業所の体制強化を通じて、利用者と職員の双方にとってより良い環境を作ることを目指しています。
間違えやすい「看護体制強化加算」との違いを明確に解説
訪問看護には、名称が似ている「看護体制強化加算」という別の加算も存在します。
これらは目的も要件も全く異なるため、混同しないように注意が必要です。
主な違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | サービス提供体制強化加算 | 看護体制強化加算 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 人材の定着促進、サービスの質の向上 | 重症者や緊急時対応体制の強化 |
| 主な評価軸 | 職員の勤続年数、研修体制など | 重症者等の受け入れ実績、24時間対応体制など |
| 対象保険 | 介護保険のみ | 介護保険・医療保険の両方 |
| キーワード | ・勤続3年以上 or 7年以上 ・研修計画 ・会議、健康診断 | ・特別管理加算の算定割合 ・ターミナルケアの実績 ・緊急時訪問の実績 |
このように、サービス提供体制強化加算は「人(職員)」に、看護体制強化加算は「機能(重症者対応)」に焦点を当てた加算であると理解すると分かりやすいでしょう。
【早見表】サービス提供体制強化加算(I)・(II)の算定要件を完全マスター
それでは、具体的な算定要件を見ていきましょう。
この加算には、要件の達成度に応じて「加算(I)」と「加算(II)」の2つの区分があります。
どちらの区分にも求められる「共通の要件」と、区分を分けるための「勤続年数の要件」の2段階で構成されています。
まずは、両者の違いから確認します。
加算(I)と(II)の単位数と要件の違いを比較
加算(I)は、より厳しい勤続年数要件をクリアした場合に算定できる上位の加算です。
それぞれの単位数と主な要件の違いは以下の通りです。
| 項目 | サービス提供体制強化加算(I) | サービス提供体制強化加算(II) |
|---|---|---|
| 勤続年数要件 | 看護師等のうち、勤続年数7年以上の者が30%以上 | 看護師等のうち、勤続年数3年以上の者が30%以上 |
| 単位数 | 6単位/回 | 3単位/回 |
| (定期巡回等と連携する場合) | 50単位/月 | 25単位/月 |
介護予防訪問看護においても、同様の単位数が適用されます。
共通要件①:個別の研修計画と実施
加算を算定するには、以下の3つの共通要件をすべて満たす必要があります。
一つ目は、すべての看護師等(保健師、看護師、准看護師、PT、OT、ST)を対象とした研修体制です。
- 看護師等ごとに個別の研修計画を作成していること。
- 計画には、研修の目標、内容、時期などを具体的に盛り込んでいること。
- 作成した計画に沿って、研修を実施または実施を予定していること。
共通要- 件②:定期的な会議の開催と記録
二つ目は、利用者に関する情報共有と技術指導を目的とした会議の実施です。
- 会議をおおむね月1回以上開催していること。
- 会議の目的は、利用者情報の伝達、サービス提供上の留意事項の共有、看護師等の技術指導などです。
- 会議の概要を記録として残していること。
この会議は、テレビ電話などを用いたオンラインでの開催も認められています。
共通要件③:全職員への健康診断の実施
三つ目は、職員の健康管理に関する要件です。
- すべての看護師等に対し、健康診断等を年1回以上実施していること。
- 健康診断にかかる費用は、事業主が負担すること。
- 労働安全衛生法で義務付けられている対象者だけでなく、パートタイマーなどを含むすべての看護師等が対象となります。
【具体例つき】算定の鍵!勤続年数と常勤換算の正しい計算方法
算定要件を理解したら、次は自事業所が要件を満たしているかを確認するための計算が必要です。
特に「勤続年数」と「職員割合の算出(常勤換算)」は、間違いやすいポイントです。
ここでは、誰でも正確に計算できるよう、具体例を交えて解説します。
勤続年数の計算方法(同一法人・休業期間の扱いも解説)
勤続年数は、現在の事業所だけでなく、同一法人内の他事業所での勤務期間も通算できます。
また、産休や育休などの休業期間も、雇用関係が続いていれば勤続年数に含めることができます。
| 項目 | 勤続年数に含めるか | 具体例 |
|---|---|---|
| 同一法人内の異動 | 含める | 同法人の病院で5年勤務後、訪問看護ステーションへ異動して3年経過 → 勤続年数は8年 |
| 産前・産後休業 | 含める | 雇用契約が継続している場合 |
| 育児・介護休業 | 含める | 雇用契約が継続している場合 |
| 病気による休職 | 含める | 雇用契約が継続している場合 |
| 他法人での勤務経験 | 含めない | A法人で5年勤務後、B法人に転職した場合、B法人での勤続年数は0年からスタート |
職員割合を出すための常勤換算方法
勤続年数を満たす職員の「割合」を出すには、常勤換算方法で職員数を算出する必要があります。
常勤換算数は、以下の式で計算します。職員の勤務時間合計 ÷ 事業所の常勤職員が勤務すべき時間数
例えば、常勤が週40時間(月160時間)勤務の事業所で、以下の職員がいる場合の計算例です。
- 常勤看護師Aさん:月160時間勤務
- 常勤看護師Bさん:月160時間勤務
- 非常勤看護師Cさん:月80時間勤務
- 非常勤看護師Dさん:月60時間勤務
| 職員 | 勤務時間 |
|---|---|
| 勤務時間合計 | 160 + 160 + 80 + 60 = 460時間 |
| 常勤換算数 | 460時間 ÷ 160時間 = 2.875人 |
この常勤換算数を基に、勤続年数を満たす職員の割合が30%以上であるかを確認します。
割合の算出期間は、原則として前年度(4月〜翌2月)の平均値を用います。
加算取得の実践ガイド|届出から算定後の監査対策まで
算定要件を満たせると判断できたら、次は実際の手続きに進みます。
ここでは、加算を取得するための届出から、算定開始後に注意すべき運営指導(実地指導)や監査への対策まで、実務的な流れを解説します。
リスクを未然に防ぎ、安定して加算を算定し続けるためのポイントを押さえましょう。
届出に必要な書類と提出先・期限
加算を算定するには、管轄の都道府県や市区町村へ事前の届出が必要です。
必要な書類や提出期限は自治体によって異なる場合があるため、必ず事前に確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な必要書類 | ・介護給付費算定に係る体制等に関する届出書 ・介護給付費算定に係る体制等状況一覧表 ・サービス提供体制強化加算に関する届出書(計算書など) |
| 提出先 | 事業所の指定を受けている都道府県または市区町村の介護保険担当課 |
| 提出期限 | 算定を開始したい月の前月15日頃まで(自治体により異なる) |
運営指導・監査で指摘されないための記録管理術
加算の算定を開始した後は、その根拠となる記録を適切に整備・保管することが極めて重要です。
運営指導や監査では、これらの記録が実態と合っているかが厳しくチェックされます。
指摘を受け、報酬の返還とならないよう、日頃から以下の記録を確実に管理しましょう。
| 算定要件 | 整備・保管すべき記録(証跡)の例 |
|---|---|
| 勤続年数要件 | ・職員ごとの雇用契約書、辞令 ・勤務実績がわかる出勤簿やタイムカード |
| 研修計画 | ・全看護師等分の個別の研修計画書 ・研修を実施した際の参加者名簿、研修資料、報告書 |
| 定期的会議 | ・会議の議事録(開催日時、参加者、議題、決定事項などを明記) |
| 健康診断 | ・健康診断の実施事業者からの請求書や領収書 ・職員への結果通知の控え |
介護ソフトなどを活用すると、これらの記録を一元管理しやすくなり、事務負担の軽減とリスク管理の両立に繋がります。
まとめ:サービス提供体制強化加算を算定し、事業所の成長へ繋げよう
この記事では、訪問看護のサービス提供体制強化加算について、目的から算定要件、計算方法、実務上の注意点までを網羅的に解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返ります。
- 本加算は人材定着と質の高いサービス提供を目的とした介護保険の加算です。
- 加算(I)は勤続7年以上、加算(II)は勤続3年以上の職員が30%以上いることが大きな要件です。
- 全職員への研修計画、月1回の会議、年1回の健康診断の3つの共通要件も必須です。
- 算定後は、研修や会議の記録を確実に保管し、運営指導や監査に備えることが重要です。
この加算を正しく理解し、計画的に取り組むことは、事業所の収益を改善するだけでなく、職員が安心して長く働ける環境を整え、サービスの質を向上させる絶好の機会となります。
ぜひ、この記事を参考に、サービス提供体制強化加算の取得に向けた第一歩を踏み出してください。
サービス提供体制強化加算とは何ですか?
サービス提供体制強化加算は、訪問看護事業所が質の高いサービスを提供し、職員の定着を促進することを目的としている介護保険の制度です。
この加算の目的と令和6年度(2024年度)改定のポイントは何ですか?
この加算の目的は、質の高いサービス提供と人材定着の促進です。令和6年度改定では、単位数や要件に大きな変更はなく、制度の効果が評価された結果です。
サービス提供体制強化加算と看護体制強化加算の違いは何ですか?
サービス提供体制強化加算は人材の定着とサービスの質向上に焦点を当てており、看護体制強化加算は重症者対応や緊急時の体制強化に重点を置いています。
加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の算定要件と違いは何ですか?
加算(Ⅰ)は勤続7年以上の職員が30%以上いる場合に算定でき、より高い単位数となります。加算(Ⅱ)は勤続3年以上の職員が30%以上で、より低い単位数です。
サービス提供体制強化加算の算定要件を満たすための具体的な準備は何ですか?
要件を満たすには、職員の勤続年数や勤務時間、研修計画、定期会議の実施と記録、健康診断の実施などの準備と記録管理が必要です。